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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
105/127

第105話 役割


「ど、どうして……なんで!?」


自身の握るデバイスを何度も普段の動作で起動させる。しかし何度起動させても、メガミドライヴ稼働まで必要な魔力結晶適合率まで届かない。


「リリィ……落ち着きなさい!」

ハカセは目の前で項垂れるリリィの肩を掴む。

「……理由は分からないけど、いきなり稼働率が下がったのには何か理由がある筈よ!まずは原因を突き止めて……」


機材トラブルか、魔力結晶の異常か。

とにかく検証しなければ正確な事は分からない。


ハカセがリリィを落ち着かせようとした時だった。


アトラスの医務室に衝撃が走る。


同時にガラスが砕け散った。



砕けた窓枠からローレンツが空を見上げると巨大兵器は直ぐそこまで迫っていた。


そこにローレンツへダルケンから通信が入る。

『ローレンツ、そっちにメカニカルワルキューレのトップとリーナ博士は居るな?

お前は彼女達をヴァルキリーの嬢ちゃんと共に護衛しろ。

こっちはソーマ・ウェイスター国連事務総長を安全な場所まで退避させる』


ダルケンの指示を受けローレンツはヴァルキリー……リリィをチラリと見つめる。

今も狼狽する彼女を見てこの場での共闘は不可能だと理解していた。


「……ダルケン隊長、こちらローレンツ。

ベル博士及びアヴェリーナ博士の護衛、承知しました。」


そう言ってローレンツは自身のパワードスーツのバイザーを閉じ、カメラアイが光る。

「これより"三人"を安全な所へ退避させます。」


ローレンツの言葉にダルケンは少し首を傾げるも彼の復唱した内容を承認した。


「……御三方を安全な場所まで護衛します!」

ローレンツはアサルトライフルを構え医務室のドアを蹴破る。

金属の蝶番が悲鳴を上げた。


「ま、待ってください!私も戦いますっ……だから!」

リリィは項垂れつつローレンツに叫ぶ。


「……今の君に何が出来る!?メカニカルワルキューレになれない君に!」

ローレンツの返した言葉にリリィは言葉を詰まらせる。


「……なら、私達をヴァルハラ……メカニカルワルキューレの母艦へ。


ローレンツ君、護衛を頼めるかしら?」

ハカセはリリィの肩を抱きながらローレンツへ問いかける。


「了解しました。これよりヴァルハラに三人を移動させます。……リリィ、君はアヴェリーナ博士の車椅子を頼む。先陣は俺が。」


それを聞いたリリィは思わず歯を食いしばるが、

今の力の無い自分に出来る事は、これしかないのだと理解していた。


「リリィ……お願いしますわね」

リーナ博士の言葉にリリィは眉を顰めつつも弱々しく笑顔で頷いてみせた。



四人が外に飛び出すと、地上からはアトラスのパワードスーツ達がミサイルを撃ち落とし、

空ではメカニカルワルキューレ達がそのミサイルを放った巨大兵器に目まぐるしいビームを放っているのが見えた。


「アリア……皆……ちゃんと戦ってるのに……」

リリィが小さく零した言葉をリーナ博士は聞き逃さなかった。


「……貴女だって、けして戦っていない訳ではないはずですわ。機械トラブルで戦場に出れない兵士なんて何処にでも居ます。貴女はそれを飲み込み、今こうして足手まといの私を運んでいる。」


「足手まといだなんてそんな…!」

リリィの言葉にリーナは笑顔を浮かべる。


その笑顔を見てリリィはハッとする。


「……ね?」

リーナは首を傾げつつ可愛らしい笑顔を見せた。




───しかしその時であった。


リリィ達から少し離れた場所で戦っていたアトラスのパワードスーツの直ぐ近くにミサイルが着弾。


爆炎と共に瓦礫が崩壊し、何人かのアトラス兵士が生き埋めになってしまったのが見えた。




リリィは、世界の誰かを救う為に戦ってきた。



それは、自身に力があったからではなかった。


誰かの見せる笑顔が大好きだったから。



───だからリリィは、ハカセにリーナ博士を託すと



───瓦礫に向かって走っていた。

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