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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第126話 ナギサの思い


リリィの事が心配だった。


自分が託したコンバットメイデンで巨大兵器を貫いたと聞いた時は我が事のように喜んだ


しかし、次に通信から聞こえてきたのはリリィが重傷を負いヴァルハラに運ばれるというものだった。


アリアが必死の形相で背負うリリィを見た時、私は血の気が引いた。


アトラス製のパワードスーツから顔だけ覗かせるリリィ。


しかし顔の穴という穴から血を流し、普段の桃色からは程遠い不自然なほど青白い顔……


そんなリリィを見て一瞬でリリィの命が危ういのを理解した。




アリアと二人、リリィの治療が成功するのを病室の外で待っている時、ローレンツと名乗るアトラス兵士がパワードスーツのまま病室の前に現れた。


普段であれば、これから共闘を行う可能性のある相手に刃を向ける様な真似はしないつもりだったが、今回はリリィの件もあり、私は虫の居所が悪かった……


つい、剣先を彼に向け威嚇してしまった。


………あの時、アリアが彼に攻撃を仕掛けようとしなければ、先に攻撃していたのは、私だっただろう。



意表を突かれたのは、そんなローレンツの妹を名乗るネガ・メガミドライヴであるロゼッタの登場だった。


そこで始めてアリアと私は何故アトラスが戦っているのかを聞かされた。

リリィにパワードスーツを託したというローレンツの後悔も……


三者三様にリリィの怪我の後悔を胸に病室の前で立ち尽くしていると、病室のランプが赤色から緑に切り替わった。


つまり、リリィの治療が終えた事を意味していた。


三人で病室に入ると、リリィは既に目を覚まし、ゆっくりと起き上がってみせた。


その様を見て私達は安堵したが、リリィがメカニカルワルキューレになれないという情報をロゼッタから聞いていた為、複雑な心境だった。


……だからハカセとアトラスの科学者であるアベさんでリリィの新しい力を造ると聞いた時、嬉しく思ったが、実際にハカセから見せてもらったエクゾスケレートと名付けられたリリィの鎧のスペックを見た時、私は顔を歪めた。


───明らかに性能の低いパワードスーツ。


防御力も装甲面積を増やし、魔力結晶片にエネルギーを蓄えて補うというつけ焼き刃。


こんな力で戦地に出れば、先ほどの二の舞になるのではないかと、リリィの血だらけの顔が脳裏をよぎった。



───だからこそ、私はこうして刃を交える。こうする事でしか、私は自分の気持ちを表現出来ない。


リリィに戦って欲しいのか、休んでいて欲しいのか、私自身が分からなかったから

リリィに示して欲しかったのだ。


ミレイナにも……この性格せいで散々迷惑をかけた。


リリィに刃を振るっている時、私はそんな事を思いながら、内心苦笑いしていた。




───



リリィが無理やり引き上げた力はバケツを引っくり返した水の様な物。


要は爆発でしか無い。


この力は持って三十秒……いや、それ以下かも知れない。しかし、その瞬間だけリリィはメカニカルワルキューレと同等かそれ以上の力を引き出せる。


「はぁあぁあぁ!!」


リリィは叫ぶと凄まじい斬撃をナギサにぶつける。


自身の思いを一刀一刀に込めて。


そしてついに、リリィの刃はナギサのサムライソードの硬度を上回り、二振りのサムライソードを切り裂いてみせた。



───しかし、それと同時にエクゾスケレートのエネルギーはゼロになり、リリィはその場に膝を着いた。



その場には二人の荒い吐息だけが聞こえ、遠くでは宴会の楽しげな音が聞こえた。



「リリィ……これだけは、理解してくれ。


お前と再び空を飛べる事、本当に嬉しく思う。


だが……」


ナギサは息を切らしながらもポツリポツリと言葉を零す。


「……死ぬな。



お前が戦う事で救われる者はあっても、



お前が死んで救われる者は、居ない。」


そう零すナギサの表情は笑顔であり、大粒の涙で溢れていた。


「リリィがあの時、私に示してくれたから、私は今もメカニカルワルキューレとしてここに居る。


だからリリィ……私はお前の剣であり盾であろう。


足りないのなら、補え合えば良い、それが……仲間……家族だものな」


ナギサの言葉を受け、リリィは涙を浮かべる。



リリィはこれまで、どこか自分の命を軽視していた。



守れるならそれで良いと、はなから勘定に入れていなかった。


しかし、今回沢山の人が自分の為に涙を流してくれた。 



───だから、彼女達を悲しませないためにも……


家族を裏切らないためにも……



「はい……ありがとうございます……ナギサさん……私、頑張ります。


これからも、今まで以上に」



その思いは、歪かも知れない。



それでも確かに、リリィは再び空に舞い戻った。



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