第59話 三姉妹トライアングル
彼女達チーム・モイライの総合指導は第一世代ワルキューレのディアナが主に務めていた。
3人共全く異なる性質ではあるが、ワルキューレとして高い資質が有るのは指導をしていても実感出来ていた。
──しかし……ディアナは一つの違和感に気付いた。
ハカセには見えていない、
彼女達三姉妹の最大の欠点。
ラボの訓練場で行われた三姉妹の連携訓練において、クロートの弾幕は完璧だった。
戦場を染め上げる閃光……まさにその言葉が相応しい、圧倒的な火力。
だが、その弾幕の内側で、ラキシスは自身の肉体の適性を最大限に活かし、限界以上に前へ、前へと出る。
それを見たアトロポスが、負けじと更に踏み込む。
──誰も、間違っていない。
だからこそ、誰も止められなかった。
……三人は、互いを深く想っている。
それは姉妹としてとても正しいし、間違いではない。
だがその想いは、あまりにも純粋で、あまりにも同じ方向を向きすぎていた。
誰もが「自分が犠牲になればいい」と考え、
誰もが「自分さえ耐えればいい」と思っている。
互いを守るために、
互いが、自分を捨てる覚悟をしている。
ディアナはその在り方に、思わず胸が締め付けられた。
──あまりにも、家族として愛おしい。
けれど。
それは戦場に有ってよいものではない。
戦場では、姉妹の強すぎる思いは、あまりにも……致命的だ。
指導にあたりハカセから、チームの構成については事前に説明を受けていた。
だが、実際に彼女達を見て、触れて、言葉を交わして、
ディアナは"理解"してしまった。
彼女達は互いを信頼している。
──家族としては。
だが、戦場で背中を預け合うには、
その想いはあまりにも、近すぎた。
"家族としては信頼している。
……でも、戦場で背中を預ける戦士としては、信頼できない"
それが、指導者ディアナの目から見た、
今のチーム・モイライの現状だった。
──それでも、ハカセの下した命令を止めることは出来なかった。
近い未来、彼女達ならこの壁を、きっと越えられる。
指導者として、彼女達の可能性を信じていたから。
───しかし……"チーム・モイライ"に"最適"の任務は、時を待たず訪れてしまった。
ディアナはハカセに任務の中止を伝えねばと考えた。
しかし、そのディアナ自身にも、通信で緊急の任務が与えられる。
ラボから離れた市街地にティターニアの爆撃機体が複数機、
急速接近していると言うのだ。
現状、ラボで動けるメカニカルワルキューレは自分だけ…ディアナは、止められない歯車に対し、苦虫を噛み潰したような表情でラボを後にした。
───どうか…三姉妹が無事に任務を終えられますように……
ディアナは既に亡き神に、ただ祈る事しか出来なかった。




