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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く

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3−43:塔の中、新たな課題とヒナタの特長


 ヒナタと2人、連れ立って塔の中へと入る。中は意外と見通しが悪く、天井を支える太い柱数十本が視界を遮り、多くの死角を生み出していた。

 それゆえか、入口からは柱しか見当たらない。この階層――塔の第1階層には、柱以外何も見つからないのだ。


「上り階段はどこだろう?」

「きぃ?」


 ヒナタと一緒に右を見て、左を見て。やっぱり柱しか見当たらず、同時に同じ方向へ首を傾げる。

 この塔は見るからに高く、それなりの階数があるのは分かっている。ゆえに、上って進んでいく類の建造物であることは確定しているのだが、肝心の上り階段が見当たらないのだ。もしや、ここでも謎解きをする必要があるのか?

 しかし、ヒントになりそうなものは何も――


――第2課題、"陰に潜むゴブリン50体を討伐せよ"が開始されます

――早くクリアできれば、豪華賞品が進呈されるかも?


「……うん?」

「ギャッ……」

「ギャギィ……」


 気色悪い唸り声をあげる謎の生物が、柱の陰にて蠢いているのを見つけた……いやまあ、システムアナウンス通りならあれはゴブリンなわけだが。

 少し観察してみると、他にも柱の陰からこちらの様子を窺うゴブリン共の姿が。亀岡ダンジョン第3層のゴブリン部屋のように、相当な数のゴブリンがこの階層に潜んでいるらしい。50体という情報が確かなら、ほぼ全ての柱の陰に潜んでいるのではないだろうか。


 ……さて、どうするか。いつもゴブリン部屋でやっている通りにすれば、速攻で終わるだろう。ゴブリンの耐久力は低いので、柱の陰全てに1発ずつ雷を落とせば簡単にケリが付く。

 ただ、それはちょっと違う気がするのだ。外での謎解きの際も、ヒナタの力を借りて答えを導き出したが……塔の中の攻略も、もしかしたらそうすべきなのかもしれない。俺では本を開けられず、しかしヒナタは本を開くことができたので、そこに何らかの意味があると俺は思うのだ。


「ヒナタ、反対側の壁まで飛んで移動できるか? ついでに、目に見えたモンスターは自由に倒して構わないぞ」

「きぃ!」


 左肩を飛び立ったヒナタは、天井付近を飛んで反対側まで移動していく。天井の高さが5メートルくらいあり、ヒナタの高度はゴブリンの攻撃が一切届かない位置になる。

 それに気付いたのか、ゴブリン共がにわかに慌てだした。両端から見られたら、死角はかなり少なくなるからな。しかも……。


「きぃっ!」

――ゴォォォ!

「「「ギャァァァ!?」」」

「【ファイアブレスⅡ】」

――ゴォォォォ!!

「「グギッ……!?」」


 ヒナタも俺も遠距離攻撃持ちだ。ヒナタは空から一方的にゴブリンを倒すことができるし、俺も柱に近付かずとも攻撃ができる。


 ……そうだ、これでいい。クリアタイムは確かに大事だが、今日仲間になったばかりのヒナタと連携の練習を積むことはそれ以上に大事だ。2人で協力してゴブリンを殲滅し、かつ良いタイムを出せたなら最高だな。


「きぃっ!」

――ゴォォォ!

「「「ギャッ!?」」」

「おいおい、俺の分も残しておいてくれよ? "サンダーボルト"!」

――バチィッ!

「「ギャッ!?」」


 炎の勢いに圧されて背中を晒したゴブリンに、速攻で電撃を浴びせる。ゴブリンは煙を吐いて倒れ込み、そのまま白い粒子となって消えた。

 その末路を見て怯えたのか、他のゴブリン共に混乱が波及していく。柱に身を隠しきれず、無防備に姿を晒すゴブリンが増え始めた。


「こちらから丸見えだぞ、ゴブリン共が! "サンダーボルト"、"サンダーボルト"、"サンダーボルト"!」

――バチィッ! バチィッ! バチィッ!

「ギャッ!?」

「ギッ!?」

「グギャッ!?」

「きぃぃぃぃっ!!」

――ゴォォォ!

「「「ギャァァァ!?」」」


 俺が放つ電撃と、ヒナタが放つ炎の吐息。避けられぬ挟み撃ちの猛攻に、1体、また1体とゴブリンが倒れていく。

 明らかにヒナタの方が討伐数は多いのだが……どうもゴブリン共は、ヒナタに対する警戒心が薄いような気がする。俺からは身を隠そうとするクセに、ヒナタには平気で身を晒している場面が非常に多いのだ。だから……。


「きぃっ!」

――ゴォォォ!

「「「ギャァァァッ!?」」」


 いとも簡単に、炎に焼かれて倒れていくのだ。

 3体のゴブリンが火ダルマとなり、白い粒子と成り果てていく。


「ギャ!」

「「「ギャギャ!!」」」


 打つ手が無くなったゴブリン共が、どうやら覚悟を決めたようだ。数体のゴブリンが横一列に並び、棍棒を掲げて俺に突撃してくる。その後ろにも、さらに数体のゴブリンが続いていた。


「【ファイアブレスⅡ】」


 まあ、それなら俺は炎で迎撃するけどな。ヒナタを巻き込む心配が無い攻撃の中では、攻撃範囲が一番広くて魔力消費も少ない。本当に良いスキルを手に入れられたよ。


――ゴォォォォォォ!!

「「「ギャッ……!?」」」


 薙ぎ払うように炎を放つと、一瞬でゴブリン共が燃え尽きる。【ファイアブレスⅡ】の火力の高さゆえか、残った炎がそこら中でパチパチと燻り、残ったゴブリン共の動きを更に制限する。


「きぃっ!!」

――ゴォォォォ!

