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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第127話 家族


エネルギーの全てを使い果たし、動く事すら出来なくなったリリィをエクゾスケレートごと背負うとナギサはヴァルハラに向かった。


「すみません……ナギサさん、負けた挙句運んでもらっちゃって」


「なに、気にするな。


それに性能差のある状態で武器が破壊されたんだ……私の負けさ。


これでリリィはメガミドライヴ搭載機と戦えることが証明された事になる。


だろう?」


ナギサはそう言うと背中のリリィに振り向きウインクしてみせた。


つまり、最初からナギサは他のメカニカルワルキューレ達にもリリィは戦えると示すために模擬戦を挑んできたのだ。


「だが、あくまで戦える……だ。


しばらくはエクゾスケレートに身体を慣らし、ハカセにもより強い機体に鍛えてもらえ。」



「はい……その時は、また模擬戦良いですか?」


「あぁ……次は勝つさ。」


リリィとナギサは互いに笑い合った。



───



「なるほど……あれはつまり、メカニカルワルキューレなりの洗礼の儀……という訳ですわね?」


リーナはナギサの先ほどの奇襲をその様に解釈した。


「いいえ、メカニカルワルキューレをそんな武闘集団にしないでちょうだい。あれはあくまでナギサ流の挨拶よ」


ハカセはため息混じりにそう言いながら笑い合う二人をモニター越しに眺めていた。


「それにしても、ベル博士が驚かないという事は、日常的なものなのですね……」


「……そうね……皆、本当に個性的で……いちいち驚くのにも疲れたわ。」


ハカセはそう言いながらも無意識に口角を上げていた。


その優しげな表情を見つめ、リーナもまたハカセの眺めているモニターに視線を向けた。



「……手のかかる子たち程可愛いものですものね。


───本当に、素敵ですわね。」



メカニカルワルキューレはもはや組織では無く、既に家族なのだとリーナは理解した。



───



宴会も終え、夜が明ける。




ハカセはヴァルハラ内部のブリーフィングルームに全メカニカルワルキューレを集めると、ハカセの隣に立つ国連事務総長のソーマからの依頼、要人救助作戦の内容と必要性を語った。


「───つまり、ティターニアの拠点に監禁状態の国連穏健派議員の救助とティターニアに強制的に協力させられている科学者の救助を同時に行う作戦よ。


前者はガドルの行いが一部過激派の凶行であり、奴の罪を世界に示すための決定打となる。


そして科学者達の救助を行う事でティターニアの兵器生産能力を奪う事も出来る。


この作戦はアトラスと協力して行うわよ。


……質問はあるかしら?」


ハカセが全てを伝え質問を投げかけるとミレイナが手を上げた。


「私とナギサさん……チームサムライも以前、別任務中にティターニアの科学者達を解放した事があります……


しかし、彼ら科学者の皆さんは、自分達の家族にティターニアの危害が加わる事を恐れている様でした。


彼らを助けるだけでは解決にはならない気が……」




『そこは私達、アトラスにお任せくださいな。』


突然ブリーフィングルームのモニターにリーナの顔が映る。


「アベさん……?」

ナギサが突然浮かび上がったリーナの顔に疑問を浮かべる


『……アヴェリーナですわ、アヴェリーナ。


……とにかく、既にアトラス側で科学者達の四親等までの家族の所在地の把握、現在の職歴、友好関係から趣味嗜好まで調べ上げております。


……ティターニア、ガドルの魔の手から守る為ですもの、多少の恥は水に流してもらいましょう。


……彼らの保護はこちらが全力で引き受けますわ。』


リーナの笑顔を見てフィレアは思わず引きつる。


「……いや、ティターニアに殺されるのと、全部知らない組織に丸裸にされんの。どっちが幸せか分かんないわね……」



リリィもフィレアの独り言に多少共感し苦笑いを浮かべつつ、それでも手を握りしめると一歩前に出た。


「……それでも……死んじゃったら、それで終わりだから。」


フィレアはそう言ったリリィの顔を覗き込む。

メカニカルワルキューレにもなれず、どんな落ち込んだ顔でそんな事を言うのかと。


しかし、リリィの真っ直ぐな瞳に、

既に落ち込みや苦悩の色が無いことを察し、

やれやれという表情で肩を竦めた。



「楽しい事、嬉しい事……苦しい事も、嫌な事も、全部生きているから感じられる事なんだ。


───死んじゃったら、そこまでだから。



だから、皆で助けよう……私達、メカニカルワルキューレで。


……ガドルに苦しめられてる皆を……私達で。」


リリィの言葉に第二世代ワルキューレ達は静かに頷く。


しかしリリィの相棒であるアリアだけが噛み付いた。


「リリィ……お前あの装備で出ようってのかよ」


アリアの問いにリリィはしっかりと頷く。


他のワルキューレ達はナギサが示させた情報から既に飲み込んでいるようだったが、アリアだけは認めていなかった。


「ナギサに勝ったからなんだってんだ!


もしまたお前が傷ついたら……アタシは……っ」


「……ごめんアリア。

私が傷付いたから……不安にさせちゃって。


絶対なんてこの世界には無いけど、

それでも私はアリアと一緒に空を飛びたいの。


……わがままなバディでごめんね」


リリィはそう言いながらアリアの手を優しく握るとアリアはその手を思い切り握り返し、そのままヘッドロックをかました。

「……勝手に傷付いたり、死んだりしたら死んだ事後悔するくらい凄いことリリィにしてやるからな!」


ナギサは腕を組みながらアリアに質問する。

「生者が死者にやれる凄い事とは……何だ?」


「うるせぇゴリラバーカ!!」


ゴリラの一言が余計だったのだろう、アリアがナギサに羽交い締めにされた。

 

そんな彼女達のやり取りを見てハカセはため息を零す。


しかしソーマとトニオ、そしてモニター越しのリーナは目を細め笑顔を浮かべた。


「これが……ワルキューレ(家族)…か。」


三人のうちの誰が零したか分からないそれは、しかし───確かに彼女達の在り方を示していた。

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