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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く

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3−54:君子危うきに近寄らず、されど虎穴に入らずんば虎子を得ず


「……うわぁ」


 根っこの合間に見えた階段は、ものすごく見覚えがある雰囲気の階段だった。周りの風景にそぐわない、真っ白に染まった階段。それは、まるで――


「――なんか、プラチナ宝箱を見つけた神殿にそっくりな入口だな」

「え、プラチナ宝箱? 一昨日に恩田さんが見つけたっていう、あの?」

「そう、それ」


 一昨日の記憶が蘇る。博愛のステッキを入手し、ヒナタを仲間にできたというプラスの面と……。


「すっごい希少品が手に入るかもしれないぞ。エゲツナイ罠を掻い潜る覚悟があれば、の話だけどな」

「………」


 真紅竜に追い回され、ハイリザードマンに左腕を焼かれたという苦い記憶が。

 さすがの朱音さんも、腕を組んで少し悩んでいたが……やがて、意を決したように顔を上げた。


「……行ってみたいわ。こういう試練を乗り越えていかないと、ダンジョンの奥は目指せないでしょうから」

「了解」


 忘れがちだが、朱音さんが探索者になったそもそもの目的は"ポーションを見つけること"だったからな。今は少し変わって"ポーションをたくさん手に入れる方法を見つけること"になっているが……いずれにせよ、生半可な実力では到底達成できない、とても高い目標になる。実力を付けたいと思うのは当然だろう。

 さて、朱音さんがその気なら俺も付いていこう。一昨日はソロだったゆえ、相談する相手もおらず心細かったが……今日は仲間が2人もいる。大変なのは目に見えているが、力を合わせればなんとかできるに違いない。




 白い階段の前に立つ。すると、やはりというべきか白文字が空中に浮かび上がってきた。


 ……"お2人様、早いもの勝ち!"という、若干気の抜ける文言が。


 第5層の神殿の時もこんな感じの文面だったが、この文章を考えたやつは相当性格が悪いやつに違いない。


「……軽い文章ね。この文章を考えた人とは、私あんまり仲良くできなさそう」

「右に同じだ。こういう気の抜けそうな文章で釣っておいて、プラチナ宝箱を開けさせて地獄を見せる……性格が悪いとしか思えないな」


 まあ、その罠に簡単に嵌まってしまうような、迂闊な人間が言うことではないかもしれないがな。


「……そういえば、ヒナタは人数に含まれるのか?」

「きぃ?」


 左肩のヒナタを撫でながら、ふと気になったことを口にする。

 ……もし、ヒナタが人数に含まれるのであれば、中には入れないことになる。今はこの3人で協力しながら探索をしているわけで、ここに誰かを置いていくなど、あり得ないことだからだ。

 そんな俺の言葉を、どこかで聞いていたのだろうか。人数制限を告げる文章に加えて、新たな文言が目の前に浮かび上がってきた。


 "使い魔は人数に含みません!"という文言が。


「あら、これならヒナタも連れていけそうね。良かったわ」

「きぃっ! きぃっ!」

「………」


 これはこれで、ヒナタの存在を軽んじられているようで腹が立つな。


 ……しかしそうか、やはりな。


 これまでダンジョンを攻略していて、何度か不思議に思ったことがある。まるで何者かの意思が介在しているかのような、明確な意図を感じるものがそこかしこにあったことに。

 特に例を挙げると、


・現代社会において、有用極まりない魔石の用途

・やけにファンタジー色の強い要素 (モンスターや魔法、宝箱、特殊な道具といったものの存在)

・第4層や第6層の高難易度仕様


 これらに、俺は作為的なものを感じるのだ。


 例えば魔石は、そのまま火力発電の燃料としてエネルギー源にできる。しかも、地球温暖化がどうのと世界的に叫ばれる中で、魔石による火力発電はなんと二酸化炭素を全く出さないそうなのだ。大気汚染の原因となる他のガスや放射性物質のような危険物が発生することも一切なく、実にクリーンなエネルギーであると言えるだろう。

 そうでなくとも、特に日本のようなエネルギー資源輸入国にとっては、魔石の存在はそのままダンジョン探索の重要性に直結するものでもある。今もそういう言い方をするのかは分からないが、燃料国策に大いに寄与する存在であるわけだ。

 既存の設備をそのまま活用でき、かつ世界的な問題や国家間の格差さえ埋めてしまう……そのような要素が、魔石には多分に含まれているのだ。


 加えて、宝箱やそこから産出する不思議な道具の存在は、多くの人間を惹きつけてやまないだろう。一攫千金の夢というのは、いつの世も人を引き寄せる誘蛾灯であるのだ。

 また、スライムやゴブリンといったファンタジー世界の代表格ともいえるモンスターの存在も、人によっては大いに興味を引くものとなるだろう。既存の生物とは明らかに異なる未知の存在に対し、興味をそそられる人は確実に存在するものだ。

 それでいて第4層や第6層で急に難易度が上がっているのは、未熟な探索者が無謀な探索を行わないよう、ダンジョン側で抑止しているのかもしれない。あるいは、引き際を知らない()()()の命を喰らうべく、大口を開けて待ち構えているか。


