第41話 私達の明日
昨日の出来事を私はハカセに報告していた。
今思えば、こんなに魔力結晶適合者が集まっている施設……プロメテウスの残党が黙っている訳がなかった。
私達は、そこを甘く見ていた。
『……本当にすまなかったわ、ラクシャシー、アスラ…』
ハカセは画面越しに深々と頭を下げて来た。
「……組織のリーダーが簡単に頭下げなさんな、ハカセ」
私はやれやれと言うジェスチャーを浮かべる
『いいえ、謝罪させて頂戴。
可能性は十二分にあったのに、再び子供達に怖い思いをさせてしまった……本当に、ごめんなさい』
ハカセの謝罪を私は頬杖をついて聞いていた
(相変わらず、あまちゃんだこと…メカニカルワルキューレが甘いのは、この人が原因かねぇ)
「ま、嫌いじゃないけど。」
『えっ?』
「別に、何でもないさ。それよりも聞いてよハカセ、あの子達がさ、私達の黒い姿、かっこいいってさ。
前にハカセにアーマーの色変えてって言ったけど、やっぱあれ無し。」
「それに、あの残党共、私達の姿見てビビってたから、今後も良い虫よけになりそうだしぃ?」
私は椅子をくるくると回しながらハカセに話す。
「私は最初から、この色が似合っていると思っていた」
と、横からアスラが淡々と会話に入ってくる
「ま、そう言う事。」
「しっかし寝ても覚めてもプロメテウスからは逃れられないのねー。あーやだやだ。」
私はわざとらしくポーズを取る
『そうね……貴女、以前から嫌だと言っていたし、貴女達が本当に望むならいっその事、孤児院の警備は無人機にして担当は別の誰か、そう、キュベレ辺りに……』
それまでハカセの隣で澄まし顔だったキュベレはえっと言う表情でハカセを見る。
「「ダメっ!!」」
私とアスラが珍しくハモる。
と言うか、アスラ……今、叫んだ?
ハカセは大声の拒否にキョトンとした表情を浮かべる。
「い、いや……と、途中で投げ出すとかダサいじゃない?
ほら、アイツらもいきなり先生が変わったら驚くだろうし?
あ、あの子とか私が抱っこしてあげないと落ち着かないし
それに、あの子は夜私が本読んであげないとなかなか寝ないし……ね、ねぇアスラ?」
ラクシャシーはあからさまに動揺し始める。
顔面は蒼白し先ほどまで澄ましていたのが嘘のようだった。
「ヤダ。ヤダ。ヤダ。寂しい。寂しい。寂しい。」
アスラが無表情のまま身ぶり手ぶりで嫌だを全力で表現していた。
あまりに鬼気迫るアスラの謎の動きにハカセはクスクスと笑う。
『ふぅ……わかったわ……大丈夫、貴女達が望むまでずっとそこにいて頂戴』
とハカセは微笑む
ハカセの隣のキュベレはそれを聞き無表情のまま胸をなで下ろしていた。
『……ただ警備に関しては強くするわ。
孤児院の周りに電磁膜を張り巡らせて、外部から何かが来た場合貴女達に直ぐ伝わるようにね』
「そりゃあ助かる。もう、あんな思いはゴメンだよ」
今後の話をしてハカセとの通信を終えた時、外の子供達が騒がしくなる。
「……なんだぁ?またなんか来たのかぁ?」
私は気怠げに椅子から立ち上がり外に出ると、そこには私服姿のメカニカルワルキューレ達が来ていた。
「よー遊びに来たぜラクシャシー」
アリアは髪を引っ張られながらもニコニコしながら子供を抱き抱えてくれていた。
ディアナは自前のクッキーを子供達に配っていた。
……ご飯前に勝手に渡されるのは正直困るんだけど、子供達の笑顔に免じて許してやる。
「な、なんだ!何で私に纏わりつく!?おわっ!?」
ナギサはなんか揉みくちゃにされて地面に倒れていた。
アイツら、何故かああ言うタイプ好きなんだよね。
何故かな?
「ふっ…お姉ちゃんが、来ましたよ」
メガイラ……まだやってんのかこの子…
「お邪魔しますラクシャシーさん、アスラさん。」
リリィは菓子折りを私に手渡してくる。
……んーまぁ、私達姉妹は食えないんだけど……心意気は買ってやる。
「二人は食べ物食べられないって聞いたから洗剤とか使える物沢山持ってきました」
いやぁよく出来た娘だねぇ!お姉さん感激だよ!……まぁ年の差無いけど。
その後彼女達と本当に他愛のない、コスメだとか、最近の流行りの服だとか、オススメの本だとかの話をして、皆で子供達と遊んだりしていたら
あっという間に時間は過ぎていきワルキューレ達は帰って行った。
子供達を寝かしつけ、暗くなった孤児院で私はふと思う。
───もしあのままプロメテウスに居たら、私達はどうなっていたのだろうと。
私達はきっとあのまま兵器として運用され、いつかは破壊か廃棄されていただろう。
後ろで寝ている子供達を見る。
彼女達もメカニカルワルキューレ達が助けなければ、あのまま生体部品にされていただろう。
寝息を立てている子供の髪を優しく撫でる。
「ありがとう…」
誰に向けた感謝なのかは、口にした自分にすら分からなかった。
でもこの奇跡を与えてくれた全てが愛おしかった。
私も……歩いてみるかね、プロメテウスの兵器では無く、彼女達と、メカニカルワルキューレとして。
……付き合えよ?アスラ姉さん。
今回でラクシャシーとアスラのメインストーリーは完結になります!




