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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く

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3−58:豚鼻の巨漢、オークとの戦い


「「「「ブゴォォォォ!!」」」」


 遂に現れたファンタジーの定番モンスター、オーク。見るからに重量級な体を大きく揺らし、巨大な棍棒を大きく掲げている。まさにパワーファイターと呼んで差し支えの無い、脂肪と筋肉がパンパンに詰まった体付きをしている。

 それが横一列に5体も並び、各々が全力で咆哮を上げている。距離にして30メートルは離れているはずだが、その迫力は相当なものがあった。


「……っ!」


 実際、朱音さんはその圧に僅かに怯んでいた……が、すぐに気を取り直してオークをジッと睨みつける。特殊モンスターと何度か戦った経験があり、第4層のモンスター地獄をも共に乗り越えた朱音さんが、簡単に気圧されるワケがなかったな。

 そして、ヒナタはオークを見ても余裕綽々だ。全力の威嚇を軽々と受け流し、余裕の笑みを浮かべている。現時点の実力で比較しても、オークよりヒナタの方が遥かに格上、ということなのだろう。

 ……俺? 俺は俺で、もっとヤバいの(真紅竜)を見てるからなぁ。今さらこの程度では怯みたくても怯めない。そう考えると、第5層の神殿であの地獄を乗り越えられたのは、何物にも代えがたい良い経験になったな。


「「ブゴォ!!」」

「「「ブゴォッ!!!」」」


 ファンタジー作品におけるオークとは、脳筋で女好きな下賤の輩というのが定番なのだが……少なくとも、現代ダンジョンのオークには当てはまらないらしい。

 朱音さんもヒナタも一切無視して、5体とも俺に狙いを定めて時間差で飛び掛かってくる。軽装ゆえに狙われたのだろうが、打たれ弱そうな相手を見定めて集中攻撃を仕掛けるというのは、オークに確かな知能が備わっている証左とも言える。


「朱音さん、ヒナタ。目を隠して」

「! ええ、いつでも良いわ!」

「きぃっ!」


 俺がしたいことを察してくれたようで、2人とも目を腕や翼でしっかりと隠した。よし、これでいける!


「食らえ、オーク! "フラッシュ"!」

――カッ!!

「「「「ブゴッ!? ブゴォォォォッ!?」」」」


 強烈な閃光の向こう側から、悲鳴にも似たオークの情けない声が聞こえてくる。その直後に全員の足が止まっていることから、どうやらフラッシュは5体とも効いているようだ。




 ……しばらくして光が止んだので、オークの様子を目で確認する。

 オークは5体とも目を覆いながら地面にうずくまっており、完全に足が止まっていた。フラッシュがクリティカルヒットしたせいで、目の痛みに悶えているようだ。

 オーク全員が俺を侮っていたし、俺に視線が集中していたからな。フラッシュが当たる確率は元々高かったが、どうやら想定以上の結果となったようだ。


「「「「ブゥゥゥ……」」」」

「強敵もこうなると形無しだな」

「ええ……本当に」

「きぃ」


 半ば騙し討ちのような形になってしまったが、卑怯と言うなかれ。万が一にも負けてしまえば、血反吐を撒き散らして地面に這いつくばっていたのは、こちらなのだから。


「今の俺たちでは、まともに戦えば間違い無く強敵だからな。悪く思わないでくれよな……"サンダーボルト・スパークウェブ・ファイブ"」

――ヂヂヂヂヂヂヂヂヂ!!


 電撃の網を5個作り出す魔法を唱え、オークに向かって1個ずつ投げ付ける。幸いにもコントロールミスは無く、電撃の網はオークをしっかりと捕らえた。


――バチバチバチバチバチ!!

「「「「ブゴゴゴゴゴゴゴ!?」」」」


 電撃網が各々オークを包み込み、電流でその身を激しく焼く。絶え間無いスパーク音が辺りに響き渡り、オークに少なくないダメージを蓄積させていった。


――バチバチバチバチバチ!!

「「「「ゴゴゴゴググググググ!?」」」」


 ……だが、オークがなかなか倒れてくれない。魔法耐性は低いが体力が並外れて高いらしく、見てるこっちが目を背けたくなるような悲惨な状況となってなお、オークは倒れる気配すらも無い。

 そして、オーク共の血走った目がこちらを向いた。いつの間にか視界不良から回復していたようで、憎悪の籠もった目で俺を睨み付けている。


「「「「……ブゴォォッ!!」」」」

――バヂィン!!


 その直後、なんと電撃の網を力ずくでぶち破ってしまった。タフな相手なのは見た目から分かっていたが、まさかスパークウェブで倒し切れないとは……既に勝ったつもりで気を抜いてしまっていたが、まだ早かったようだ。

 それでも、電撃ダメージの影響か体の至る所に火傷を負っている。動きも心なしかぎこちなく感じるので、麻痺的な状態異常がオーク共に入ったのかもしれない。


「「「「ブゴォォォォッッ!!!」」」」


 オーク共は怒りに目を血走らせ、俺の方を鋭く睨みつけながら雄叫びをあげる。どうやら、オーク共の視界には俺の存在しか映っていないようだ。

 俺の方は、頼もしい仲間の姿がしっかりと映っているというのに。


「"クイックネス"、"プロテクション"」


 自分に向けて付与魔法を使う。


「"サンダーボルト"!」

――バチバチバチッ!


