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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く

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97/215

3−57:古の戦法、ファランクスを打ち破れ


「「「「ギャッ!!」」」」

「「「「ギャッギャッ!!」」」」


 闘技場の縁にズラリと並ぶ、ゴブリンアーミー15体とゴブリンアーチャー15体。前列にアーミー、後列にアーチャーと並ぶ隊列はとても理に適っており、整然と並び立つその様子はゴブリンながら中々の迫力だった。

 そして、目の前にアーミーが立っているためか、あるいは飛距離を出すためか……アーチャーは山なりに矢を斉射してきた。出現時には既に矢を番えていたらしく、ほぼノータイムで射掛けてくる。


「朱音さん、ヒナタ、そこから動くなよ!

 ……盾、全開!」

――ブォン!

――カンカンカン!


 左腕に付けた盾を上に掲げ、魔力を強く込めていく。盾の真ん中の金属部分から、白い魔力防壁がまるで傘のように大きく広がっていき……降り注ぐ矢15本を弾いた。

 矢は軽い音を立てながら防壁の上を跳ね回り、やがて勢いを失うと防壁上を転がって地面に落ちていく。


 防御さえちゃんとできれば、矢による攻撃はダメージにはならないようだが……プロテクションも無しに生身で矢を受けるのは、さすがに危険極まりないな。当たりどころが悪ければ、そのまま貫通して命を落としかねないくらいの威力はありそうだ。試してみる気は微塵も無いけどな。


 そんな攻撃を、20メートルくらいの距離からそこそこ正確にエイムしてくるのか……ゴブリンアーチャー、たかがゴブリンと侮れない相手だ。


「「「「ギャァァァッ!!!」」」」


 矢を防ぎ切った俺に向けて、アーミー15体が横並びになって突撃してくる。ただし、走る速度に少しバラつきがあり、隊列は前後にやや乱れ気味ではあるが……それでも横一列に並び、見事な槍の壁を形成していた。

 このままだと、俺たちに逃げ場は無い。アーミーの槍壁に隙間はほぼ無く、15体も並べば横からすり抜けるのも時間的に難しい。仮に後ろへ回り込めても、アーチャーが自軍への被害を厭わず水平に矢を撃ち込んできたら危険だ。自ら挟み撃ちされにいく必要は無い。


 ならば、どうするか。


 ……なんのことは無い。先んじてアーミーを全滅させてしまえばいいのさ。


「いくわよ、"飛刃・双波"!」

――ヒュヒュッ!

――ズバッ!

「「ギャッ!?」」

――ガギッ!

「「ギィッ!?」」


 ゴブリンアーミー共のど真ん中に向けて、朱音さんが飛刃を時間差で2発飛ばす。最初に着弾した飛刃の方は、2体のアーミーを革鎧ごと上下真っ二つに断ち切ったが……遅れて到着した飛刃の方は、2体のアーミーの槍に弾かれて明後日の方向へと飛んでいった。

 それでも、ゴブリンアーミーの一角が崩れたことで槍壁に大きな隙間が生まれる。それを埋めるように隊列が組み直されていくが、進行が遅くなるのは避けられない。


 ……そして、その様子を見て気が付いた。


 ゴブリンアーミーの耐久力は、見た目の通り並程度だということに。グレイウルフよりは多少タフそうだが、逆に言えばその程度だということだ。ラッシュビートルには遠く及ばない。


「【ファイアブレスⅡ】!」

――ゴォォォォォォ!!

「「「「ギャァァァッ!?」」」」


 試しにファイアブレスで薙ぎ払ってみると、ゴブリンアーミー共は攻撃を防ぐことができずにあっさりと炎へ飲み込まれていく。

 後方のアーチャーには、ファイアブレスの射程距離不足で残念ながら攻撃が届かなかったようだが……ファイアブレスの凄まじい火勢と、アーミー共の悲鳴がよほど衝撃的だったようで、矢を準備する手が完全に止まっていた。


 そうしてしばらくが経ち、燃え盛る炎がフッと掻き消える。先ほどまでそこに立っていたはずのゴブリンアーミー共は、既に黒焦げた何かへと変貌し地面に転がっていた。


「………」


 ゴブリンアーミーはゴブリンより手強く、また多数で連携をとってきたので厄介な相手なのは間違いない。接近戦用のギフトやスキルしか持たない探索者が戦えば、苦戦は免れなかっただろう。

