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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く

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3−45:最終課題


 さて、気合いを入れ直したはいいものの……この後の戦略はどうしようかな。

 もちろん、ヒナタを巻き込む可能性のある攻撃はNGだ。ライトニング・ボルテクスなどもってのほかであろう。単発系のライトニングやサンダーボルト、あるいは光魔法で攻めるのがいいかもしれない。


「"ライトニング・サークル"!」


 そういうわけで、仕切り直しからの再攻撃は雷撃魔法から始める。今さっき放ったばかりの魔法だが、ラージスライム相手なら同じ攻撃を続けても問題ないだろうと判断した。


――グニョン


 計画通り、と言うべきか。ラージスライムはさっきと同じように、体をバネのような形を変えて雷撃を避けようとする。


「きぃっ!」

――ゴォォォォ!


 それを読んでいたヒナタが、一拍遅れて空からファイアブレスを放つ。その攻撃に更に反応したラージスライムが、体の形状をもう一段変化させて炎を避けようとするが……。


――ゴォォォォ!

「……!」


 なぜか少しだけ形状変化の速度が遅く、ヒナタの炎がラージスライムの体を掠めた。ラージスライムは熱によって表面が少しカピカピになった程度で、大したダメージは受けなかったようだが……この戦闘における、2度目のヒットがヒナタの攻撃から生まれた。

 ……果たして、これをどう分析すべきだろうか。雷属性が弱点だからこそ、俺の雷魔法だけは全力で避けているのか。あるいは、形状変化も決して無限にできるわけではないのか。


 それをハッキリさせることが、ラージスライム討伐への近道になるような……そんな気がした。


「ヒナタ、次は逆順で攻撃しよう。先に攻撃を頼む」

「きぃっ! きいきぃきぃっ!」

「うん? 直接攻撃を試してみたいって……それじゃあヒナタが溶けてしまうぞ。ちょっとそれは認められないなぁ」

「きぃっ!」

「プロテクションがあるじゃん、って……まあ、確かにそうなんだけど」


 ブルースライムの酸はプロテクションで防げたが、ラージスライムの酸は防げるのだろうか? それが確定していないのに、ヒナタで試すような真似はしたくないのだが……。


「きぃ!」

「絶対に大丈夫、ってなにを根拠に」

「きぃっ!」

「信頼してるから、か。それは嬉しい……」


 って、ちょっと待て。俺とヒナタって、出会ってまだ4時間も経ってないんだが。信頼するの早すぎないか?

 ……でもまあ、信頼してくれてるのなら、その期待を裏切るわけにはいかんよな。


「……ああもう、分かったよヒナタ。でも魔法は厚めにかけさせてくれよな。"プロテクション・ハード"」


 魔法の防御膜を、いつもの5割増しくらい手厚くかける。これなら真紅竜のファイアブレスにも、1回くらいなら耐えられる……かもしれない。試したいとは微塵も思わないが。


「よし、それじゃあ頼んだぞヒナタ!」

「きぃっ!」


 ヒナタが勢いよく上へと飛んでいき……天井付近で頭を下に向ける。そこから天井を思い切り蹴りこみ、翼をたたんで一気に速度を上げながら急降下してきた。

 しかも、ヒナタはその身に白い光を纏っている。塔の第1階層、ゴブリン戦で見せてくれたアレを【風属性攻撃】とするなら、これは【光属性攻撃】だろうか。ファイアブレスなんかより、よほどヒナタらしい攻撃だ。


 ヒナタの超高速の一撃が、ラージスライムに直撃する……その直前。


――グニョン


 ラージスライムは体の形状を変化させて、ヒナタの攻撃を避けた。その強酸性の体でもって、ヒナタの急降下突進攻撃を受け止めるかと思ったのだが……ラージスライムはそれを嫌がったように、俺には見えた。

 そしてスピードに乗ってしまったヒナタは、すぐには止まれなかった。再攻撃が難しいくらいに、かなり遠くまで飛んでいってしまう。


「"サンダーボルト・ディヴィジョン"!」

――バチッ!

――ジジジジジジ!


 せっかくヒナタが作り出した隙を、無駄にはしたくない。その思いから、間髪入れずに電撃魔法をラージスライムに向けて撃ち込んだ。

 しかも、これはただのサンダーボルトではない。発射点からその先に向けて、細かく無数に枝分かれしていく電撃を放つ魔法だ。ライトショットガンが雷属性化して、威力が大幅に向上した代わりに弾速が少し落ちたような魔法だな。


 さすがにこれは当たるかと思ったのだが……なんとラージスライムは体に大量の穴を作り出し、電撃を全てかわしきってしまった。くぅっ、これでもだめなのか……。


「きぃっ!」

――ゴォォォ!


 遥か遠くからこちらに戻ってくる途上にいたヒナタが、遠距離からラージスライムに向けて炎を吐きかける。しかし、これでは着弾までに時間的な猶予があるので、形状変化で簡単に避けられてしまう……。


――ゴァァァ!


 ……そう思っていたのだが、なぜかラージスライムは炎を避けようとはしなかった。炎がラージスライムの全身を隈なく包み込み、痛みからか苦しげに体をグネグネとさせるが……。


――パチィン!


