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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く

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3−46:宝箱にトラップって定番だよね


 システムアナウンスが一気に鳴り響く。規定タイムはBまでクリアできたようで、俺の目の前に()製の宝箱が2つ現れた。

 銀の宝箱……パンフレットによれば、石の宝箱より1つ上のランクにあたるらしい。"閃光玉・改"や"火炎玉・改"のように名前の後ろに"改"と付いているので、これまで手に入れた"閃光玉"や"火炎玉"よりも威力が高くなっているんだろうとは思っていたのだが……最終課題で得られる報酬品は、どうやら道中のものよりもワンランク豪華になっているらしい。


――ヴィィィン……


 続けて、なんとも言えない不思議な効果音と共に、部屋のど真ん中にゲートが出現する。内側を満たす膜の色が白色になっていること以外は、ダンジョンゲートとほぼ同じつくりに見えるが……なるほど、これをくぐれば外に出られるわけか。とても分かりやすいな。


 あとは、少し気になる内容のアナウンスもあったな。確か、特殊ドロップ品が経験値に変換されるとか、どうとか。

 俺のこれまでの検証によれば、探索者はロマ◯ガ式に近い成長の仕方をする可能性が極めて高い。そこに経験値という概念は、確かに無くはないのだが……どちらかと言うと"熟練度"の方が表現としては適切だろう。

 だが、システムアナウンスは『経験値に変換される』とハッキリ言った。ということは、使い魔はドラ◯エ式の成長をし、レベルという概念が存在する可能性が高いことになる。ステータスウィンドウにあたるものが無いので、レベル等を確認することはできないが……。

 それにしても、ヒナタがあの攻防の中で特殊ドロップ品……おそらくはラージスライムの核を取っていたことにも驚いた。ただ、戦闘が終わってすぐに経験値へと変換されてしまったのか、実物は一切確認できていない。

 せめて一目くらいは見たかったが、ヒナタにとってプラスの出来事が起きたのであれば、まあそれで良いか。


「きぃ!」


 俺の左肩に戻ってきたヒナタが、すりすりと俺にすり寄ってくる。柔らかい毛並みが頬に擦れて、なかなか心地良い感触を生み出している。

 ……俺、ヒゲとか伸びてないよな? 朝に必ず剃るのだが、昼過ぎくらいになると少しチクチクしだして、夕方にはゾリゾリいうくらいにはヒゲが伸びてしまう。そんな俺の頬に体を擦り付けて、ヒナタは痛くないだろうか?


 ……とりあえず、大丈夫そうだ


「よしよし、やったなヒナタ」

「きぃ♪」


 これ以上無い戦果に、ヒナタの頭を撫でて褒めちぎる。

 そうしてふと、特殊ドロップに限らずドロップアイテム全般が入手できなかったことに気付く。今倒したラージスライムも、ゴブリンも……ドロップアイテムは一切落とさなかった。あの時は少しだけ違和感を覚えていたのだが、規定タイムクリア報酬に気を取られて気付けなかったな。


「さて……」


 シルバーメタリックな輝きを放つ宝箱2つに、ようやく目を向ける。さっさと開けて中身を確認したいところだが、それができない事情がある。

 ……そう、銀以上のランクの宝箱にはトラップが仕掛けられる可能性があるという、あの初心者用パンフレットの文言だ。石製の宝箱はまだ注意しながらも勢いで開けられたが、こればかりはそうもいかない。プラチナ宝箱で痛い目をみている身としては、安全の担保をきちんと取っておきたいのだ。

 もし、ドラ◯エのイン◯スのような魔法があればいいのだが。そんな都合の良い魔法なんて……。


「……いや、ちょっと待てよ?」


 イン◯スはさすがに無理でも、宝箱の中身を透かして確認することくらいはできないだろうか? レントゲン撮影で使うX線なんかも、物凄く物質透過力の高い光線……と言えなくもないしな。宝箱のガワだけを透かして、中身の影を確認できる光魔法を想像してみよう。

 魔法名は、そうだな……変な捻りは入れず、シンプルにいこうか。


「"サーチ・トレジャーボックス"」


 右手を銀製の宝箱の1つに翳し、魔法を発動する。これで宝箱の中身だけを確認できるはずだ。

 ……なるほど。丸い影だけが透けて見えるが、他には何も無さそうだ。閃光玉・改か火炎玉・改かは分からないが、こちらはアイテムしか入っていないらしい。

 さて、もう1つの銀製の宝箱は、と……うん? 丸い影も確かに見えるが、同時に矢と弓……というより、クロスボウみたいな物の影も見えるな。矢じりのように尖った部分が、ちょうど宝箱の正面を向いているようだ。

 これは、開けたら確実に矢が飛んでくるな。課題のクリア報酬として出てきた宝箱にさえ罠があるとは……警戒しておいてよかったよ。


「ヒナタ、左肩に止まっててくれ。こっちの宝箱は、矢の罠が仕掛けられてるっぽいからな」

「きぃ……」


 俺の言葉に、ヒナタが不安そうにこちらを見上げる。構造上、矢は正面にしか飛んでこないので心配は無用……と言いたいところではあるのだが。

 もしかしたら、摩訶不思議なダンジョンパワーによって、矢が変な方向に飛んでこないとも限らない。


「"プロテクション・ツイン"」

「……きぃ? きぃっ♪」


 念のために防御魔法をかけておく。今はこれで良いが、将来的にはもっと効率の良い方法を考えたいものだ。

 そうして、まずは罠が仕掛けられている方の宝箱の真横に立ち、そっと箱を開ける。


――ヒュッ!