 本当に、個々の強さがそこそこ止まりでしかなかったのが個人的にすごくありがたかった。いくら複数体での連携が素晴らしくとも、広範囲攻撃で十分なダメージが通ってしまってはほとんど意味が無い。そのような攻撃を跳ね除けられる固い守りがあってこそ、近接武器による集団攻撃は厄介さを増すのだ。


 それもあって、個人的には第3陣のラッシュビートル3体の方がよほど手強かった印象なのだが……ダンジョンの試練的には、どうもこちらの方が難易度が高い判定らしいな。確かに数は多いし、曲がりなりにも遠距離攻撃を持つ集団との戦いでもあるからな……。


「「「「ギャッ!!」」」」

「おっと、盾展開」

――ブォン!

――カンカンカン!!


 フリーズ状態から復帰したゴブリンアーチャー共が、一斉に矢を射掛けてくる。すぐに盾を展開して弾き落としたが、矢は射撃準備に時間がかかるので、時間差射ちをされない限りは多少の空白時間が生まれる。

 これでアーミーが健在だったなら、アーミーの突撃に対処している間にアーチャーからの矢が降り注ぎ、それに対処している隙を突いてアーミーが攻撃してくる……というような、危険な状況に陥っていたのだろう。本当に、俺のスキルや装備構成が対アーミー・アーチャー戦向きで助かったよ。


「【ファイアブレスⅡ】」

――ゴォォォォォォ!!

「「「「ギャァァァッ!?」」」」


 射撃準備をしているアーチャー軍団に走って近付き、改めて炎を吐きかける。

 ……アーミーと同じように炎を吐きかけられ、アーミーと同じように炎の海へ沈んでいくアーチャー。明らかに後衛タイプのモンスターだが、魔法耐性はそれほど高くないらしい。


 しばらくすると炎は止み、後には焼けたアーチャーの成れの果てが転がっていた。


――第4陣、クリア


 システムアナウンスと同時に、30体分の白い粒子が宙を舞っていく。多分に幻想的な風景だが、倒したモンスターの成れの果てだと考えると一気に現実へ引き戻されるな……。


 そういえば、ゴブリンアーミーとゴブリンアーチャーについてだが……こいつらの情報を、ネット上で見かけたことが全くと言っていいほど無い。

 ラッシュビートルやインプについては、頻りにネットへ情報がアップされていたが……ドロップアイテムに美味しい物が無く、強さも特筆するほどでは無い、ということの証左だろうか。確かにラッシュビートルよりは御しやすいし、戦いやすい相手だったけどな。


「今回は恩田さん無双だったわね」

「ああ、だけど朱音さんも飛刃で足止めしてくれてたろ? あれで余裕ができたから、すごく助かったよ」

「ありがとう。でも数が多かったから、ファイアブレスが無かったら確実に苦戦してたわね」

「きぃ?」

「……【ファイアブレスⅠ】か、どうだろうな? また試してみような、ヒナタ」

「きぃっ!」


 戦いを見ていた朱音さんも、俺と同じように考えていたらしい。接近戦専門の探索者では確実に苦戦するな……。

 一方で『【ファイアブレスⅠ】だったら効くの? どうなの?』とヒナタが聞いてきたが……実際問題、どうなるんだろうな? 【ファイアブレスⅡ】の火力だからこそ通用しているのか、【ファイアブレスⅠ】でもアーミーやアーチャーを倒し切れるのか。そこは今後の検証課題としようかな。




 ……さて、と。第4陣で未遭遇モンスターが出てきたということは、この後に続く相手はほとんどが未遭遇モンスターとなる可能性が高い。

 特殊モンスターという例外はあるかもしれないが、それならそれで危険度は大きく跳ね上がる。いずれにせよ、ここからが本番になるな。


「朱音さん、ヒナタ。疲れてないか?」

「ええ、私はまだまだいけるわよ!」

「きぃっ!」


 無理している様子も無いし、2人ともまだ余裕はありそうだな。


 そうこうしているうちに、闘技場に白い光が集まってきたが……ぼんやりと人型になった光の体積が、ラッシュビートルのそれよりも縦横に更に大きい。相当な大型モンスターだぞ、これは。


――第5陣、オーク5体


 やはり未遭遇モンスター、そして遂にきたか。ゴブリンなどと並んで、ファンタジーの定番たるモンスター。


「「「「ブゴォォォォ!!」」」」


 豚鼻の巨漢、オークが5体並び、巨大な棍棒を掲げて雄叫びをあげた。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
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