 そうしてから、更に自分へヘイトを集めるため電撃を飛ばす。


――バヂヂヂヂッ!

「ブゴォッ!?」


 1体のオークに電撃が当たり、ダメージを受けたオークは体を震わせながら片膝を付く。どうやらもう限界のようで、俯いたままその場から動かなくなった。


「「「「ブゴオオオオオッッ!!!」」」」

「うおっ!?」


 残ったオーク共の怒りが、頂点に達したようだ。

 未だぎこちない動きながらも、4体が我先にと俺に向けて走り出す。ドスン、ドスン、ドスンと地面が激しく揺れ、大質量の肉壁が俺に向けて迫ってきた。


「【ファイアブレスⅡ】!」

――ゴォォォォォォ!!

「「「「ブゴォォォォ!?」」」」


 ファイアブレスをオークに向けて吐きかけてみるが、ダメージが分散したような攻撃ではオーク共の歩みを止めることができない。これは、甘んじて奴らの攻撃を受けてやるしかないか……。










 ……なんてな。


「"瓦撃・地隆打"!」

――ドゴォッ!


 オーク共の側面から現れた朱音さんが、手に持ったソードスピアを無造作に床へと叩き付ける。技名からして、地属性エンチャントを活用した一撃っぽい。


――ガガガガガッ!!

「「「「ブゴッ!?」」」」

――ドタタッ!


 その結果は劇的だった。オーク共の足下の床が激しく隆起し、凹凸を踏み抜いたオーク4体がバランスを崩して転倒する。重量級の体ゆえ、やはり足元は強くないようだ。


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

「「「「ブッブギィィィィ!?」」」」


 オークは必死に立ち上がろうとするが、追撃とばかりに今度は床が波打ち始めた。これでは、空でも飛ばない限りはまともに動くことさえできないだろう。


「地属性のエンチャントは使い切ったわ! さあ恩田さん、決めちゃって!」

「ああ! ありがとう、朱音さん!」


 尻餅をついてアタフタしているオーク共を尻目に、天に向かって右手のロッドを掲げる。昨日、何か良いヒントは無いかと動画投稿サイトを漁り、そして思い付いた新魔法だ。


「"ジャッジメント"!」

――キュィィィィィ……

――ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッ!


 随分とご立派な名前ではあるものの、その実は天から無数のレーザーを降り注がせる魔法だ。レーザーの1つ1つはルビーレーザーよりも低威力だが、数を増やすことで広範囲の敵に多大なダメージを与えることができる大技となる。

 そして1発あたりの威力が低い性質上、ラッシュビートルやヘルズラビットのような魔法耐性の高いモンスターには通用しないが……スパークウェブを投げ付けた時の様子を見る限り、オークは魔法耐性がかなり低い。あれならジャッジメントも問題無く通るだろう。


「「「「ブギッ!?」」」」


 仰向けに倒れ込むオーク4体を、無数のレーザー光が真上から穿つ。予想通りオークに魔法耐性は無いようで、レーザー光はあっさりとオークの体を貫通した。

 それでも、数発くらいならまだ耐えられただろうが……さすがのオークも20発以上のレーザーに体を貫かれては、耐えることはできなかったらしい。


 1体、また1体とオークが動かなくなっていく。先に倒れた1体を含め、5体全てのオークが完全に沈黙した時……。


――第5陣、クリア


 オーク戦の終了を告げるシステムアナウンスが脳内に響く。同時にオークが光の粒子へと還り、朱音さんの一撃で変形していた床も少しずつ元の形へと戻っていく。


「……少しキツくなってきたな。朱音さんはどう?」

「大丈夫……と言いたいけど、ちょっと疲れてきたわね」

「きぃっ!」


 ゴブリンアーミー・ゴブリンアーチャー戦はともかくとして、ラッシュビートル3体とオーク5体はなかなか厳しい相手だった。

 それでも、魔力はまだ7割くらい残っている。色々と魔法を使ったが、ヒナタや朱音さんのお陰でそこまで消耗はしていない。

 だが、敵が段々と強くなってきているのも確かだ。システムアナウンスも何も言わないし、あと何戦残っているのか分からないのが辛いところだな……。


「……!?」


 闘技場に光が集まり始める。光は次の相手を形取っていくが……これは、まさか。


――第6陣、爬人隊長1体、リザードマン7体


「うげぇ、結構ヤバいのが出てきたな」

「爬人隊長? リザードマンって……あ、もしかして!?」

「朱音さんの想像通りだと思う」


 ついに特殊個体が混ざってきたか。しかも、お供にリザードマン7体とは……これは相当厳しい戦いになりそうだな。


 俺にとっては、どちらも遭遇済みのモンスターだ。第5層の神殿で戦っているので、戦い方の勘所は多少なりとも分かっている。

 ……同時に、苦い記憶も脳裏に蘇ってくる。特に爬人隊長改め、ハイリザードマンには倒れ際のファイアブレスで左腕を焼かれた。背後から真紅竜が迫ってきていた状況の中で、強敵を倒した安心感から犯したミスであったが……一歩間違えば命を落とすことにもなりかねない、まさに致命的なミスだった。


 今度は、そうはいかない。


「「「「シャアァァァ!!」」」」


 一筋縄ではいかない相手だ、気を引き締めてかかろう!



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
[良い点] おはようございます。 そろそろキツくなって来ましたなぁ…終わりが見えないというのもプレッシャーですし。
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