――ビィィィン!


 予想通り、鉄の矢じりを備えた木製の矢が正面に向けて飛び出てくる。矢は放物線を描き、床に斜めに突き刺さって止まった。

 それをしっかりと見送ってから、盾を構えつつそっと宝箱を覗く。中にクロスボウの発射器側は入っておらず、これまでの物より少し赤みが強くなった火炎玉のみが入っていた。


「これは……火炎玉・改か?」


 色合い的に、その可能性が高いだろう。それを取り出し、もう1つの宝箱も横からそっと開けてみる。こちらは特に何も起こらず、中には白い玉が入っていた。白は濃くなっても結局白なので、元の閃光玉との違いがよく分からないが……多分、これが閃光玉・改なのだろう。


「"アイテムボックス・収納"」


 両方ともアイテムボックスに入れてから、改めて部屋を見回す。既に帰りのゲートは出現しているものの、少し気になることがあるからだ。


 ……次々に出される課題をクリアしながら、俺とヒナタは塔を第5階層まで上ってきた。天井の高さから逆算すれば、大体50メートル分くらいは上っただろうか。

 ただ、外から見た時の塔はもっともっと高い印象だった。少なくとも2倍の100メートルくらいはあったと思うが、なにぶん目測なのでだいぶズレがあるかもしれない。それでも、ここが塔の最上階でないことだけは分かる。

 そうなると気になるのは、ここより上の階層に行く方法だ。既に帰りのゲートが出現しており、上り階段はこの階層には見当たらない。天井に穴が開いているような様子も無いので、上層に行く方法が現状存在しないのだ。

 これは、もしかすると……。


「上の階層には、"弐"の本以降で行くことになるかもしれないな……」

「きぃ?」


 "壱"と書かれた本があるのだから、当然のように"弐"の本もどこかにあるはず。もしかしたら"参"の本もあるかもしれない。それらの本を見つけて入れば、ここより上の階層に行くこともできるのかもしれないな。


 ゲートの方を見る。これをくぐれば、元の場所に戻れるだろう。


「戻ろうか、ヒナタ」

「きいっ!」


 ヒナタと一緒に、ゲートをくぐる。




 ……ふと気が付くと、俺たちは元の書庫の中に立っていた。


「………」


 机の上に置かれた本を見る。ヒナタが開いたはずの本は閉じられており、真っ白だった表紙には"訓練の本・壱"、"大空の章 訓練達成者:恩田・ヒナタ"という文字が浮かんでいた。


 ……実は、途中からそうじゃないかな、とは思っていたのだが。やはりこれは、使い魔との連携訓練を行う場を提供するためのものだったようだ。そして"大空の章"ということは、ペアとなる使い魔……今回はヒナタが、空を飛べることを前提にした課題設定だったわけだ。

 第1課題の石は全て高い所にあったし、石をはめる窪みも高い所にあった。第2課題はゴブリン相手に空から一方的に攻撃できたし、第3課題の迷路は高い位置からの誘導が高速クリアに必須のムーブとなっていた。最終課題だけそれが必須じゃなかったような気もするが、床を強酸で汚すラージスライムが相手なら、空を飛べるというただそれだけで優位に立ち回ることができる。


 ……もし、ヒナタが空を飛べない地上型の使い魔であれば。もしかしたら、また別の課題内容になっていたかもしれないな。


「………」


 スマホを取り出し、現在時刻を確認する。

 スマホには午後5時56分と表示されていた。権藤さんが呼びに来た形跡がないので、まだお客さんと話し込んでいるのだろう。


「きぃっ! きぃっ!」

「ほいほい、ヒナタさんや。よしよし……」

「きぃ♪」


 構って欲しそうだったので、ヒナタの頭を優しく撫でる。ヒナタは毛並みがとても柔らかく、撫で心地が非常に良い。いつまでも撫でていたくなるような、どこか不思議な魅力があるのだ。


「うりうり」

「きぃっ♪」


 備え付けの椅子に座りながら、ヒナタと戯れつつゆっくりと体を休める。色々あってとても疲れたが、得るものもまた多い1日だったな。

 ……あ、そういえばまだ換金してなかったっけか。忘れないようにしないとな。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 第一層への上り階段の前で6時すぎだったはずなのですが、今午後5時56分なのはおかしくないですか。
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