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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第118話 新たなる指標


ハカセは一人リリィのデバイスを手にヴァルハラの自室兼研究部屋に入る。


自動ドアが閉じたと同時にその場にへたり込むとデバイスを胸に突然泣き出す。


検証も無しにその場の勢いで魔力結晶の精神干渉保護フィルターを解除した事実と、それにより理由は分からないが魔力結晶が破損してしまった事で参ってしまっていた。


せめてもの救いはリリィが以前のリリィと乖離が無さそうだと言う事と、リリィの傷が理由こそ未だ不明だが完全回復した事か。


「サイサ……私達は触れてはならない物に手を出しちゃったのかも知れない……」


魔力結晶……二人で未知の高エネルギー物質にそう命名した頃はまさかこんな事になるなんて考えてはいなかった。


しかし───今更立ち止まる事は許されない。


自分達が開発したメガミドライヴが、形はどうあれ世界を歪めてしまったのは紛れもない事実。


───ティターニア……ガドルを倒すまでは……


そこまで考えてハカセは頭を抱える。



プロメテウスを、ダルク・グリードを倒した時だってこれで終わると思っていた。


───なのに実際はプロメテウスがテロ活動をしていた時より更に酷い有様だ。


少女達は資源として消費され、戦火は益々広がりを見せている。


それらの全ての元凶は自分ときた。


「本当……どうすれば良いの……」


ハカセは纏まらない思考の中、ゆっくりとデスクに向かうとリリィのデバイスにアクセスし魔力結晶の状態を解析し始める。


「ん……これは………」


ハカセは齎されたデバイスのデータを訝しげに見つめていた。



───



「"エクゾスケレート"……リリィ?」

リリィは突然リーナが放った言葉に首を傾げる。


「えぇ……私の故郷の言葉で"外骨格"を意味します。

すなわち……貴女達メカニカルワルキューレ風に言うなら……パワードリリィ……かしら。」

リーナが楽しそうに話している間もリリィは首を傾げ続ける。


「えっと……つまり私のパワードスーツを作ってくれるって事……ですか?でも、全然関わりのなかった私にどうしてそこまで……」


リリィからしてみれば少し前に会ったばかりの知り合いくらいの認識だった。


既に自分はリーナにも治療をしてもらったしそこまでしてもらう義理は無いと思っていた。


「貴女には返せない借りが沢山ありますわ。


ダルクを倒してくれた事、そして先ほどの戦闘でも貴女が大型兵器を自身の身体を犠牲にしてまでも倒してくれたではありませんか。


アトラスの科学者として、改めてお礼申し上げます。」



「……何より!貴女が寝ている間に貴女のワルキューレとしての戦闘データを拝見致しましたわ!


優雅でありながら過激、流れる様に敵に近づき、雷の如き剣捌きで敵を斬り裂く!


───あんなもの見させられたら開発者として貴女の為の力を開発したくなりますわよ!」


そう言ってリーナは握手したままの両手をブンブン振ってきた。


……確か脳はおばあちゃんだと聞いたが、精神は身体に引っ張られるものなのだろうか


リリィはこれまたハカセとは違ったかわり者だと苦笑いを浮かべた。



───



アリアは何とかヴァルハラの甲板でロゼッタを捕まえると自身の股ぐらにロゼッタを押し込みその場に座った。


「……なあロゼッタとやら」


『なんですか?アリアさんとやら』


「……お前は本当に奇跡の産物で、普通はネガ・メガミドライヴに意思が残るのはあり得ないんだよな?」


『ふひー……何度も言いましたが、ロゼッタちゃんはネガ・メガミドライヴ界においてオンリーワンで特別で最可愛なのです。』

ロゼッタは身振りでやれやれというジェスチャーをした。


『私の様なネガ・メガミドライヴが他にいてたまるかってんです。』


「本当に……本当なんだよな!?」


アリアがロゼッタをギュッと抱きしめる。

 

リリィ程では無いがアリアも怖いのだ。


もしかしたら自分達はロゼッタの様な心を残したメガミドライヴを……今まで、助けられたかも知れない少女達を殺していたのでは無いか……と。



アリアの手の震えを感じたロゼッタは少しだけ真面目なトーンで言葉を紡ぎ出す。

『───アリアさん。


先ほど病室で言いましたが、私は他の魔力結晶の意思を感じ取れます。


例えば貴女の適合した魔力結晶は……うわっなんかイノシシみたいですね……しっしっ!


───と、とにかく、ネガ・メガミドライヴになった彼女達の思いは一つしかありません。』


そう言うとロゼッタは股ぐらからアリアの顔を覗き込む。


『この子を……早く解放してあげて……です。


───ネガ・メガミドライヴの魔力結晶は皆、資源として消費される少女達を楽にしてあげて欲しいと泣いているんですよ。』


「そう……なのか?」


『そうなのです!なので今まで通りバシバシ助けてあげてください!


───それが出来るのは、貴方達メカニカルワルキューレだけですから。』


そう言うとロゼッタはアリアを蹴り飛ばす。


「んぎゃ!!」

と悲鳴を零すアリアを残してロゼッタはヴァルハラから降りていった。


『アディオース!アリアさーん!』


落ちながらそう叫ぶロゼッタにアリアは


「もう来んな馬鹿ドライヴー!!」

と甲板の手すりから身を乗り出し叫んだ。


───叫び終えたアリアの表情は晴れやかなものになっていた。


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