第1話 友人の恐怖体験 前編
夏と言えばホラーでしょうが。
福岡にある有名な心霊スポットで、〇鳴トンネルという場所がある。
場所は伏せておくが、あまりに有名な所なので聞いた事もある人も居るかもしれない。現在はそのトンネルに続く峠の入り口からすでにバリケードで厳重に封鎖されて、その頂にある旧〇鳴トンネルは完全に封鎖されて居る。
これは私が学生の頃にガソリンスタンドでバイトをしていた時の同僚の体験談である。その同僚とは車の事や当時峠をドリフトして走る、走り屋をしていたこともあってかなり気があう友人となっていた。
その友人と、ある時ブラックバスを早朝釣りに行こうという事になって、その友人の運転で行く途中に、車がトンネルに入ろうとした時の事である。
とっさにその友人が車のバックミラーを明後日の方向にくるっと向きを変えたのである。
「何それ、見えんくなるなるやん?」
「あ、俺言ってなかったけ?実は幽霊をみたことがあってさ・・・」
それ以来トンネルに入る時に車のバックミラーを後ろが映らないように明後日の方向に向けるのだとか・・・・
そうして友人はその当時の事を語り始めた。
それは、まだその友人が私の居るスタンドに入ってくる前の出来事で、ある夏の夜に三人で犬鳴トンネルにいつもの様に肝試しに行った時の事だった。
分かりやすくするためにその当の友人をHとし、連れの友人二人をAとBにしよう。
目当ての旧犬鳴トンネルに行くには新犬鳴トンネルの入り口の脇にある峠の上り路の方に入らなければ行けない。
先にも書いたが当時はまだバリケードも無く、その峠の上り路にも普通に車で入れた。但し、車の通行は肝試しに行く人くらいしか通行しないためか道路の脇の草木がかなり茂っており、車一台がやっと通れるくらいの道路で、それがさらに不気味さを醸し出していた。
Hの運転で、いつもの様にとうとう旧犬鳴トンネルの入り口までやってきたという。
助手席に友人Bが乗り後部座席にAが一人で乗っていたという。
旧犬鳴トンネルの内部は、現在の綺麗に整備されて照明も設置されてあるようなトンネルでは無く、照明も無ければ、天井もまるで人が掘った穴をコンクリで塗り固めたような凸凹した様なトンネルで水滴がよく滴り落ちてるような本当に気味悪いトンネルであった。
夏の夜なんかは他の肝試しの連中と鉢合わせになることも少なからずあった。
H達もここに来るのが何度目か分からなくなる程の、その日も怖さは左程なく、今日もどうせ何もないんだろうなぁっと思いながらも運転していた。
そしてその旧トンネルの中腹に差し掛かった時、フロントガラスに大きな水滴が落ちてきてバックミラーが目に入った時だった。
Hが助手席のBを肘で小突きながら言った。
「__なんか後ろに掴まってるやつ居るけど?・・・・」
Hは最初バックミラーに人影が掴まってるように見えた時に、他の肝試しで来た人が脅かそうと車の上部にあるリアスポイラーを両手で掴んでいると思ったらしい。
そのHの車がワークスという軽で、後ろは絶壁で後部座席に乗ってる人は振り向いたらすぐ窓だった。
そのHの発生で一斉にAとBが後ろを振り向くと青白く発光してるかのように女の人がリアスポイラーをしっかり掴んで掴まっていたという。
後部座席のAは振り向いた瞬間まじかで、その光景を見ることになったという。
しかも三人が振り向いた瞬間、その女の額際から二つに分かれた黒髪からドロッと血が流れ落ちてきたという。
「「ぎゃああああああゆうれいぃいいいいい」」
それで、Hも幽霊と認識した瞬間恐怖で体が硬直したという。
「はよ!はよ!前にいけってえええええええ」
「わかっとうけど、足があしが・・・」
膝ががくがくとなり頭は真っ白でクラッチがうまくつなげずグイングインと車は前後に激しく揺れて、またトンネル内部の道は舗装されておらずかなり凸凹でそれも相成ってなかなかうまく進めずにいたという、それでも嫌でも視界に入るバックミラーに移る女性の顔がだんだん怒りを帯びた表情にも見えてきて余計に恐怖を描き立たせてきたという
後部座席のAはHの運転のせいで、その女の幽霊と顔を近づけたり遠ざかったりする事になり表現できない様な叫び声を上げ半狂乱になっていたという。
がくがくなる足を無理に動かし、クラッチをつなぎアクセルべた踏みでスキール音上げながらどうにか急加速でその場を離れようとしたらしい。
そしてようやくそのトンネルを抜けるあたりでその女の幽霊はふわっと後方に消えていったらしい。
旧トンネルに続く峠道には一応ガードレールがあるが、やたらにぶつかった痕があり綺麗な部分の方が少ないくらいだ。私はただ単にもう整備も何もされてないからだろうと思っていたが、Hいわく、多分あれは幽霊見て事故でぶつけているんだろうという。
Hも峠を下る間に何度も足がガクガクなせいでぶつけそうになったという。
峠道は慣れてたこともあり、どうにか落ち着かせながら麓までたどり着き落ち着ける広さのある自販機の或る所でいったん車を停めた。
「「__びびったー・・・・」」
HとBは顔を見合わせ何か飲み物を買おうと自販機に車を降りて向かったらしい。
なかなか降りてこないAを不思議に思ったHが車に戻り中を覗き込むと後部座席で横になり泡を吹いていたという。
「おい大丈夫や!、ちょおーいAが泡吹きよる!!」
どうしていいかわからないHはとりあえずBを車に呼び戻しAに声をかけながらゆすり続けたという。Aとは私も面識があったが、当時はリーゼントでかなりツッパった感じだったのを覚えていたのでその話を聞いたときは、正直驚いた。
Aは恐怖と驚きで意識を失ってたようだ。それもそうだろうなんだって最前線で幽霊と対面しているので、その恐怖は計り知れないものがあったのかもしれない。
Aも二人の呼びかけにようやく意識を取り戻し、気分が悪いというのでとりあえず外で水を飲ませて落ち付こうと休んでいた。
三人は少し余裕を取り戻し、笑顔を見せるようになるまで回復したが、恐ろしいのはこの後だったと言う。
心臓の弱い方はここで引き返してください。
嫌だ!続きが気になると言う方は次へお進みください ↓↓