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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第一章 プロメテウス編
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第27話 激突・ラクシャシー 2


突然のラクシャシーの襲来。

アリアはまだ怪我が回復していないから戦えない。ナギサさんは先の決闘で専用武装が壊れてしまい、汎用的な武器を装備するしか無い……


今フルパワーで戦えるのは私とディアナさん、それにメガイラちゃんだ。


「……アリアは安静に! ナギサは、キュベレさんの予備兵装でラボの入り口を固めて!」

ディアナさんは叫ぶように指示を出し、私とメガイラちゃんと共に、外へと飛び出した。

夕闇が迫るラボの電磁膜の外に飛び出す。そこに、一筋の黒い雷光のようにラクシャシーが降り立つ。

「あはははっ! 早いお着きだね、ヴァルキリー! アレクト!そんで私達と同じ、イジられまくって壊れた人間モドキのメガイラ!」


「……最初から壊れてなど、いません。私は……リリィに、ディアナに、アリアに日々色々な事を教わっています。……そして優秀で誰よりも優しいハカセにデザインされた、完璧なワルキューレです。」

メガイラが、かつての無機質な瞳ではなく、微かな意志を宿した瞳で4枚のバインダーを構える。


「……へぇ……ダルクのくれた資料とは違うのねぇ……まあ、どのみちスクラップになるのに変わりないがなぁ!!」


黒い雷光となったラクシャシーが、一瞬でメガイラちゃんの懐に飛び込む。機械化された脚部による、音速を超える蹴撃。

私とディアナさんの反応が間に合わない。


「……甘い、です!」

メガイラちゃんは咄嗟に4本のバインダーを盾として重ね、衝撃を相殺。4枚のうち2枚が破壊されるも、その隙間からディアナさんが収束したビームの弾丸を浴びせ、ラクシャシーを後退させる。すかさず私がコンバットメイデンを振り上げラクシャシーに肉薄。コンバットメイデンの強力な斬撃を、なんとラクシャシーは腕部のみで防ぎ、激しく火花が散る。

「……っ、片腕だけで、コンバットメイデンを……!?」

「あははっ! さすがに重いねぇ! でもね、ヴァルキリー。そんな『人間じみた』剣じゃ、私は切れないんだよ!!」


ラクシャシーがスラスターを吹かせ押し返そうとする。私も負けじとスラスターを吹かすが私の抵抗なんて何も意味は無いとばかりに凄まじい速度で岩壁に押し付けられる。


「ぐふぅッ!!!!」


激しく身体を打ち付けた事で私は一瞬、呼吸が出来なくなる。ラクシャシーは恐ろしい笑みを浮かべたまま、岩壁に打ち付けられた私に拳を繰り出す。

私が首を反らせて回避すると数十メートルもある岩壁が一瞬にして砕け散る。


砕け散る岩煙の中から、ディアナさんの怒声が響く。

「リリィから……離れなさい!」


メガイラちゃんが残った2枚のバインダーをブーメランのように操作し、ラクシャシーの追撃を遮断する。


「ちっ……あぁ弱い弱い!!群れないと戦えない雑魚ばかり!!」


ラクシャシーはそう言いながらもニヤリと笑顔だ。

まるで力を振るうのが嬉しそうな、自由を謳歌しているかの様な挙動。


煙の中から這い出し、私はコンバットメイデンを握り直す。

「……何がそんなに嬉しいの? ラクシャシー。……そんな風に、壊して、壊して……そんなのの、何が嬉しいの!?」

私は疑問をぶつける。自身をそんな身体にしたダルクは憎くないのか、何故プロメテウスの為に戦うのか、理解出来ない。そして破壊や戦いを楽しむ様な言動も、私は理解出来なかった。


「何が嬉しいのかって……? あははっ! 決まってるじゃないか!」

ラクシャシーが跳躍し、空中で身を翻して手刀による斬撃を叩きつけてくる。

私はコンバットメイデンでそれを受け止めるが、火花越しに見える彼女の瞳は、狂ったような歓喜に濡れていた。

「私たちがこうして『外の空気』を吸えるのは……自由に活動出来るのは……誰かを壊していいって許可が出た時だけなんだよ!! この瞬間だけが、私とアスラに許された自由だ!!」


「……っ、そんなの……!」


「逃げられない、死ねない、望むこともできない! だったら、この『自由はかい』を全力で楽しまなきゃ損だろうが!? さあ、もっと泣き叫べよヴァルキリー!! アンタが壊れれば壊れるほど、私は自由でいられるんだからさぁ!!」

絶叫と共に、ラクシャシーの四肢の駆動音が悲鳴のように高まる。

怒り。悲しみ。そして、破壊への渇望。

それらが混ざり合った「憤怒」を魔力結晶はより純粋に膨れ上がらせ、私の剣を押し込んでいく。


押し込まれる私を救うべく、ディアナさんが銃撃を重ね、メガイラちゃんが残されたバインダーでラクシャシーの死角を突く。

「……っ、この出力……! 魔力結晶が、このままではラクシャシーは焼き切れます!」

メガイラちゃんの分析が、これはラクシャシーの命を削る戦いであることを示す。


───


──そうさ、私が死ねば相互作用の爆弾は機能しなくなるかも知れない……そうすりゃ、アスラは爆弾で怯えなくて良くなる……なら



「あはははは! さあ、もっと熱く! もっと壊して! 灰も残らないくらいに焼き尽くしてやるよぉ!!」

全身の排熱ダクトから真っ赤な蒸気が噴き出し、ラクシャシーの姿が憤怒の炎に呑まれていく。


まるで悪魔の様なその姿に悪寒が走る。

でも……


「ダメだよ。」


私は真っ直ぐラクシャシーを見据えて言い放つ。

「貴女の怒りはきっと最もで、力を振るう理由も何となく分かった気がする。……でも……そんなのダメだ。」


きっとラクシャシーとアスラにはプロメテウスから逃れられない理由も有るんだと思う。だから私はそんな痛々しいラクシャシーを通して、今もこうして彼女達を通してこそこそと隠れ、嘲笑いながら私達を見ている醜悪な元凶を睨みつける。


「ダルク……貴方……お前だけは絶対に許さない。たとえ地の果てに居ても必ず見つけ出して、私が、私達が切り捨てる。覚悟しろ!!」



ラクシャシーは私の、ダルクへ対しての「お前だけは許さない」という言葉を聞いた時、一瞬だけ"驚き"と"羨望"が混じったような……そんな表情を浮かべた。

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