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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第一章 プロメテウス編
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第23話 他者を思う強さ


ティシポネがラボに戻った時、ラボは普段の緩やかな雰囲気と違い、殺気だったような、悲壮感が漂う様な……何とも言えない、重々しい空気が漂っていた。



ティシポネが少女を背に棒立ちしていると見覚えのある、赤髪の少女が見えた。



……確かMV-03アレクトの適合者……ディアナと言ったか。


ディアナはティシポネの存在に気付くと鋭い眼光を向け詰め寄る。



「貴女……こんな大変な時にいったいどこにっ!……」


そこまで言ってディアナは、ティシポネの後ろの少女に気付くと語気を弱めた。



「……何をしていたのか、何が合ったのかは、

今は聞かないわ。


貴女の過去も……リリィから聞いた……でもねっ…」


ディアナは目に涙を溜める。


「貴女があの時あの場に居てくれたら……アリアはあんな事にならなかったかも知れないのにっ……」


ディアナは、それがただの八つ当たりだと理解出来ていた。


頭では理解出来て居たが、言わずには居られなかった。


その時ティシポネの後ろに隠れていた少女がディアナに駆け寄る


「…お姉ちゃん……大丈夫?」


その言葉を聞いたディアナは苦悶の表情を浮かべると膝を付いて少女を抱きしめ、声を出して泣き出した。



その後オペレーター達に肩を抱かれながらディアナは去ってしまった……



ディアナが言うアリアとはヘルの適合者……あの金髪の少女だ。



───何かあったのか?今のラボのこの空気と関係があるのか……



ティシポネが行く当てもなくラボの中を少女と歩いている時だった。


通路の端のベンチにヴァルキリーの適合者……リリィが居た。


彼女はこの間の任務の時とは違い俯いて酷く憔悴している様だった。


ティシポネは思わずリリィに歩み寄る。


「……いったい、何が……」


と聞こうとしてベンチの目の前の自動ドアが開き、中からキュベレが出てきた。


リリィはキュベレに駆け寄る


「あ、アリアは……アリアは大丈夫ですか!?」


キュベレは冷静に説明を行う。


「処置は無事に終了しました。


メカニカルワルキューレのおかげで致命傷には至っておらず、直に目を覚ますでしょう」

その言葉を聞いたリリィは安堵の涙を流す。



「ティシポネのお姉さん……」


その時私の手を少女が引っ張る。


ティシポネが少女の方を向くと


「……皆、泣いてるね。」

と小さくこぼした。



私が居ない間に……何があったと言うんだ。


私は……自分の力が必要な時にうつつを抜かして居たのか。



何が合ったのかすら分からないまま自身に苛立ちを覚えた。




ティシポネがハカセの元へ向かうと、

ハカセはラボに帰らなかった事を怒ることもせず、ティシポネが連れてきた少女の素性等を確認し、保護を約束してくれた。



ティシポネは自身が居ない間に何が合ったのかをハカセに聞いた。


「……敵は遂にメカニカルワルキューレのまがい物すら出してきたのよ……」


そう言うとハカセはリリィ達が交戦した黒いワルキューレ、アスラとの戦闘記録映像を見せてくれた。


唖然とした。


映像の黒い化け物は、いくらティシポネより前の型のヘルだとしてもメカニカルワルキューレを玩具の様に弄んで居たのだから。



──私が居たとしても、勝てなかった。



映像を見たティシポネはそう直感していた。


そもそものスペックが違いすぎる。



更に映像の最後にはもう1機が現れたのだ。


あんな化け物がもう1機……ティシポネは冷や汗を流していた。


1人で最強になるだなどと自惚れていた自身の傲りを恥じた。



……それと同時に、ティシポネはある決意をしていた。




ティシポネは少し落ち着きを取り戻したリリィの元に近付いていった。



───





「あ……ナギ…ティシポネさん……その、さっきはごめん。無視しちゃって……」



私はアリアの事でいっぱいいっぱいでナギサ…ティシポネさんを無視した形になってしまった事を謝罪した。


「いや……構わない。」


ふと視線を落とすと、ティシポネさんは見たことも無い少女を連れていた。


私はしゃがむと少女と目線を合わせる


「私はリリィ……貴女のお名前は?」


「えっと……ミ、ミレイナ……」

ミレイナちゃんはティシポネさんに隠れがちに名前を教えてくれた。


───もしかしたら、今の自分は怖い顔をしているかもしれない。


私はなるべく笑顔になる様に努めた。


「そっか……綺麗なお名前だね。」

少女と私が笑い合うのをティシポネさんはラボに来て始めて見せる穏やかな顔で見ていた。


後に教えてくれたのだけど、ティシポネさんはこの時、私の"どんなに辛い時にも他者を思える強さ"を見ていた、らしい。



そして私が立ち上がると、唐突にティシポネさんは言った。

「リリィ……私と決闘をしてくれないか」


ティシポネさんの赤い瞳は真っ直ぐに私を見ていた


「えっと……ケットウって……あの決闘……?」


彼女が何をしたいのか、何がなんだか分からなかった。



「意味が分からないのは理解している、ただ……私はもっと強く成りたい。


もう、誰にも悲しい思いをさせない為に……だから……私に無い強さを持つ……リリィ。


お前の強さを、私に見せて欲しい。」



そう言って彼女は深々と頭を下げてきた。


……結局、彼女の言いたい事は理解出来ないけど、彼女が何かを求めて藻掻いているのは理解出来た。



───だから…ハカセから彼女の過去を聞いてしまった私は、そんな彼女の不器用な思いに応えたい…と、そう思ったんだ。

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