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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く

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3−48:人間や草食動物の周辺視野が広いのは、危険をいち早く察知するためなんだよ


「………」


 1日じっくりと休みをとり、今日の俺は元気100倍!

 ……はさすがに言い過ぎなので、元気十分にしておこうか。とにかく気分上々、亀岡ダンジョンバリケードの鉄扉の前で午前9時の開場を待つ。


「ほんと、今日は良い天気ね」

「そうだな、あまり寒くなくて良かったよ」


 もちろん、朱音さんも一緒だ。

 今日は陽がよく照っており、3月前半にしてはやや気温が高い。半袖はさすがに厳しいものの、長袖に薄手の上着を着込めばちょうど良いくらいには暖かい。春の訪れが間近に迫ってきているのを、全身でヒシヒシと感じる日になっている。


「でも、私はもう少し涼しい方が良いかしらね?」

「……よく平気だよな、そんな格好でさ。一応、2桁℃の中でもそこそこ低い気温なんだけど?」

「朝から13℃もあれば十分よ。むしろ、これ以上着込んだら汗かいちゃうわね」

「マジか……」


 初めて会った時からそうだったが、朱音さんは相変わらず寒さに強い。今は上着を着ておらず、軽く折り畳んで腕に掛けている。それでいて血色は良さそうで、寒さに震えている様子は全く無い。

 ちなみに、九十九さんと帯刀さんは用事があって来れないらしいので、今日は2人……いや、3人での探索になるな。


「「………」」


 今日が平日だからか、ダンジョン前で待つ探索者の人数は少ない。俺と朱音さんとヒナタ、あとは男性2人組しか門の前にはいない。

 で、あの2人組は確か、少し前にここ(亀岡ダンジョン)で動画撮影をしていたな。確か先週の木曜日だったっけか、色々と濃密な時間を過ごしたせいで、随分と前のことのように感じるな……実際は、たった数日前のことだというのにな。

 ちなみに顔出ししているタイプの動画配信者なのか、見た目や服装はきっちりと整えている。ややチャラそうな雰囲気なのは少し気になるが、イマドキはああいう感じがウケるのかもしれないな。


「そういえば恩田さん、もしかしてリュック変えた?」

「ん? ああ、一昨日のソロ探索の時にちょっとやらかしてな。リュックがボロボロになったんで、権藤さんに貰ったんだよ」

「へえ。迷彩柄ってことは、もしかして自衛隊仕様なのかしら?」

「そうらしいぞ。迷宮開発局移籍の時に、型落ち品だってんで払い下げられたんだってさ」

「……きぃ」

「?? 恩田さん、リュックの中から何か鳴き声が聞こえたような……?」


 おっと、そろそろヒナタも我慢の限界か? ここまで小一時間ほどリュックに入りっぱなしだし、昨日は外出を我慢させたしでフラストレーションが溜まってるのかもしれない。そろそろ思い切り飛び回りたくて、リュックの中でウズウズしているのだろう。


「ああ、それはダンジョンに入ってから説明するよ」

「あ、はい……?」

「皆さん、お待たせいたしました! 開場のお時間です!」


 9時ぴったりに、ダンジョン職員の女性が門を開ける。今日の開門係は澄川さんではないようだが、もしかしてお休みだろうか?


「じゃあ、着替えてゲート前で集合な」

「了解よ」

「「………」」


 扉が開いてもなぜか動かない男性2人組を横目に、俺と朱音さんはダンジョンバリケードの中へ入っていく。

 ……ふむ。彼ら、どうにも挙動が怪しいな。必要無いかもしれないが、一応は警戒しておくか。



 ◇



「とりあえず、いつもの場所まで来れたな」

「ええ」


 各々装備を身に着け、ダンジョンゲートをくぐった俺と朱音さんはいつもの脇道へと入る。

 ……さっきの2人組はまだダンジョンに入っていないようだが、動画のセッティングでもしているのだろうか。


「それで、恩田さん。さっきの鳴き声は一体……?」


 おっと、ダンジョンに入ったら説明するって朱音さんに言ったしな。この後一緒に探索するのだから、ちゃんと紹介しないとな。


「そうだな……権藤さんと決めたルールだから、ダンジョン外では表に出してやれなかったんだよ。昨日も少し寂しい思いをさせちゃったからな、ちょっと我慢の限界だったっぽい」

「??」


 クエスチョンマークを大量に浮かべる朱音さんの横で、リュックの口を思い切り開放する。


「きぃっ!!」


 待ってましたとばかりに、ヒナタが勢い良くリュックの中から飛び出した。


「えっ? ……えっ!?」


 それを見た朱音さんが、目を点にして立ち尽くす。リュックからモンスターがいきなり飛び出してくるという異常事態に、脳が理解の許容量を超えてしまったようだ。

 そんな朱音さんをよそに、ヒナタは宙をクルクルと旋回した後、定位置(俺の左肩)へと収まった。


「きぃ」


 ふん、と拗ねていて少々ご立腹だが、体はスリスリと擦り寄せてきている。今日はちょっぴりあまのじゃくな、ツンデレヒナタさんな気分のようだ。


「お〜よしよし、ごめんなヒナタ。でもな、これもヒナタを守るためなんだよ。申し訳ないけど我慢してな?」

「きぃ……」


 渋々と、本当に渋々とヒナタが頷く。早く【空間魔法】で快適空間を作ってやりたいところだが、それには今の俺の全魔力量と比較して3倍くらいの魔力量が必要になりそうだ。これまで【空間魔法】を使ってきた感覚から、なんとなくそんな気がするのだ。

