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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第一章 プロメテウス編
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第11話 脅威


モニター越しに見える黒い機体。

ハカセは狼狽していた

──どこで技術が漏れた?

──1から開発したのか?

──そもそも……どうやって無人機に魔力結晶を適合させた?


黒い機体は大型だがお腹は恐ろしいほど括れており人間の入るスペースが無いのだ。


無線から聞こえるのは、ハカセの取り乱した荒い呼吸音と

新型が発するキィィィィン…と金属を削るような駆動音

まるで肺の奥まで突き刺さる様な不快な感覚を覚える。


私達は突如現れたそれにただ困惑していた。


メカニカルワルキューレには網膜に敵機をスキャニングし、そのデータを投影する機能がある。


でも今表示されているそれには「プロメテウスの機体である」と言う事と


──対象は「人間」だ、と表示されていた。


「……人間? ふざけんな、あんな化け物のどこがだよ!」

認めたくないアリアは、恐怖を打ち消すように自身の武器にかける力を強める。

けれど、その指はかつてないほど重い。


「……待って。あの中にある『人間』の反応……もしかして、行方不明になっていた適合者の少女……?」

ディアナさんが発したその言葉にラボを含めた全ての人が凍りつく。


あの細身に人が……?


私が思考を放棄しかけている時、その機体は、怒号も雄叫びも上げなかった。


ただ、必要な動きだけを切り取るように、 音もなくアリアへ迫った。アリアは身構える隙も無く吹き飛ばされた。

「ガハ…ッ!!」

アリアはそのまま地面に激突し苦悶の表情を浮かべている。


「アリアっ!」

ディアナさんは敵にビームを放つが相手は放たれたそれらを全て回避し、ディアナさんの懐に潜り込むとそのままお腹を蹴りディアナさんは瓦礫に墜落した。


私は歯を鳴らせて震え、目の前のそれが2人を蹂躙する様を見ている事しか出来なかった。


『リリィ! ぼーっとしないで、一時退却!

キュベレ! アリアとディアナを回収して、今すぐ……!』

普段の冷静沈着なハカセからは想像出来ない叫びに私は更に動けなくなる。


その時敵は私に接近するとそのまま私の首を掴んだ。

「っぁ…!!」

ギリギリと機械の指が私の首にめり込んでくる。


私は武器をかなぐり捨て敵の指を必死に引き剥がそうともがくもびくともしない。

蹴っても微動だにせず私を『殺そうと』して来る


私は苦痛と恐怖で泣き出してしまった。

「イヤだっ……たずけでっ…とうさっ……があざっ………」


私の意識は薄れていき腕から力が抜け落ちていく。




「リリィ!!」 




その時戦場では聞かないと思っていた少女の声が聞こえた。


私の首を捕らえていた敵の腕が飛来した何かに切断された。


私はそのまま自由落下しかけるも現れた少女に抱き抱えられる。


「メガイラ…ちゃん?」


私を抱き抱えた少女はメカニカルワルキューレを装着したメガイラちゃんだった。


『メガイラですって……? なぜ、貴女がそこに……貴女の力では……!』


通信越しにメガイラの姿を確認したハカセは驚く。

確かにメガイラは魔力結晶と適合している。


しかし彼女のメガミドライヴの稼働率はとても実戦に耐えられる物では無いはずだ。


それをメガイラ自身が一番理解しているはずなのに。


メガイラのスーツから、過負荷を示す警告音(アラート)が鳴り響く。


それはメガミドライヴの稼働率がメカニカルワルキューレを稼働させるエネルギー量ギリギリだと告げる警告だった。


「やはり……"奇跡"は起こりませんか」


「奇跡は起こらない」 それは、彼女がずっと信じてきた計算式だった。


けれど――それでも、誰かが傷つく未来を受け入れられなかった。


リリィを地面に下ろしながらメガイラは零す。

そして空中のそれを目視する。


「メカニカルワルキューレ04メガイラ。

これより敵機体の殲滅を開始します」


そうメガイラが告げると、彼女の周りを先ほど敵の腕を切り裂いた飛来物、4つの菱形が漂い出す。


それは特殊な出自のメガイラのみが操作可能な遠隔武器だった。


メガイラはあのハカセのいわばクローン。


彼女の頭脳はそのままメガイラに引き継がれていた。


4つの菱形が複雑な軌道を描き、新型の装甲を少しずつ焼き切っていく。


けれど、それと引き換えにメガイラの鼻から一筋の血が流れる。


「(計算は完璧……。あとは、私の体が保てば……)」

通信機を握るハカセの手が震える。


「やめなさい、メガイラ……。脳が焼き切れるわ。私のクローンなら、そんな非効率な真似は……!」


「ハカセ……今最も非効率なのは全てのメカニカルワルキューレをここで失う事です。」


メガイラからの返答に息が詰まる


──その通りだ。


今ここで重要なのは全てのワルキューレを失わない事、今までの蓄積が全て水の泡になるのを避ける事。


それが最適解。


メガイラの視界が二重にぶれる。


思わず片膝を着いてしまった。


4基同時に操作するのは訓練ですらした事が無かった。


これから先自身に何が起こるかメガイラが一番理解して居た。


脳が焼き切れて自己が消滅する。


メガイラの遠隔兵器が一つ、また一つと輝きを失い、地面に落ちていく。


メガイラに隙が生じ、敵がメガイラにトドメを刺そうと動く。


──しかし、メガイラに接触するよりも先に……敵の攻撃はメガイラの目の前に割って入ったリリィに直撃した。


話を聞いてくれたリリィ。


オムライスの美味しさを教えてくれたリリィ。


私の頑張りを褒めてくれたリリィ。


──視界がスローモーションになる。

さっきまでの頭の痛みがなくなっていく。


リリィが出来損ない(メガイラ)を庇った光景をその瞳に宿した時。


彼女のメガミドライヴは臨界を超えた。


「っ……!はぁぁあ!!」


メガミドライヴが膨大なエネルギーを持って脳の負担を肩代わりし始める。


落ちていた4基の菱形が、意志を持つかのように再起動し、新型を「効率」ではなく「敵意」を持って貫いていく。


あまりの猛攻に敵機体はそのまま粉々になった。



戦いが終わり、吹き飛ばされたリリィに駆け寄るメガイラ。


「リ、リリィっ」

本来なら私が傷付きリリィが生き残る。


そういう計算だった……

ダメージが無いはずの胸が痛む。


「メガイラ…ちゃん、怪我はない?」


リリィのそれを聞いた時、私は初めて涙が生理現象以外で流れるのを知った。

挿絵(By みてみん)


メガイラ覚醒…でも今まで無敵だった彼女達の安心感は消失しました

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