「「「グギッ!?」」」


 その隙を逃すヒナタではない。向こうでもヒナタが炎を撒き散らし、身動きがとれなくなったゴブリンに次々と致命打を与えていく。

 ……さて、そろそろゴブリンの数も減ってきたか? ワンパターン過ぎていい加減飽きてきたが、全員倒しきるまで油断は禁物だ。


「ヒナタ、そこからゴブリンは何体見える!?」

「きぃっ!!」


 あと5体、と元気な声が返ってきた。ここからは1体も見えないので、残った全員が柱を背にしてヒナタ側にいるのだろう。


「っ! "サンダーボルト"!」

――バチィィンッ!

「ギャッ!?」


 そう考えていると、迂闊に姿を見せたゴブリンが1体。即座に電撃を放ち、ゴブリンを倒す。これで残り4体!


「きぃっ!」

――ゴォォォォ!

「「「ギャアァァァ!?」」」


 ヒナタの炎に巻かれたゴブリン3体が、床でのたうち回る。やがて、3体ともダメージが許容量を超えたようで、白い粒子となって消え去った。


「ギ……」


 残るゴブリンは、1体のみ。そのゴブリンは、俺からもヒナタからも見える中途半端な位置に立っていた。


「きぃっ!」


 と、ヒナタが空で静止した。狙いはどうやらゴブリンのようだが、最後は直接攻撃で仕留めるつもりだろうか。


「きぃっ!!」

――ゴォォォ……


 ヒナタが緑色の光を身に纏い始めた……これは、もしかして風属性か? 多分だが、ダークネスバットの時に闇属性を身に纏ったのと似たスキルだろう。

 真っ白な見た目から光属性専門だと思っていたのだが、ヒナタは風属性も操れるのか。


「きぃ!」


 ヒナタがゴブリン目掛け、急降下してくる。慌ててゴブリンは棍棒を振り上げるが、もう遅い。


「きぃぃぃぃっっっ!!」

――ガッ!

――ボォォォン!!

「ギャァァァァァッッ!!」

――べシャッ!!


 ヒナタのタックルをまともに受けたゴブリンが、何かが爆発したような音と共に壁まで吹っ飛び……そのまま、ペシャンコに潰れた。もちろん、ゴブリンは白い粒子へと還っていく。

 これでオールクリアだ。


――ゴ……ゴ……ゴゴゴゴゴゴゴゴ!

「きぃっ!?」


 大きな揺れと音が急に始まり、驚いたヒナタが俺のところまで戻ってくる。そして、ヒナタが慌ただしく俺の左肩に止まった、その直後のことだった。


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


 フロアの中央部、少し開けた場所の床が丸く持ち上がり、円柱状の物体がせり出してくる。円柱が少しせり上がったタイミングで、円柱に開口部があるのが見えたので中を覗いてみたのだが……どうやら、円柱の中は螺旋階段になっているようだ。

 ということは、これが上り階段になるわけか。随分と凝ったギミックだな。


――ゴゴゴゴゴ……ガゴン!


 やがて円柱状の物体が天井を突き破り、下からもう1つの開口部が姿を現す。その開口部の床面と、第1階層の床面がぴったり合ったタイミングで円柱のせり上がりが止まった。


――第2課題クリアです

――クリアタイムは2分46秒でした

――規定タイムA:12分をクリアしたため、挑戦者には"閃光玉"が進呈されます

――規定タイムB:6分をクリアしたため、挑戦者には"火炎玉"が進呈されます

――規定タイムC:3分をクリアしたため、挑戦者には"電撃玉"が進呈されます

――お疲れ様でした


 怒涛のシステムアナウンスの後、石製の宝箱が目の前に3つ出てきた。システムアナウンスが言った通りであれば、この宝箱には閃光玉・火炎玉・電撃玉の3つがそれぞれ入っているのだろう。

 ……しかし、なるほどな。規定タイムは3段階まであるわけか。


「………」


 石製の宝箱なので、罠はまず無いのだが……それでも、やはり気になってしまう。ただでさえ宝箱関連で酷い目に遭ったばかりなので、なおさら警戒してしまう。

 そっと、それぞれの宝箱を開けてみる。手のひらサイズなのは全て同じで、白、赤、黄の玉が宝箱から出てきた。ほぼ間違いなく、赤いのが火炎玉で黄色いのが電撃玉だろう。

 で、どれも俺の手持ちのギフトとスキルで代替できるな。嬉しいような、嬉しくないような……せめて"水流玉"みたいな、俺たちが持っていない属性の玉が出てきたら良かったのだが。


「まあ、貰った物にいちいちケチ付けるのもなぁ……ん?」

「きぃ?」


 ふと、ヒナタと目が合う。

 ……ヒナタはフラッシュを使えないし、雷魔法も習得していない。なら火炎玉はともかくとして、閃光玉と電撃玉は有効活用できるのではなかろうか。

 今はモンスターがいないので、実行する意味は薄いが……タイミングがあれば試してみるか。


「さて、この階段を上ればいいのかな?」

「きぃっ!」


 床から現れた円柱の中に入り、螺旋階段を上って上階を目指す。次の課題がなんなのか、少しだけ楽しみに胸を膨らませながら。

 ……そういえば、なんか忘れてることがあるような気がするな。なんだろう?


「まあ、いいか」


 思い出せないということは、大したことではないということ。ならば忘れても問題あるまい。

 とりあえず、先を急ぐとしますかね。

 この本の中では、モンスターはアイテムをドロップしません。代わりに、魔石を食べた時と同じだけの経験値をヒナタが取得します。この違和感に、恩田は少しだけ引っかかったようです。

 結構な違いだと思うのですが、意外と気付かないものでしょうか?


◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
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