 すぐに、風船が割れるような音と共に炎が弾け飛ぶ。あとには、心なしか体表がカピカピに乾いたラージスライムがいた。


「攻撃は効いているようだが……」


 やはり、ブルースライムなどとは比べものにならないくらい耐久力が高い。知能が皆無であるがゆえに強敵とはなっていないが、とにかく耐久面に全振りしたような戦闘スタイルがとても鬱陶しい。

 ……しかしなるほど、やはりそうだったか。


「短時間に連続で形状変化したら、しばらくは形状変化できなくなるのか」


 そりゃ、あれだけ高速で体の形を変えるわけだからな。人間に置き換えれば短距離ダッシュを何度も繰り返す行動に等しく、ラージスライムに相当な負荷がかかっているのは間違いない。

 ……これで、攻撃を確実に当てるための方法が判明したな。


「絶え間なく攻撃するぞ、ヒナタ!」

「きぃっ!」


 間断無く攻撃すれば、いつか絶対に息切れして被弾する。そうと分かれば、ヒナタと2人で攻撃を連発するのみだ!


「きぃっ!」

――ゴォォォォ!


 近くまで戻ってきたヒナタが、ファイアブレスを放つ。炎は正確にラージスライムを捉えていたが、この攻撃は形状変化したラージスライムにかわされてしまう

 ……だが、当然だがまだまだ攻撃は続ける。短時間で畳みかけなければ、スタミナを回復されてしまうからだ。


「"ライトニング・ディヴィジョン"!」

――グニョン


 今度は、無数に枝分かれする雷撃を魔法を放ってみた。しかし、これもラージスライムにかわされてしまう。


「きぃっ!」

――ふわぁぁぁ……


 続けて、ヒナタの【風属性攻撃】が放たれる。今度は急降下攻撃ではなく、普通の突進攻撃だが……さあ、どうだ?


――ビシュッ!


 クリーンヒットはしなかったものの、攻撃が掠めてゲル状の体が少し飛び散る。その一部がヒナタにかかったが、プロテクションは仕事をしてくれているようだ。


「"サンダーボルト・スパークウェブ"!」

――バヂバヂ……

――パァン!


 トドメとばかりに、電撃の網が大きく広がる魔法を放つ。網はその捕捉範囲を広げた代わりに、網目がやや粗くなっているがラージスライムなら十分に捉えられる。

 これにもラージスライムは反応し、魔法を避けようと動き出すが……網は広範囲に渡ってカバーしており、横に避けるには既に時間が足りない。さあ、まだ形状変化する余力は残っているのか?


――グニィン


 ラージスライムの体が一気に細くなった。そのまま、ほぼ真横から飛来した電撃の網目の合間をすり抜けようとしている。










 よし、さすがラージスライム、これは想定通りだ。お前ならそう来ると思っていたよ。


 ……魔法については、実はずっと考えていたことがある。一旦魔法を放った後、その魔法を更に変化させることはできないのか、と。

 それを今、試す。


「"トランスファー・スパークウェブ"」

――ヂヂヂ……!


 網目の合間に、更に細かく電撃の糸を編み込んでいく。これをスパークウェブ全体に適用できればよかったのだが、今の俺では全体のほんの数%ほどに適用するのが精一杯のようだ。これ以上は魔法制御が追い付かなくなり、魔法が暴発してしまう可能性がある。

 だが、この場においてはその数%で十分だ。


――バヂバヂィィ!!

――バヂッ! ヂヂヂヂヂヂ!!


 体の一部を切り離すなりすれば、攻撃を避けることも可能だっただろう。だが、既にスタミナをすり減らしていたラージスライムには厳しかったようだ。

 ちょうど網の目を潜り抜けようとしていたラージスライムに、遂に雷魔法が直撃する。ラージスライムの体が一瞬で硬直し、そこへスパークウェブが容赦なく絡みつき、全身に高圧の電流を流し込んだ。


 そして、体内をあれだけ高速で駆け巡っていたラージスライムの核が、ピタリとその動きを止める。あれを撃ち抜けば討伐完了だ!


「きぃっ!」


 既に天井付近にいたヒナタが、空中で白い光を身に纏う。【光属性攻撃】でラージスライムに突貫し、核を撃ち抜くつもりらしい。

 ……そして、アレはそれだけじゃないな。


「きぃぃっ!」


 翼を折り畳んだヒナタが、凄まじい速度で急降下してくる。それは、まだダークネスバットだった頃に俺へと打撃を与えた、超高速の突進攻撃そのものだった。


「いけっ、ヒナタ! ここで決めろ!」

「きぃっ!!」

――ズボッ!

――ボチャッ!

――ズボァッ!


 ヒナタがラージスライムに突撃し、その体内を通り抜けて反対側まで貫徹する。

 そのまま空中に舞い戻ったヒナタは、全身をプルプルと震わせて酸性のゲルを払い飛ばした。特に傷は見当たらず、プロテクションの効果もあってダメージは0のようだ。


 そしてラージスライムの体を見てみると、核は体内には残っていなかった。


――グニ、グニ、グネ、グネ……


 ラージスライムが苦しそうに体をグネグネとさせる。思えば、核を取られたブルースライムも同じような反応を示してたっけか。

 ……やがて、ラージスライムの体が崩れ落ち始めた。解けたゲル状の体は白い煙を上げながら激しく蒸発し、ラージスライムは完全にその姿を消した。




――最終課題クリアです

――クリアタイムは8分17秒でした

――規定タイムA:15分をクリアしたため、挑戦者には"閃光玉・改"が進呈されます

――規定タイムB:10分をクリアしたため、挑戦者には"火炎玉・改"が進呈されます

――次は規定タイムC:7分を目指しまょう


――これで、全ての課題が終了しました

――ゲートを通り、元の世界へ戻ることができます

――なお、入手した特殊ドロップ品は使い魔の経験値に変換されます。予めご了承ください



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
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