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光の神に愛された精霊使い

前世は恋人*今世は兄妹/仲の良い兄妹

作者: 月杜円香

ある名家の五人兄弟の三番目と四番目の次男次女のお話です。


「愛してるよ、リタ」


「でも、王子様はもうすぐ、ヴィスティンの姫様の所へ婿入りされるのでしょう?」


「あっちは大国だからね、リーフスなんて弱小国は下に見ているんだろう。」


 愛の言葉を囁く、王子は暗緑色の髪を風になびかせて言った。

 この国には珍しい、碧い瞳が印象的だ。


「銀の森との縁戚の多い、この国をですか!?」


 リタは王都の生まれであった。

 母が王妃の侍女だったことから、彼女も早くから王城に出入りを許されていた。

 茶色の髪と、瞳を持った可愛らしい17歳の女の子だ。

 敬謙な、ロイルの神の信者でもある。


「ヴィスティンは、神殿を重視していないからね」


  リーフスの第三王子、エリュシオン王子はフッと溜息をつく。

  王子は十七歳で、来月には大国のヴィスティンの第二王女と婚礼が決まっていた。

  婚礼と言っても、国の規模が違い過ぎる体の良い人質である。


  エリュシオン王子の父王は、国の安泰のために第三王子を、大国に差し出したのだ。


「君と離れては生きて行けないよ」


「でも、王子様……」


 エリュシオン王子は、リタにそっと口づけした。


 リタが王子付きの侍女になったのは、半年前のことだった。。

 年が近いこともあって、王子はリタのことをすぐに気に入った。

 そして、すぐに恋仲になった。

 勿論、隠れて逢引きを重ねていたが、ベテランの侍女にはバレていた。

 どうせ、王子様は大国の姫の婿になるのだからと、たしなめてくれる侍女もいたが、リタは、それまででも構わなかった。


 ある日エリュシオン王子は、あることを思い付いた。


「良いことを、思い付いたよ。君にもヴィスティンについて来て欲しい」


 王子は、明るい声で言った。


「でも……」


 リタは困惑した顔で、エリュシオンを見た。


「君の身分を下げてしまうけど、下女として一緒に来て欲しい」


「王子様……」


 侍女と下女とでは、城勤めでも雲泥の差があった。

 侍女は、王たちに直接触れる機会もあるのに比べて、下女は王族に顔を見せることさえ許されない、城の下働きだ。


 若い侍女を連れて行けば、王子の愛人かと探りを入れられかねないと、リタのヴィスティン行きは初めから論外であった。


 王子の真剣な心に打たれた、リタは首を縦に振った。


 そうして、エリュシオン王子がヴィスティンに旅立つ日。

 早朝にリタは、黙って城を抜け出した。

 一行が、セルオーネの山中で休憩を取っている時に、下女として花婿行列に

 潜り込むためである。


 休憩中に、香草茶を運んで来たのが、リタだったので王子は作戦が上手くいったことを知った。




 ヴィスティン王都、ディナーレ___


 流石に建国は1000年は越えている大国である。

 ディナーレは海に続いた地でもあり、微かに潮の香りもした。


 婚礼は神殿ではなく、王に直接、宣誓させられた。

 その後の床入れの儀式は、王族、貴族の見ている前である。

 19歳と聞かされていたリスティナ王女は、もう少し上の年齢に見えた。

 17歳、童貞のエリュシオン王子を上手くリードして、この場を乗り切ったのである。

 そして、リスティナ王女はうぶな王子を気に入ってしまった。


 でも、エリュシオン王子の心はまだ、リタにあった。

 自分の王族としての責務を、忘れた訳ではない。

 だが、リスティナ王女とどれだけ寝ようとも、心はリタにあった。


 人目を忍んで度々会う、王女の婿と下女の事が噂にならないわけがない。


 リタは捕らえられて、拷問を受けた。


 リスティナ王女にとっては、自分より身分の低い下女なぞに、花婿を奪われたことは屈辱的な事だった。


 不敬罪でリタは絞首刑が決まった。


「待ってくれ!! 王女!! リタは僕が此処へ来させたのだ。彼女に非はない!!

