第33話 破壊の福音と復讐の雷鳴
「……ていうかさ、あー……ヴァルキリー?」
ラクシャシーは自身にしがみつき泣いている少女に声をかける。
「……なん……でずが?」
顔を上げたリリィの顔はラクシャシーが思わず苦笑いを浮かべてしまう程涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。
「いや……感傷にふけってるところあれだけどさ。
ここ……戦場のド真ん中だよ。」
「あ。」
私は急いで飛び起きて武器を構える。
ディアナさんも皆も今まさに首都に攻め込んでいる無人機達と戦っている。
この作戦は確かにラクシャシーとアスラの姉妹を助ける作戦だったけど、それだけじゃなかったのに……
「あー……まぁ?アンタらには聞きたいことも山程あるしさぁ……
……私達も手貸してあげるよ。どうせ"暇"だし……
……ねぇアスラ?」
「──プロメテウス……殲滅。」
アスラはファイティングポーズを取るとシャドーボクシングを始めた。
「え……一緒に……戦ってくれるの?」
私は歩き出した二人の方を見る。
二人は私に背を向けているから表情は見えないけど。
しっかり立って敵の群、プロメテウスの無人機達を見ていた。
「"暇"……をくれた訳だし……それに……」
ラクシャシーがそこまで言うと姉妹二人が顔だけこちらを振り返る。
「───私ら、アイツら、大っっっきらい!だからさぁ?」
ラクシャシーはニヒルに笑い、アスラは相変わらず無表情だった。
そのまま2人はゆっくりと歩いていく。
戦場だと言う事を忘れてしまいそうなくらい。
優雅に、大胆に、ここは私達の道だと言わんばかりに。
そして、徐々に加速していき無人機の群をボーリングのピンの様に弾き飛ばして行く。
「あはは!!なぁんだこりゃあ!!最高じゃないさ!!」
ラクシャシーとアスラは走って殴るというストロングスタイルで無人機達を次々に吹き飛ばし、鷲掴み引き千切っていく。
その光景を既に激戦にスタミナが切れかけたワルキューレ達、アリアやナギサが味方として参戦した最強の姉妹を見て思わず驚嘆の声を漏らす。
「おいおい……マジかよ、最高じゃねえか!」
アリアは汗を浮かべながらニヤリと笑う
「ははっ……圧巻、だな」
ナギサも畏怖と喜びの混ざった様な表情で乾いた笑みを浮かべる。
残弾数が切れかけていたディアナが、姉妹の進撃を見て零す。
「……はぁ、全く遅いくらいよ!」
毒づきながらも、笑顔を浮かべると、彼女たちの通り道を空けるように精密な援護射撃を加える
メガイラも薄っすら笑みを浮かべると、友軍認証パスを二人に飛ばし、メカニカルワルキューレのシステムに姉妹をリンクさせた。
二人の網膜表示にメカニカルワルキューレの武器スロットが追加される。
「ん?」
『……ラクシャシー、アスラ聞こえるかしら?
私はメカニカルワルキューレ総合責任者のベル……皆からはハカセと呼ばれている。
ハカセで構わないわ』
二人は初めて見るハカセの顔に驚く。
あんな少女達にしか使えない兵器を作るくらいだからダルクの様な変態ジジイが出てくるのかと思えば、少し疲れていそうだが、なかなかの美人が映ったのだから。
「……あんたが、ヴァルキリーの……あのリリィとかいうお人好しの親分?
……まぁ、変態ジジイよりはマシかもね」
ラクシャシーは網膜に表示されたハカセの顔にまんざらでもないという表情を浮かべつつ憎まれ口を叩く。
「はじめまして。ベルハカセ。」
『ハカセで良いわアスラ……とにかく、今貴女達の網膜表示に武器スロットが追加されたはずよ。
それで瞬時に戦場に武器を転送出来る。
……有効に使いなさい。』
「おいおい、良いのかい?
私達はリンクは切れてもプロメテウスの最強の兵器……」
『貴女達を、信じるわ。』
ハカセのその言葉を聞いてラクシャシーは押し黙る。
下唇を噛んで零れそうになる感情を必死に堪えた。
「……あーもう、分かったわよ!
あんたも、リリィも、揃いも揃ってバカなお人好し共め!
……やってやろうじゃないの、アスラ!」
ラクシャシーがアスラの方を見るとアスラは既に六本の腕に剣を装備しやる気満々だ。
ラクシャシーはそれを見てニヤリと笑う。
「行くわよ!!」
ラクシャシーが二本の剣を受け取ると、姉妹は鬼人の如き演武でプロメテウスの残存部隊を蹴散らしていく。
アスラは大型機に食らいつくと六本の剣で高速で貫きミンチにして行く。
大型機はあっという間に大爆発を起こし、そのままアスラは次の敵に喰らいついて串刺しにしていく。
まるで蜘蛛を思わせる捕食者の様な動きだった。
ラクシャシーは満面の笑みで肉薄すると剣で斬るのでは無くパワーで叩き潰していく。
刃の向きは気にせず、全力で叩きつける事で鋼鉄で出来たプロメテウスの機体達がぺしゃんこになる。
そして空中で戦場を見ていたプロメテウスのドローンカメラをラクシャシーは見つめる、カメラを通して見ているであろうダルクに向けニヤリと笑顔を浮かべる。
「……見てるぅ? ダーリン。
アンタの脳髄引き摺り出してグチャグチャにしてやるから、覚悟して待っててね?」
ウインクしながら剣を音速で投げ飛ばしドローンを粉砕した。
───
モニターが砂嵐になった拠点で、ダルクは珍しく怒りで震えていた
「クソっ!クソっ!まだ……
このドゥルガー計画は……!まだ始まったばかりだと言うのに……!私は……まだ!!
……メティス……!!」
苦々しい表情で司令席を叩くとダルク自身と女性、そして二人に抱き抱えられている少女の写った写真一枚目……それと次世代の兵器"ドゥルガー計画"の開発データを纏め撤退の準備を始める。
まさかプロメテウスの現最高戦力が二機同時に奪われるとは思っても居なかったのだ。
───しかし。
「ダ、ダルク司令!我が本部にメカニカルワルキューレ五機とラクシャシーとアスラの二機、急速に接近中です!」
オペレーターの怯えた声が響く
「な、なんだと……!?」
ダルクは驚愕する。
相手の、ベルの決断があまりに早すぎる。
先ほど奪取したばかりの兵器をそのまま戦闘に投入するとは考えていなかったのだ。
モニターにラクシャシーを筆頭に全機が真っ直ぐこちらに向かって来ているのが見えた。
『ダーリン……会いに来て上げたわよ?』
ラクシャシーは過去1番の笑顔だった。




