俺はホットケーキを積むために呼ばれた
急に呼ばれたから何事かと思った。
「え? 何これ、どんな状況?」
「あ! 待ってた待ってた。見ればわかるでしょ。ホットケーキ作ってるの」
いや、それは見ればわかるけども。
テーブルの上には散らかったボウルと泡立て器。
呼び出した張本人はコンロの前でフライパンと格闘している。
「見て、まあるくできるの」
作り慣れたのかフライパンの上には確かに綺麗な円が作られていた。
「ほんとだ。ま、こんだけ作ればな」
すぐそばの大きな皿には大量のホットケーキだ。
「どうすんだよ、これ」
決まってるじゃない、と渾身のドヤ顔を見せてくる彼女は、ほんとに可愛い。
「積むの」
「ほう、積む」
チラリと見渡して納得した。
床に広げられた絵本にはウサギのキャラクターとその身長くらいのホットケーキタワーが描かれている。
「もしかして、これを?」
「うん。いいでしょ、可愛いし」
可愛いかはさておき、まあ夢のあることではあるような。ないような。
「私がホットケーキ焼いてるから、頑張って積んで」
「まさかの積み要員」
仕方ない。そのために呼ばれたというなら、頑張るしかない。
俺としては、こんな時間も楽しいし。
「ちょっとちょっと、傾いてるじゃん」
「いや難しいんだってこれ」
「何のために呼んだと思ってんの!」
何だよ、この絵本のウサギはどうやって積んだんだよ。
手厳しい指摘を受けながら、大量のホットケーキを積み上げていく。
形の悪いものは下の方に、良いものは上の方に重ねて、見栄え良く。
慎重に積み重ねれば、いつの間にか——まあ多少歪んでいるし、絵本と比べると全然高さも足りていないけれども——立派なタワーが出来上がった。
「きゃあ、可愛い!」
最後に蜂蜜をとろんとかけて、バターをのせれば、彼女は嬉しそうに手を叩いた。
「そりゃよかった」
「写真撮らなきゃ、並んで並んで」
そうしてタワー横に追いやられ、スマホを向けられながら、女の子は写真撮るの好きだよなあ、なんて思っていたら、だ。
画面から顔を上げた満面の笑みにやられてしまった。
「お誕生日おめでとう、お兄ちゃん」
一回り歳の離れた妹は、そう言って、幼稚園で作ってきた折り紙の王冠をくれたのだ。
初めて一緒に作った、お手製のケーキとともに。
バレバレでしたかね。
ツンデレ妹でした!
一人コンロは危ないので両親もおんなじ部屋にいます。仲良しな兄妹眺めてにやにやしてます、こっそり。




