第35話 正義と悪の戦いじゃない
私達が攻め込んだ事でプロメテウスの本拠地は地獄の様相を呈していた。
私達が想像していたよりも多くの人間が居た。
資料を急いで持ち出そうとする研究員や職員と思わしき人、別拠点へ退却の指示を出すオペレーター、私達に対し無人機達と共に抵抗する戦闘員。
私は自分に向けられる生の敵意や恐怖に困惑しながらもつい無人機の相手に専念してしまう。
生身の人間に銃口を向けた瞬間、どうしても彼らの後ろに居る家族を想像して引き金を引けなかったから。
私が戦闘員から銃口を反らした瞬間、弾丸が私の顔面に放たれる。エネルギーフィールドと空間湾曲により跳弾したものの、本来当たれば即死だっただろう。
それを見ていたディアナさんは私の後ろから弾丸が放たれた方に向かいビームを放ち、戦闘員の上半身は蒸発した。
「……やっぱり怖いわよね。」
ディアナさんが話かけて来る。
「貴女は人一倍優しくて真っ直ぐだもの。
……私も本来なら、貴女に戦ってほしくない。」
ディアナさんはビームを放ちながらこちらを見ずに続ける。
「でも……貴女自身で戦うと決めたのでしょう?
パーツにされた彼女達や、ラクシャシーとアスラみたいな娘をこれ以上増やさないためにも、私達の様な孤児を生まない為にも。」
そこでディアナさんはこちらを見た。
「なら、戦いなさい。リリィ。じゃなきゃ、貴女が守りたい皆の笑顔すら守れないわ」
彼女の真っ直ぐな、凛々しい瞳が私を真っ直ぐに見つめる。
「……ごめんなさいね。別に慣れろとは言わないの。でも、私は貴女に死んでほしくない。これは私の、家族としてのエゴよ。」
ディアナさんは苦笑いを浮かべると私の肩を叩いて別の敵に向かった。
そのディアナさんの背中を敵戦闘員が、ワルキューレの装甲を貫通する可能性の有る特殊兵装で狙うのが見え……私はコンバットメイデンを振り下ろした。
無人機とは違う柔らかな感触。うめき声。跳ね返る返り血。歯を食いしばり私はそのまま戦闘員を切り捨てた。
──こんな重荷を私はディアナさんや他の家族に背負わせて、自分だけ綺麗で居ようと居たんだ。そんなのダメだ。私も皆の罪を背負う。私の罪を背負ってくれた他の皆を守りたいから。そう……これは私のエゴだ。
これは正義と悪の戦いじゃない。どちらも譲れないから、だから争うんだ。なら、私は私達の信じる未来の為に剣を振るう。
私は一呼吸置くと自身の周りの、スローモーションになった炎を薙ぎ払い切り捨てる。
「……リリィ!!メカニカルワルキューレ、ヴァルキリー!これより敵拠点の壊滅を始めます!!」
私は飛び出し私達の未来を阻む者に刃を向けた。
───
アリアとナギサさんは捕虜の少女達を逃がしていた。
「走れるものは走れ!怪我をしている者は私達が守る!」
ナギサさんは放たれる弾丸をサムライソードで斬りはらいながら少女達に指示を出す。
「ここを真っ直ぐ行きな!大丈夫。必ず助けてやるからな」アリアは怯えている少女の頭を撫で笑顔を浮かべる。
「しかし……まだこれだけの数が居るぞアリアっ……どうする?」
ナギサさんが振り返ると未だ20人以上の少女が居た。
「はっ、何が何でも、無理でも全員助けるに決まってんだろ!私達は……メカニカルワルキューレだぞ!」
アリアはクローを最大出力で引き伸ばすと敵に向かい突っ込んだ。
───
メガイラちゃんとラクシャシー、アスラは無数の大型無人機達を相手に
対峙していた。ハウンドの直系の後継機に当たる最新型だ。
「しっかしアンタ、スペックはワルキューレの中で1番低いんだろう?」
ラクシャシーは敵の腕を引き千切りながらメガイラちゃんに話しかける。
それを聞いたメガイラちゃんは少しむっとした表情を浮かべる。
「……確かにカタログスペックで言えば、私のメカニカルワルキューレは他の物より性能は下です。……ですが、私は仲間を……家族を守ると決めたんです。そのためならスペックの差など覆してみせます。」
それを聞いたラクシャシーは嬉しそうに笑う。
「あはは、そりゃ凄い。頼もしい末っ子だこと」
そこでメガイラちゃんに目を向けるラクシャシー
「……スーツを着始めたのは私の方が1番先です。」
メガイラちゃんはまたまたムスッとする
「あはは!これは失礼しましたメガイラお姉さん?」
「お姉さん。」
ラクシャシーとアスラがメガイラちゃんをお姉さんと呼ぶと、まんざらでもない、嬉しそうなニヨニヨとした表情をする。
「メガイラ……お姉さん」
嬉しそうなメガイラちゃんを見てラクシャシーは苦笑いを浮かべる。
(茶化したつもりなんだけど……喜ばれると調子狂うわね。)
「ではお姉さんとして、ちょっとかっこいい所を見せます」
メガイラちゃんは得意気にそう言うと空中にコンソールを展開。敵大型無人機達を次々にハッキングして行く。
赤い瞳だった無人機達が青い瞳になったかと思うとプロメテウス本拠地を攻撃し始めた。
「おー。」
アスラが賞賛の声と手を叩くと。メガイラちゃんはニンマリしていた
「……こいつは……確かに凄いわ」
ラクシャシーも純粋に感心していた。
───
そして私は……最後の壁を突き破り……遂にダルク本人と対峙した。




