【プロットタイプ】古今文体齟齬
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
先日書いたもの。人は容易く変わります。
元より本を読むのは好きだった。初めての『大人買い』は気に入った児童書。本棚に収まった時のタイトルを眺めるのが好き。今はご無沙汰してしまったが、今思い返しても懐かしい。
帰宅してから与えられる、極僅かな休息の時間。その時間は大抵、情報収集か、執筆に当てている。今日も例外ではなく、俺は椅子に腰掛けて、只管に文字を打つ。
しかし隣人は珍しく読書に励んでいた。何時も俺と同じ行動をしている分、目が向く。
読んでいるのは文庫本の様だった。青い背表紙が特徴のライトノベルのレーベル。所々痣のような染みがあるところから、長らく人の手に触れられていた事が分かる。
「なぁに? 瑠衣たぁ〜ん? そんな熱い視線を向けてぇ〜」
耳にこびり付く様な猫なで声に苛立ちを抱えながら、俺は持っていたタッチペンを相手に剥ける。
「……その猫撫で声辞めろ。お前が読書なんて珍しい」
何時もは大抵情報収集と思考の飛躍の為にスマホを弄るか、執筆をしているかの何方かだから。
「あぁ、これね。昔売っちゃって、でもまた読みたくなって、ツテを辿ってまた手に入れた」
何でも、俺と同棲する時に部屋の整理をしたそうだ。その時に読んで無かった本を一斉に古本屋に出したらしい。けれどもやはり惜しくなった様で、探して手に入れたそうだった。
気になっていた答えが手に入ったので、また執筆に戻る。
「ただやっぱり違うよね。あの時読んでいた時の感触と、今の感触は。
読まない代わりに書くようになったせいか、文体ばかりが目に付く。柔らかくて甘いから、中高生向け。内容は一般文芸に匹敵する程重たいけれどもね」
文芸とラノベの違いというのは、俺に聞かれても確かな答えは出ない。一般文芸を謳いながらも、ラノベの空気のするものもあるし、その逆も然り。非常に定義付けが難しい。
「こんな感じだったかなぁ…」
鏡花のその一言は、記憶との齟齬に戸惑っていた。
投稿の頻度が増えたのは、その分、退屈だから。
熱しやすく冷めやすいので、またすぐに投稿が減るんだろうな。辞めちゃうんだろうな。
そうしてまた戻るんだろうな。
朝に投稿するのはこれから先も少ないと思います。
ルーティンから外れるの、あんまり好きではないので。
昔好きだったけれども、読まなくなったから、古本屋にお任せした話。
捨てるのはやっぱり嫌だったので。
そうしてまたの読み直したくて、ツテを辿って、手に入れた話。
最初の感想。
『あれ……こんな感じだったっけ?』
なんか、思っていた以上に文体が柔くて甘かった。
綿菓子の様に、ふわっとしてる。
登場人物の動きや心情よりも、一人称小説特有の話し言葉、其れが真っ先に気になった。
『こんなに柔く甘かったっけ』って。
私が三人称よりの一人称小説で書いているんですが、このライトノベルもそうじゃなかったっけ?
って。
記憶の中でも着色が行われているんだって、ぼんやり思いました。