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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第112話 夢


ローレンツはロゼッタから聞いたリリィの容態を受け、無意識に足がヴァルハラに向かっていた。


ロゼッタの推測ではリリィが瀕死になってしまったのは高速戦闘を想定されていないパワードスーツで音速を超えた衝撃波で身体がボロボロになってしまったのだろうという事だった。


アトラスのパワードスーツだってネガ・メガミドライヴ搭載型だ。


装着者の命を守る為の機構は備わっている。


だが、先ほどの様な、加速を重ねて巨大兵器を一撃で葬る様な強い衝撃には意味を成さないだろう。


───もっとも、パワードスーツを装着していなければリリィの身体はバラバラに砕けていた事は想像に難しくない。



しかし───ローレンツは思ってしまった。


───あの時、自分がリリィにパワードスーツを託さなければ……


瓦礫を退けようとしたリリィの肩を掴み、

ハカセ達と共にヴァルハラに退避させていればおそらく彼女は怪我を負うことも無かったのではないか……と。



───



ローレンツがヴァルハラに着くと入り口は開かれていた。


おそらくリリィの手当てでそれどころでは無いのだろう。


ローレンツは外部組織の母艦に無断で入る事に一瞬躊躇するも、自分のせいで今まさに生死の境にいるリリィの事を思い、そのまま突入していった。



───自分が行った所で何かが出来る訳じゃない。



けれど、どうしてもリリィに会いたかったのだ。


これがリリィへの贖罪の為か、或いは赦しを請いたかったのか、足を進めるローレンツ本人にも分からなかった。



───



ローレンツがしばらくヴァルハラ内部を進んだ時だった。


二人のワルキューレが見えた。



一人は見たことの無い、茶髪のワルキューレ。


そして……もう一人は、リリィと共に空を駆けていた金髪で赤いスーツのワルキューレ……



ローレンツの存在に気が付いた茶髪のワルキューレ……ナギサは泣き崩れるアリアを背に臨戦態勢を取る。


「貴様っ……!!誰の許しを得てヴァルハラに入った!!」


ナギサは二振りのサムライソードを瞬時に取り出すとローレンツに向ける。



ローレンツ自身、こうなる事は分かっていた。


故に両手を上げ、自身が丸腰で有ること示した。

「……俺はローレンツ・シュタイナー……アトラスの隊員です。彼女……リリィに面会を……」


ローレンツが自身の名を名乗った時だった。


泣き崩れていたワルキューレ、アリアは鋭い眼光をローレンツに向けナギサを押し退けるとローレンツに肉薄した。


「……てめぇがローレンツか!!

お前が……お前がリリィにパワードスーツなんか渡さなきゃ!!

……お前達アトラスとなんか関わらなきゃリリィは!!」


今までナギサすら見たことの無いアリアの金切り声にナギサも思わず反応が遅れるが、

アリアが自身のメカニカルワルキューレの武装ロックを解除したのを見て、ナギサは咄嗟にアリアを抑える。


「落ち着けっ……アリアっ!!」

ナギサの声すら届いていないのだろう。アリアは真っ直ぐローレンツを睨み続け、暴れる。


「離しやがれっ!!コイツのせいで……!!コイツのせいでアタシの大切なリリィがっ!!離せ……離してよ!!」

アリアは全力で叫んだ後、再び泣き崩れる。

そんなアリアの背中をナギサは苦しげな表情で撫でる。


「……あんたが悪くないのは……ちゃんと分かってるよ……でも、でもさ、リリィは、リリィだけは……ダメなんだよ……」

アリアは両手のクローを床に落とすと、空いた両手で顔を覆い止まらない涙を必死に拭い続ける。


ナギサは再び泣き崩れたアリアを介抱しながら自身の名を名乗ったローレンツへ名乗り返す。

「……私はナギサ・ムラクモ。見ての通り、私もメカニカルワルキューレだ。そしてコイツはアリア……リリィのバディだ。」


その言葉を受け、ローレンツは思わず顔を背ける。


きっとアリアという少女にとって、リリィは部隊が同じというだけの存在では無く、まさに言葉の通り、二人で一人のバディなのだろう。


「お、俺は……その……」

ローレンツもここに来るまで言葉を考えていた訳では無い。


だからこそ何を言うべきなのか言葉が出てこなかった。


言葉だけの謝罪は意味を成さない。


ローレンツ自身に責任はあるが、罪が無いのはアリアという少女も理解している。


そんな存在の謝罪など、受け取る価値も無いだろう。


ローレンツが言葉を詰まらせ俯いた時、プシューっという音と共にローレンツのパワードスーツからネガ・メガミドライヴ……ロゼッタが飛び出してきた。


『あ、あのー、うちの兄が本当ーにすみません!』


突然の喋るネガ・メガミドライヴの登場に、これまで様々な感情で満ちていたアリアとナギサは、共に目を見開き口をあんぐりと開けた。


『あ、挨拶が遅れました!私はロゼッタ!この唐変木の……妹……デス!』


そういうとロゼッタは備え付けられた手足で謎のポーズを取ってみせた。




三人……いや、四人の間に静寂が訪れた。




───




リリィは一人、真っ暗な暗闇の中に居た。


痛みや苦しみは特に無かった。


ただ、前も後ろも上も下も分からない空間でただ一人目を覚ました。



「あれ……私は……確か皆と巨大兵器と戦って……それで……」



そこまで思い出すも、そこから先が思い出せない。


ひとまず足を動かしてみる。すると確かに歩いている感触はあるので、しばらく歩いてみる事にした。



───何分間、いや何時間か彷徨っただろうか、暗闇だと言うのに、視界の中央にハッキリと人影が見える。


近づくとその人影は何処か……いや、よく見る人物に似ている。


「貴女は……私……?」


リリィが声をかけた相手はゆっくりとリリィに視線を向ける。



「はじめまして……いいえ、やっと話せましたね……リリィ。」


自分によく似た……けれど瞳はリリィの緑とは違う、黄色の瞳の少女は真っ直ぐリリィを見据える。




「───我が名はヴァルキリー……貴女達が魔力結晶とも、メガミとも呼びし者……」




リリィによく似た少女は自身をヴァルキリーと名乗った。


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