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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
125/127

第125話 ミラージュ


ナギサの放った鋭い突きをリリィはギリギリで回避する。


しかし───次の動作を行おうとした時、リリィの身体が思う様に動かない


「くっ……!」


リリィは無防備な腹部を蹴り飛ばされ、地面を転がりそうになるもスラスターを無理やり吹かせ、そのまま地面を滑る様にしてナギサから距離を取ろうとする。


だが、ナギサはそのまま追従しサムライソードを振り下ろす。


リリィはデルズキー超高周波ブレイドを両手で横向きに構えると振り落とされたサムライソードを受け止めてみせた。


「待ってください!ナギサさん!いきなり何故!?」


リリィの困惑は当然の物だった。リリィには仲間にいきなり襲われるいわれはない。


「何故だと……!?」


ナギサはその言葉に更に激昂しもう一振りのサムライソードでガラ空きのリリィの脚部に放つが、リリィは膝でサムライソードの柄を蹴り上げることで何とか攻撃を防いでみせた。



───



そんな二人の戦いをリーナは困惑気味に見ていた。


いきなり行われた仲間割れに部外者のリーナは緊急事態なのかとハカセの方を向く。


「ベル博士……これは……?」


しかし当のハカセは頭に手を置き、ため息を零すだけだった。


「全く……ナギサ、相変わらず口が回らないわね……」


ハカセはやれやれという表情でリリィに通信を行った。



───



『リリィ。聞こえるわね。今のナギサには、貴女の新しい力を示すしか無いわ。』


リリィはそのハカセの冷静な声を横目にナギサの猛攻に耐えるのに必死だった。


「でもっ…!メカニカルワルキューレより性能の劣るエクゾスケレートじゃ……!」


リリィは思わず零す。

二人が徹夜でエクゾスケレートを作ってくれた事には感謝している。


しかし───やはり、力が足りない……


『……であれば、エクゾスケレートも貴女も、そこまでと言う事よ。リリィ』


「……っ!」


『ここで負けるのなら、これからの戦いで貴女は……必ず死ぬわ。』


ハカセの冷たい言葉を受け、リリィはナギサの顔を見る。


───強くて不器用だけど、繊細で優しいナギサ……リリィはそんな彼女が大好きだ。



ハカセの言葉を受け、突然襲ってきたナギサの思いをようやく理解出来た。



「ありがとうございます……ハカセ!ナギサさん!」


リリィはスラスターを一瞬全力で吹かせると機体重量差を利用してナギサを無理やり弾き飛ばす。


「!!」


ナギサはリリィの突然の礼に意表を突かれ、一度後方に下がる。


「……示します!私の覚悟、ナギサさん達と一緒に戦う為の新しい力を!」


リリィは新たな剣を構え直すとハカセに投げかける。


「ハカセ!エクゾスケレートのエネルギー制御の仕方はメカニカルワルキューレと同じなんですよね!?」


『……えぇ。』


リリィはハカセの言葉を聞いて笑顔を浮かべた。

「……行きますっ!」


リリィは全身に装着された魔力結晶片に蓄えたエネルギーを一気に解放する。


それは本来、メカニカルワルキューレであれば問題の無い力の使い方。


完全なメガミドライヴであれば可能なブースト機能。


しかし、現在の休眠状態の魔力結晶をコアとしたメガミドライヴと、機体各所の魔力結晶片に蓄積しただけのエネルギーでは、ただ一瞬で枯渇してしまう荒業だ。


それでも───リリィはその一瞬に今の自分が出来る全てをかける事にした。



不器用なナギサの優しさに、己の力を持って報いるために。



一人の───メカニカルワルキューレとして。



───ただ出力を上げるのとは違う、蓄積したエネルギーの全てが無理やり放出され、それはエクゾスケレートの周囲を儚く漂う。


まるで……




「ミラージュ……」


その光景を見ていたリーナがポツリと零した。


備え付けられたシステムでは無い。


新たな力などではない。


これはリリィの───彼女のあがき。


「……迷惑だとしても、私、戦います。

大好きな皆と、皆の笑顔を守りたいから。

だから……これは私の……わがまま……」



リリィは儚く揺れるエネルギーを纏いながら、デルズキー超高周波ブレイドを構えた。

 


「……ナギサさん。これが、今の私の精一杯……私の、わがままです!」



リリィの叫びに光に照らされたナギサの口角が上がった気がした。




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