 せめて、リーフスに帰らせてやって欲しい!!僕はあなたとの結婚生活を続けるから……」


「ダメですわ。聞けば、お国にいらした頃からの関係とか!?」


「彼女とは、みだらな事は一度もしていない。それは、婚礼の時にわかったでしょう?」


「あなた、寝言で何度リタとおっしゃってるのかお忘れ!? 初めはわたくしのことかと思いましたわ。でも、まさかリスティナが2人いるとは思いませんでしたわ。」


 リスティナ・ムーアがリタの本当の名前であった。


 そしてリスティナ王女は、野草を名前つけられて、コンプレックスを持っていたのである。


「貴重な薬草ですよ」


 周りなものは皆、そう言って宥めてきた。


 だが、今回どうしても許せなかったのは、下女と同じ名前で、花婿がその女を愛し、助けてくれと嘆願してくることだった。


「いいえ、絞首刑にしたら、そのまま晒して、その後に首を切ってお国の家族のもとに送り付けましょう」


 王子はゾクリとした。

 本気でこの王女はやる気だ。我慢はここまでだと思った。

 次の日が処刑だという日の夜。


 エリュシオン王子は王女に一通り夫の義務を果たすと、眠り薬を飲ませた。

 深い寝息を立てる王女に別れを告げ、部屋を出た。


 地下牢まで、風の力を封じ込めた魔法の珠の力で忍び込み、リタに会いに行った。


 リタは拷問で、傷ついてぐったりしていた。


「リタ!! 大丈夫か!?」


 王子の声でリタは、顔を上げた。

 眠ってはいなかったようだ


「王子様……」


「逃げるぞ!! リタ。出来るな!?」


「でも……」


「もう良いんだ。父上には手紙を書いたし、今日まで王女の夫としての責務は果たした。だから、これからはお前と生きる」


「王子様……嬉しい……」


「城の裏手に馬を繋いでおくように手配した。そこまで、飛べるか!?」


「王子様がお持ちの、風の力があれば……何とか……」


 リーフスはロイルの神殿が力を持っている。

 だからそれに付随する、魔法使いも多くいて、彼らの使う魔法道具は、王子のおもちゃのようになっていた。

 リタも幼い頃から、神殿に通って、魔法使いたちの技を身近に見て来た。

 そして、自分にも魔法が使えることに気付いたのは、王城に上がった頃であった。




 馬で森の中の道を当て所なく走った。

 どの方向に向かっているのかさえ、分からなくなった。


 遠くに松明の灯りが見えた。


 ♦️



「……ってことがあったんだよ。父上」


 息子のアイリュシオンからの突然の告白に、ビックリしたマーティンである。


「それで!? その後はどうなったんだ!?」


「殺されたんだろうね~ 私達、今ここにいるワケだし~」


 マーティンの問いに母親そっくりの口調でセシリーテが言った。


 マーティンとメアリ・タオは、呆然とした。


「でも、最後に聞いた言葉は覚えてるよ~ 二度と離れない、離さないって~ こうも言ったよね、今度会ったらシオンて呼べよって」


 妹のセシリーテの言葉に本気で赤くなる、アイリュシオンである。


 確かに、セシリーテの事をリタと呼び出したのは、アイリュシオンである。

 そして、シオンはマーティンに言った。


「だからね、家を継ぐのは構わないんだよ。でも、リタと一緒に継ぐから。跡取り問題は、ルースティリアによろしく頼むね」


「えっと……」


 マーティンは、開いた口が塞がらない。


 年子で生まれた、仲の良すぎる兄妹に、こんな過去があったなんて、皆さん信じられますか!?




二人は家は継ぐので、妹のルースティリアに後継ぎをヨロシクと頼んでます

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