第37話 これからの事
私は皆と会う前にエネルギーフィールドを展開して返り血を弾いた。外見は綺麗に出来た。うん。大丈夫。
私が外に出るとキュベレさんの輸送機に捕虜の少女達を収容している最中だった。
アリアはその場にへたり込んでいた。
私は思わずアリアに声をかける
「アリア、大丈夫…?」
もしかしたら人を殺めた事に心を痛めているのかもしれないと私が心配にしていると
「あー!めっちゃ疲れたー!」
アリアは何時もの感じだったので思わず安心する。
「お!リリィ!……リリィ?お前……」
私の顔を見たアリアは首を傾げる。
もしかしてまだ血が付いているのかとドキッとする。
「…お前もめっちゃ疲れてんな。早く帰って休もうぜ」
アリアの眩しい笑顔を見た瞬間、私は彼女を抱きしめていた。
アリアは「なんだ今日はそっちから来んのか?」と笑いながら何時もの様にヘッドロックをかけて来る。苦しい…けど今はその苦しみすら心地よかった。
私は帰って来たんだって
ナギサさんとディアナさんは子供達に優しく声をかけ、頭を撫でながら輸送機に誘導していた。
メガイラちゃんは…メガイラちゃん!?
メガイラちゃんを肩車したアスラを肩車したラクシャシーと言う謎のトーテムポールが完成していた。
「ふっ…これが姉の景色ですか」
メガイラちゃんがよく分からない事を言っている。
「いや、姉ってそう言うのじゃ無いからね!?」
ラクシャシーが突っ込んでいる割にちゃんと肩車しているのを見て思わず口角が上がる。
私は自分のした事を正しいとは思わない。それは違うと思う。だけど……
───皆の笑顔が守れてよかった
私達は笑顔でトーテムポールを眺めた。
ラボに戻るとコトネさんが思い切りハグして来た。どうやらダルクと私のやり取りは全てラボに聞こえていたらしい。
コトネさんの腕の中で、私は
「……聞こえてたんですか…」と、子供のように泣き出してしまう
「うん…全部、全部ちゃんと聞いてたよ。」
コトネさんも涙を流しながら優しく頭を撫でてくれた。
「リリィ…」
ハカセが今まで見たことも無い顔をしていた。苦しそうな、泣き出しそうな、後悔すら滲む、そんな表情。
「君に……君に沢山背負わせてしまった…私は…」
「ただいま、ハカセ…」
私が涙を流しながら笑顔を浮かべるとハカセもコトネさんごと私を抱きしめてくれた。
───
それからのラボは忙しかった。
何せ孤児の子供だらけなのだ。あのキュベレさんですら。「へ、ヘルプ。リリィ」
とボヤいているくらいだ。
更にラクシャシーとアスラが肉体が無いためアーマーの姿でしか居られず、椅子やベッドをビリビリにしてしまったり
メガイラちゃんがあれ以来、やたらお姉さん風を吹かしていた。お姉さん風に関してはハカセに一喝され止まってしまったけど…かわいかったのに。
そんな事があってしばらくした後、
ハカセはプロメテウス被害者の孤児達専用の孤児院を開いた。先生は何とラクシャシーとアスラ!
ラクシャシーとアスラの身体はハカセが"偽装"と言う特殊な技術でアーマーのままなのに外見と触り心地は柔らかな人肌と言う感じにしてくれた。エネルギーフィールドと空間湾曲の応用らしいけど本当にぷにぷにだった。凄い。
アリアは相変わらずスキンケアをしているし。
ナギサさんはミレイナちゃんが孤児院に行くのが寂しそうで、それをアリアにからかわれて赤面していてなんだか可愛いし。
ディアナさんは、私に沢山謝ってきた。
貴女の手を汚させてしまったと
──大丈夫だよディアナさん。
私は……罪を背負う。これは、私が選んだ道だから。
───
ハカセは1人ある場所に赴いていた。
──国際連合本部
国連の総合責任者、ソーマ事務総長から声をかけられていたのだ。
ソーマ、彼は齢38歳にして国連のトップに選ばれたエリートであった。
「やぁ……久しぶりだね。ベル」
ソーマはハカセが以前より穏やかな表情になった事に安堵していた。一昔前の彼女の表情は見ていられなかった。
「…ソーマ事務総長もお変わりなく。
就任、おめでとうございます。」
「ははっソーマでいいよ。」
「……それで話しと言うのは?ソーマ。」
2人のやり取りから旧知の仲なのだろう。
「単刀直入に言おう。国連に来てくれ、ベル。君の技術を活かし世界の為に協力して欲しい。」
「……その話なら、以前に断った筈でしょう?金銭面での支援、そして私の、メカニカルワルキューレの事を黙認してくれている事には、感謝しているけど…」
「金銭に関しては僕の、個人的な善意でしか無いから良いんだよ。そんな事よりも、そのメカニカルワルキューレにも是非、世界平和の為に協力して欲しいんだ。」
「……プロメテウスの後ろ盾をしてた人間が国連に居ることは既に知っているの。」
ハカセは真っ直ぐソーマ事務総長を見る。
「それは……」
「……もちろん貴方がプロメテウスと無関係なのは理解しているわ。でも、国連も一枚岩じゃない。これ以上、私の技術が外部に漏れるのは看過できないの。それに、未だプロメテウスの残党が世界でテロを起こしている。」
「……そうか、そう…だね……」
「では、私はこれで失礼します。……今日は会えてよかったわ」
「僕も……今日は君に会えて良かった!今度、食事にでも…!」
「……考えておくわ、ソーマ」
ハカセはそう言うと事務総長の部屋を後にした。
コツコツとヒールの音を響かせながらハカセは国連本部の廊下を歩く。右手の震えは未だ消えていない。
そう、私はこれからも戦い続ける。世界から戦争が無くなるその日まで、彼女達と共に。
プロメテウス編完結!




