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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
111/128

第111話 危機的状況


空でワルキューレ達が何やら騒いでいるのをローレンツは下から見ていた。


凄まじい性能を持つメカニカルワルキューレ達……


そして、ワルキューレとして戦えずとも巨大な敵を貫いてみせたリリィ……


「凄いもんだな……ワルキューレってのは」

ローレンツが思わず表情を綻ばせた時だった。


『何呑気に言ってんですかお兄ちゃん!?リリィさん……』

ローレンツは突然背中で声を発したロゼッタに思わず振り返る



『死にかけてますよ!?』



背中の妹から発せられた言葉にローレンツは空を見上げる。


ロゼッタはネガ・メガミドライヴシステムとしてアトラスのパワードスーツ達とリンク出来る。


故にリリィの身体状態が分かったのだ。


ローレンツの目にはアリアに抱えられ手足がふらふらと垂れたリリィが映った。




───




「アリア……手を貸すぞ!今はとにかくリリィを医務室に!」

アリアがヴァルハラに戻るとナギサが手を貸してくれる。


先ほどの通信はヴァルハラ全体に共有され、リリィが危険な状態だと言うことは既に戦場に居なかった者にも伝わっていたのだろう。


「あぁ……助かる!

リリィ……大丈夫だから!大丈夫だからなリリィっ!!」



言葉とは裏腹に、アリアは今まで見せたことのない、不安や焦りに満ちた表情を浮かべ、リリィを抱きしめる手を震わせながら医務室に向かった。



医務室の前では既にハカセともう1人の、車椅子の見知らぬ少女が待ち構えていた。


しかし今のアリアにはその少女がどこの誰かなど、どうでもよかった。


「た、頼むハカセっ……リリィの呼吸がどんどん弱くなってて……!このままじゃリリィ死んじゃうよ!!」

アリアはリリィを医務室のベッドに寝かせるとハカセに縋り付いた。


そんなアリアの背中をハカセは優しく撫でる。

「当たり前でしょう。私を誰だと思っているの。リリィを死なせるなんて、この私がさせないわよ。

……ナギサ、アリアをお願い。」


ハカセはアリアをナギサに託すと目の前のリリィに向き直る。


医務室の扉は閉じ、ハカセとリリィ、そしてアトラスのリーナの三人だけになった。


「ベル博士……彼女……リリィは」

リーナはリリィの状況を理解していた。このままではリリィは三日と保たないだろう。


「えぇ……分かっています。分かって……います。」

ハカセは力なく返事をする。


リーナはそんなハカセを見て悲しげな表情を浮かべつつ慣れた手付きでパワードスーツを解除する。


これまでもアトラスの兵士達の手足はリーナが担っていたし、パワードスーツそのものを整備したのも彼女だったから。



しかし───解除したリリィの身体を見てハカセとリーナは絶句した。


リリィの身体は辛うじて人の形を保っている様な、そんな有様だったのだ。


皮膚こそ繋がっているが内側が裂けているのか、赤い亀裂の様な跡が身体中を駆け巡っている。


───バイタルも下がって来ている。


「アヴェリーナ女史、貴女の手を借りても!?」

ハカセはリーナのほうを振り返る。


ハカセの言葉を受けリーナはそっと目を閉じる。

「……何を仰ると思えば……足こそお貸し出来ませんが、私のこの手は、最初から貴女達に全力でお貸しするつもりでしてよ?」


リーナは優しげな表情を浮かべ、右手を差し出した。


その差し出された右手を、ハカセは後遺症の残る右手で握り返す。


リーナはハカセの右手に恐怖とは異なる震えを感じ取り、左手で包んだ。



「大丈夫ですわ。私達で救いましょう。リリィを」



リーナのその言葉にハカセは瞳の鋭さを取り戻した。




───二人の天才が、リリィの命を繋ぐ為、力を合わせた瞬間だった。

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