第52話 罪と向き合う覚悟
「んあぁ? ソフィアがダルクの子供ぉ?」
アリアは司令室に響く沈黙を破るように、少し間の抜けた声を漏らした。
ラボに居たワルキューレ達、リリィ、アリア、
そして俯いたまま一言も発さないメガイラの三人が呼び出され、
ハカセは淡々と“事実”を告げていた。
「ハカセ……それって……」
リリィの声が、かすかに震える。
その瞬間、三年前の光景が脳裏に蘇った。
——倒れ伏したダルク。
——その亡骸に縋りつくように駆け寄ってきた、小さな少女。
「……っ」
理解した瞬間、呼吸が止まった。
リリィは咄嗟に口元を押さえ、一歩、後ずさる。
それは──
罪を背負うとダルクに宣言した、その直後。
娘である少女から向けられた、憎悪の眼差しに、
思わず目を背けてしまった。
その事実こそが、
リリィ自身の、決して消えない罪だった。
「やっちまったなぁ……」
アリアは、どこか居心地の悪そうな顔で頭を掻いた。
「アタシ……ソフィアの前で、
親父さんの事、悪く言っちまったのか……」
重苦しい沈黙が、司令室を満たしていた。
誰もが、それぞれの思いでソフィアの真実を噛み締めている、その時。
今まで一言も声を発しなかったメガイラが小さく呟く。
「ハカセは……いつから……」
「いつから、知っていたのですか……?」
3人の視線がハカセに向けられる。
「……もちろん
3年前、彼女をプロメテウス本拠地の跡地で発見した、その時からよ。」
「なんでっ……」
メガイラは俯いたまま顔を手で覆うも、指の隙間から涙が零れ始め、それを見たリリィはそっと肩を抱いた。
メガイラの視線が、ここ最近は
いつもソフィアを追っていたことを、
リリィは思い出していた。
今誰よりも傷付いているのはメガイラと……
ここに居ないソフィアだろう。
「……彼女の身体を調べた結果、薬物による遺伝子組み換えの傾向があったの」
ハカセは、自身の腕を抱くようにして目を伏せた。
そして、吐き出すように言葉を続ける。
「ダルクは……何も知らない自身の娘すら実験体としか見ていなかったのよ……ソフィアはそんな事も知らず父に愛されていたと誤認していた。……そのまま知らないままで居させたかったのよ……」
「……ひでぇ」
アリアは顔を顰める。ダルクが外道だとは思っていた。でも……
ここまでとは、さすがに想像していなかった。
「……でも、なんでハカセは私達にも、言ってくれなかったんですか……?」
メガイラの言葉にハカセは言葉を詰まらせる。
ハカセの言葉を聞いて、リリィだけが引っかかっていた。
───確かにダルクは残虐な人間だ。それはネガ・メガミドライヴやラクシャシー達姉妹を見れば間違い無い。
けど……
最後にダルクと交わした会話の中で……娘の、ソフィアの話をした時の表情……それは確かに、
娘を想う、人の親の表情だった。
「……ごめんなさい……敵だったラクシャシー達とすら、仲間になれた貴女達なら……
そう思ってしまって……
人任せに、賭けに……出てしまったの……」
賭け……それはあまりに無責任で、俯瞰して見ていた事を表していた。
「ハカセは……ソフィーをなんだと思ってるんですか……」
メガイラはボロボロになった顔を上げハカセに問う。
「……ごめんなさい……
私だって……
彼女に……ソフィアに、幸せになって欲しかったのよ……」
伏せていた目を上げメガイラを見つめるハカセもまた、珍しく涙を浮かべていた。
「ハカセ…ソフィアがメカニカルワルキューレに入った目的って……」
「……自身の父を奪った私達への、復讐……でしょうね…」
リリィの問いにハカセは推測も交えつつ答える。
先ほど剣を突き付けられたメガイラは苦しそうな表情を浮かべる。
その推測が正しいのだと、
メガイラは理解してしまったから。
───その時
リリィだけが、何かを覚悟したかのように顔を上げ、
一歩、踏み出した。
「ハカセ……
私……ソフィアと話してきます。
話さないと、いけないんです。」
そう宣言したリリィの表情には、
先ほどまでの迷いは、もう無くなっていた。
もう一人の主人公、やっと動きまぁす




