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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第114話 解明


ハカセとリーナはナノマシンをリリィに投与した後、彼女の経過を観察しつつ自身らの持つ情報の交換を行なっていた。


リーナはヴァルハラには来ずアトラスで活動を続けるとの事だった為自身らのシステムを共有しある程度閲覧可能な状態にしたのだ。


「……よかったのですか?ベル博士。」

リーナは貸し出された端末に目を通しつつハカセに問いかける。


「……何のことかしら。」

ハカセはリーナの方を見ずリリィの身体状態の確認を行っていた。


「先ほどあったばかりの私にメカニカルワルキューレの……貴女の研究データを共有する事ですわ。」

リーナの発言にハカセの指が止まる。


「信頼してもらえるのは嬉しく思います。

貴女の許可無しに使用するつもりも、悪用するつもりも毛頭ありません。


しかし───」

リーナの発言はご尤もだった。


ハカセの持つ技術は現行の技術水準を凌駕するものばかり、そのどれもが漏洩すれば世界のパワーバランスが崩壊しかねないものだ。


「……もう、メガミドライヴの技術がダルクに盗まれた時点で詰んでいたのよ。」

ハカセは視線を落とし手元を見つめる。


親友と共に戦争を無くすため開発したメガミドライヴ……


しかし蓋を開けてみれば、そのメガミドライヴによって親友を亡くし、盗まれた技術でプロメテウスやティターニアといったテロ組織はネガ・メガミドライヴという最悪の兵器を量産し続け、今もなお破壊を続けている。


「私がメガミドライヴなんて作らなければ、貴女のお孫さんだって……!」


ハカセが吐き出すように漏らした時だった。


「ベル博士。」

リーナの鋭く、しかし穏やかな声に博士の言葉は遮られる。


「……ダイナマイトの話しはご存知かしら」


「ダイナマイト……?」

ダイナマイト……確か……何十世紀か前に開発された火薬の事だっただろうか……一度文明が途切れている為、詳しくは知らなかった。


その話がなんになるというのか、ハカセはそこでようやくリーナの方を向く。


リーナはやっと視線を合わせてくれたハカセに優しく微笑む。

「遥か昔……今では閲覧出来る資料もあまり有りませんが……


───ある一人の博士がトンネル工事などをより安全に、安定して行えるようにと作られたのがダイナマイトだったそうですわ。」

リーナの居た場所には今では珍しい紙の資料が保管されていたらしく、無くなった過去の記録が閲覧できたそうだった。


「しかし───彼の造ったダイナマイトがもっとも奪ったのは……人の命だった。」

そこまでいってリーナは目を瞑る。


「……ダイナマイトが道を切り開く道具にも、命を奪う爆弾にもなるように、貴女の開発したメガミドライヴもまた、使う者の意志次第……ですわ。」


そこまで言ってリーナは端末の情報を見て思わず笑みを浮かべる。


「だって……私が開発した"ラクシャシーとアスラ"を、貴女は孤児院の先生にしたのでしょう。


ふふっまさかあの破壊兵器にそんな役を与えるだなんて……」



リーナの発言にハカセは思わず目を丸くする。

ラクシャシーとアスラ……ダルクが開発した対メカニカルワルキューレ用決戦兵器……それがハカセの認識だった。


「貴女が……開発した……?」


「えぇ……ダルクが私の延命を行ったのは技術協力をさせる為でしたから。


───彼女達のあの"悪趣味な外装"のデザインはダルクの発案でしたが。



もっとも、アトラスに救出された際に彼女達の開発データだけは全て削除してやりましたわ」

そう言ってリーナは笑った。


リーナの発言に、何故あれ以降ラクシャシーとアスラの様な強力な機体が現れないのかが分かった。


───彼らだけでは作れないのだ。


リーナの技術力の高さをそこでようやく理解できた。


「……私が造った人々の命を奪うための破壊兵器を、貴女は未来を切り開く為に活かしてくれた。……ありがとうございますわ。ベル博士。」


その言葉を受けハカセもまた、笑みを浮かべる。


「……あら、可愛らしい笑顔を浮かべますのね」


ハカセはリーナのその言葉に顔を隠す。


「……そ、そんな事よりアヴェリーナ女史。あの二人の開発者だと言うのなら、一つ聞きたい事があるわ。」


「リーナで結構ですわ。ベル博士。」


「リーナ博士……ラクシャシーとアスラ……あの時代に開発した物にしては出力が高すぎた。

貴女はどんなアプローチであれらを開発したのかしら?」


ラクシャシーとアスラのメガミドライヴはプロテクトが強固で未だにハカセにも突破出来ていなかった。


ダルクに完敗した気がして癪だったが、開発者がリーナだと言うのならそれも頷けた。


ハカセのその問いにリーナはハカセの現在使用しているメガミドライヴのデータに目を通す。


ハカセの開発したメガミドライヴのエネルギー源としての完成度はもはや異次元であり

ミクロ単位で調整されたそれはもはや芸術的ですらあった。


改めてとてつもない技術力だと舌を巻く。


───しかし



「……なるほど、そう言うことでしたのね。」

リーナは何か合点がいったのだろう言葉を零す。



「何が分かったと言うのかしら。……リーナ博士。」




「───リリィの魔力結晶との適合率低下の原因……ですわ。」



リーナの言葉にハカセは思わず立ち上がっていた。


「それはいったい……」

ハカセは聞かずにはいられない。




「原因は……貴女ですわ、ベル博士」



───ハカセは言葉を失った。



部屋には、リリィの心電図の音だけが鳴り響いていた。

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