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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第116話 目覚め


「リリィ……」

ヴァルキリーはポツリと本人には届かない位置で声を零す。


リリィは本当に自分によく似ている。


容姿はもちろんだが、何より似ているのは心の在り方だ。


彼女の誰にでも優しすぎる在り方は生前の、何も知らなかった頃の自分を連想する。


リリィはこれから現実を知り打ちのめされ、絶望の中朽ち果てるだろう。


皆を守りたいとがむしゃらに藻掻いた生前の自分の様に……


ヴァルキリーの表情に影が落ちる。



「貴女も……皆を守りたかったの?」

リリィの放った言葉にヴァルキリーは思わず顔を上げる。


「リリィ……君は……」

突然のリリィの質問にヴァルキリーの攻撃は止まる。


それを受け、リリィもまた剣を降ろした。


「よく───分からないけど……貴女の思いが伝わってきて」

リリィのその言葉でヴァルキリーは外で何が起きているのか理解した。


「ベル……あれを外したのか。」

ヴァルキリーは空を見上げると再びリリィの方に向き直る。


「リリィ………私も、生前は君のように全てを救いたかった。


迷える人々、共に戦う戦友達……でも」


ヴァルキリーは剣を手放すと自身の両手を見つめる。

そこにあるのは自身の両手のみ……


いや、既に肉体すら失い


今はもう───何も……何も無い。


「……守ろうとすればするほど、手を伸ばせば伸ばすほど───跡形もなく崩れていく。

その果てに私は……っ」


そこまで言いかけたヴァルキリーをリリィは遮る。


「───貴女がどんな気持ちだったか、今なら何となく分かる……


辛かったよね………苦しかったよね……


助けたはずの人達から裏切られて、友達もどんどん死んじゃって……


最後は恐ろしい力を持った"怪物"として処刑される……そんなの……誰でも絶望するはずだよ。」

リリィが自身の過去を覗き見て泣いているのをヴァルキリーは申し訳なさげに見守る。


……あの地獄を見てほしくなかった。


きっとリリィも自分と同じ様に絶望を……




「でもね……」



「貴女が頑張って守ってくれたから今の私達があるの。


───だからけして


貴女の思いも、戦いの果てにあったのは、けして絶望だけじゃない



……ありがとうヴァルキリー。私達を、守ってくれて」



その言葉を聞いてヴァルキリーの表情は驚きの色に染まる。


リリィは今確かに自分の記憶を垣間見たはずだ。


これから己が辿るだろう地獄を……


───その終局を前にしてもリリィは折れていない。



「君は……違うのか……?私と……」


「うん………私は、ヴァルキリーみたいに全部助けようなんて出来ない。


でも……皆の笑顔を守るって誓ったの。


もちろん、貴女の笑顔だって守りたい……


だから、そのために戦う、戦い続ける。


───それが、私達……」


リリィが周りを見渡す。そこにはそこに居ないはずの他のワルキューレ達


皆のシルエットが浮かび上がった。


「私達、メカニカルワルキューレだから!」


───リリィが笑顔で叫んだ時、暗闇だった世界は光に包まれる。



温かな光の中、ヴァルキリーは柔らかな笑顔を浮かべた。



───



「そっか……それなら……良かった」

ヴァルキリーはそれまでの硬い口調を崩すと外見相応の物になっていた。


そしてヴァルキリーの周囲が光の粒子となりやがて飛散し始めていた。


「えっ……ヴァルキリー!?」

リリィはヴァルキリーに駆け寄り手を取る。


確かに感じる温かさと、徐々に失われていくヴァルキリーの存在にただ驚きと困惑が満ちる。


「リリィ……君の肉体は……ベルが必死に治そうとしているけど、やっぱり限界なんだ。


───だから、私が貴女の痛みを、傷を肩代わりするね。」


ヴァルキリーはそう言うとリリィの手を優しく握り返す。


「貴女のありがとう……本当に嬉しかったよ……ありがとうリリィ


頑張ってね。後輩。」



ヴァルキリーはそう言うとリリィの腕の中で光となって消えてしまった。




───




リリィが重い瞼をゆっくりと持ち上げると、

そこには涙と鼻水でぐちゃぐちゃのアリアの顔があった。


アリアの背後にはローレンツとナギサが、

更に後ろにはハカセとリーナが見える。


「あれ……私……」

リリィはベッドから上半身を起き上がらせる。


すると周囲に居た皆が驚愕の声を上げる。


「ばっ!?リリィ!起き上がるな!!」

アリアがワタワタとしている様にリリィは思わず首を傾げる。


「リリィ……身体を動かせるのですか……?」

リーナもまた驚きのあまり車椅子で前のめりになっている。


「えっ……はい……」

リリィは未だ状況が読み込めないでいた。

皆が何を驚いているのか、リリィは理解出来ないでいた。


その時、自身の握っているデバイスが目にはいる。


魔力結晶の装着されたデバイス……

それはメガミドライヴでありメカニカルワルキューレの心臓に等しい。



───リリィの魔力結晶はその輝きを失い、細かなヒビが刻まれていた


それを目にした時、リリィの目から涙が溢れてきた。


「え……私、なんで……」


無意識に溢れ出る涙の理由は分からなかった。


───けれど……



「ありがとう……ありがとう……!」



リリィは自分でも何故発しているのか分からない感謝の言葉を零し続けていた。


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