 ……これらは憶測でしかないが、ダンジョン設定の端々に人間の行動原理を理解している節が垣間見えるのだ。"多くの人間をダンジョンに呼び込む"、"優秀な探索者はどんどん奥に進んでもらう"、"されど無理せず、自分のできるところで頑張ってもらう"というような意図を感じるのである。


 そしてなにより、目の前で展開されている謎の文章。さっき俺が発した言葉を受けて、急遽文言が追加されている。

 俺の言葉の意味を理解したうえで、ダンジョンの仕様と照らし合わせて説明に必要な文言を追加し、それを表示する……人為的な操作が入らなければ、到底起こり得ないことだ。人かどうかは分からないが、高度な知的生命体がいることがこれでほぼ確定した。

 仮に、それがダンジョンを作り上げた存在であるとして……一体、何が目的なんだろうな?


「恩田さん、何してるの? 中に入らないの?」

「ん? ああ、いや、今行くよ」


 ……少し考え込みすぎたか、俺の悪い癖だな。

 まあ、こんなところで立ち止まってても始まらないか。本当にダンジョンマスター的な存在がいるかどうか……その答えは、ダンジョンを進めばいつか分かるかもしれないな。


 それに、だ。俺の予想が正しければ、ダンジョンは人に対して越えられない壁は絶対に用意しない。強すぎる敵(真紅竜)を相手にして、一定の場所まで逃げるという選択肢がちゃんと用意されていたように……この先もおそらく、ギリギリ乗り越えられるような試練が待ち受けているのだろう。

 まあ、2人で挑む試練ゆえ、難易度は相当高そうだけどな。






「へえ、中はこんな風になってるのね。階段がどこまでも続いてるわ」

「………」


 第5層の神殿の時は、すぐに螺旋状のスロープへと変わっていったが……ここ第6層の神殿 (?)は、階段が深く続いている。既に50段ほど下りたはずだが、まだまだ下が見えてこない。




 そうして、思ったよりも深い階段を下り続けること、約5分。

 階段の終わりがようやく見えてきた。下りるのはまだ楽でいいが、上るのは大変だぞこれ……。


「よっ……と」


 広い部屋に下り立つ。そのまま、辺りを見回してみたが……その部屋には見覚えがあった。具体的には、一昨日見たばかりの景色だ。


「……これは」

「きぃ」


 ようやくたどり着いたのは、なんと訓練の本で塔の最上階にあった、あの闘技場もどきにそっくりな場所だった。

 ……いや、そっくりなんてレベルじゃないな、これは。塔の最上階の部屋をそのまま持ってきたようにも見える。それくらい、色々なもののサイズ感や配置位置が酷似しているのだ。


「恩田さん、ここ見たことあるの?」

「ああ、見たことがある」

「第5層の神殿?」

「いや、それとは別の場所だ」


 朱音さんと並んで、真ん中の窪んだ場所へ移動する。訓練の本の中では、ラージスライムと戦った場所だ。


「その時は、この場所でラージスライムと――」


――入場者を確認しました

――これより試練を開始致します


 唐突に、脳内にシステムアナウンスが響き渡った。ふと見れば、朱音さんが戸惑っていた。


「構えろ! モンスターが来るぞ!」

「!!」


 俺の一声に、朱音さんが戦う構えをとる。入り口で掛けたプロテクションは既に切れてしまっている、しまったな――


――第1陣、ゴブリン30体


「おいおい……」


 ゴブリン軍団か、初手からなかなかヘビーな相手だな。しかも……。


「「「「ギャッギャッギャッ!!」」」」


 囲まれた状態からのスタートとはな。


 俺たちの周りを、白い光の柱のようなものがぐるりと囲ったかと思えば……そこから、大量のゴブリンが湧き出してきた。


「朱音さん、背中合わせだ!」

「ええ!」


 朱音さんと2人、背中合わせになって死角を潰す。これで、無防備な背中に攻撃を受ける確率は大きく下がっただろう。

 ……さて、まずはゴブリンの包囲網を崩す必要があるな。こういう時に便利なのが……。


「【ファイアブレスⅡ】!」

「きぃっ!」

――ゴゴゴゴゴ!

――ゴガァァァ!


 特に合わせたわけではないのだが、ヒナタと同時に同じ方向へファイアブレスを放つ。2つの炎は複雑に絡まり合い、ゴブリン包囲網の一角へ波のようになって叩き付けられた。


「「「「ギャッ……!?」」」」

「「「ギャア!?」」」


 燃え盛る火炎が、ゴブリン8体を一瞬のうちに燃やし尽くす。そこから飛び散った火の玉が、更にゴブリン3体を戦闘不能状態に陥らせた。


「"飛刃"!」

――ヒュッ!

「「「ギッ……!?」」」


 後ろでは、朱音さんが真空波を飛ばす音が聞こえる。斬れ味鋭い空気の刃が、ゴブリン3体の体をまるでバターのように切り裂いたようだ。


「「「「ギャギャギャギャッ!!」」」」


 だが、やはりゴブリンの数が多すぎる。

 初手で倒れなかった16体のゴブリン共が、俺たち目掛けて一斉に飛び掛かってきた。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
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