 ただ、それさえ作れればヒナタを快適に色んな場所へ連れていけるだろうし、ダンジョン探索においても安全に休む場所を作ることができるだろう。今と同じ魔力成長ペースだと想定すると、実現にはあと1ヶ月半くらいはかかる計算だが……なるべく早く実現できるよう、意識して魔力を成長させていかないとな。


「……その子、味方なのね?」

「ああ」


 ヒナタの様子を見て、敵ではないと察してくれたのだろう。それでも、朱音さんがおずおずと俺に聞いてくる。

 なので、一昨日にあったことを朱音さんにかいつまんで説明した。



………


……




「……なるほど。つまり、ヒナタは特殊個体モンスターが変化した仲間であり、亀岡迷宮開発局にも認められた迷宮探索開発補助動物ってことね」

「そうだ。ってか、よく噛まずに言えるな、朱音さん」

「ふふ、子供の頃はアナウンサーさんに憧れてた時期もあったのよ。その時に夢中で発声練習とかしてたから、今もそれが活きてるのかもしれないわね」

「………」


 ヒナタのつぶらな瞳が、品定めをするように朱音さんの顔をじぃっと見つめている。

 権藤さんに対しては塩対応だったヒナタだが、朱音さんに対しては少し警戒しつつも歩み寄りたい姿勢を見せている。


「……あら?」


 それに気付いた朱音さんが、やんわりとした笑みをヒナタに返す。九十九さんには積極的ににじり寄っていた朱音さんだが、ヒナタに対してはさすがにそういう感情は抱いていないらしい。

 それでも、歩み寄りたい気持ちは朱音さんも同じようだ。


「ふふっ、おいで?」

「……きぃっ!」


 右手をそっと差し出しながら、朱音さんがヒナタを誘う。

 それを見たヒナタが、俺の左肩から軽やかに飛び立つ。そのまま朱音さんの右腕にストンと乗り、左の翼を上げて「きぃっ! (よろしく!)」と挨拶した。


「よろしく、だってさ。仲良くできそうで良かったよ」

「あらあら、そうなのヒナタさん?」

「きぃ!」


 パタパタと両翼を羽ばたかせて、ヒナタはゴキゲンな様子を見せている。お互い性格的な相性が良さそうで、俺としてはなによりだよ。


「じゃあ、そのまま階段まで移動していきますかね」

「ええ、そうしましょう。それにしても軽いわねぇ、ヒナタは」

「きぃ♪」


 右肩まで上がってきたヒナタの頭を、朱音さんがそっと優しく撫でる。ヒナタは気持ち良さそうに、朱音さんの手を受け入れていた。


「……うわぁ、すっごいフワフワ。この手触り、なんだかクセになりそうね」


 ひとしきりヒナタを撫でた後、朱音さんがうっとりと笑みを浮かべながらそう言う。そこは俺も全く同じ気持ちだ。


「やっぱりそう思うよな? ヒナタの毛並みが柔らかすぎて、なんか夢中になっちゃうんだよ。昨日もずっと撫でてたし」

「分かるわ、その気持ち。いいなぁ、羨ましいなぁ、柔らかいモチモチお肌……」

「きぃ?」

(……うーん、ここはあえて言葉を返さないのが吉か)


 女性にとってのお肌のアレコレは、マリアナ海溝の底よりも概念的に深く、富士山の総重量よりも概念的に重いものだ。迂闊な発言は即命取りとなりかねない。

 俺個人的には、仕事をしながら探索者もして、多忙なはずの朱音さんが美しさを保つ努力もしている……普通にすごいことだと思うけどな。

 俺なんか完全放置だったから、お肌はとうの昔にガサガサのシオシオ状態になってしまってるし。今から手入れしたとて以前のような肌に戻れるとは到底思えないし、もはやどうでも良いかなとさえ思ってしまっているのだから。


 ……話は変わるが、探索者の成長について追加で分かったことがある。能力が成長するタイミングと、その成長量についてだ。

 前々からそうじゃないかな、とは思っていたのだが……能力は()()()()()()()()らしい。今日で探索者になってから1週間が経ち、その間色々と試して検証したところ、こちらはほぼ確定した。


 一方の成長量については、少しばかり未解明な部分が残っている。元々は"1回の成長量に上限がある"、"成長量は行動内容によって決まる"という2つの仮説を立てていたが、前者については俺の魔力量の成長スピードが常に一定なことから、ほぼ正しいと考えて良いだろう。

 ただ、後者についてはまだ分からないことがある……いや、昨日まではほぼ確定だと思っていたのが、今日の朝になって未解明状態に蹴り返されてしまったと言うべきか。

 なにせ、昨日はあえて魔力を使わず1日を過ごしたのに、今朝になって魔力量が大きく成長していたのだ。具体的には1回の成長量限界にほぼ近い分だけ魔力量が伸び、他の身体能力的な部分も大きく伸びた。行動内容と成長量に関連があるのなら、能力が伸びるはずがないのに、だ。


 この辺りは、まだまだ検証が必要だろうな。


「……ん? おっと、もう下り階段か」


 そんなこんなで、第2層への下り階段にたどり着く。今日の目標は第6層、ラッシュビートルと戦う練習をすることが主目的だ。前回とは違い、九十九さんと帯刀さんがいない代わりにヒナタが入ったが……さて、どんな戦いになるだろうか。

 うん、少し楽しみだな。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
[良い点] 寝てレベルアップ……なんかウィザード○ィみたいですね! [一言] チャラ男×2……よそのシマから送り込まれた鉄砲玉臭いなぁ。
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