3−27:正直、第3層までは何も無ければサクッと流すべきだよな……
読者の皆さま、いつも本小説をお読みくださいまして、ありがとうございます。
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得るものの多かった探索から、1日が経った。
――ブゥゥゥゥン……
――カッコー、カッコー……
「………」
全身で朝日を浴びながら、ベランダの外をぼうっと眺める。京都市における主要な大通りの1つである西大路通が家から近く、今日も多くの車が行き交う音や、交差点の聞き慣れた音が聞こえてくる。
本日の曜日は、日曜日。世間の人々は明日に迫る恐怖の存在を忘れるために、全身全霊をもってお休みを謳歌していることだろうが……俺は、今日もダンジョン探索へと向かうつもりだ。
火曜日から数えて6連勤となるが、不思議とツラさは全く感じない。探索はダンジョンの謎を解き明かしているようで楽しいし、自分が強くなっていると日々実感できているのも大きいだろう。やはり精神面での充実こそが、健康的な生活への第一歩ではないかと思う今日このごろである。
……とはいえ、だ。ダンジョン探索が命懸けである事実は変わらないので、月曜日だけは何があっても定休日にしようと考えている。古ぼけきった法律でさえ、最低限4週で4日の休日を付与するよう定められているくらいだし、それには則ろう。
「……時間だな。よし、そろそろ行くか」
スマホを見ると、時刻は午前7時50分を指していた。9時前に亀岡ダンジョンへ着くのであれば、ぼちぼち出発しなければいけない。
部屋に入り、荷物をまとめる。まあ、必要な物はほとんどアイテムボックスに入れているので、リュックと貴重品だけ持ったら準備完了なんだけどな。
ちなみに、今日は完全ソロだ。昨日の帰り道で九十九さん、帯刀さんとWINEのIDを交換しつつ、口頭で確認してみたが……2人とも所用があって来れないとの返事だった。
そして、それは朱音さんも同じだった。家の用事があって探索不可、藍梨さんも同じ用事で今日は来れないらしい。陽向君とガードマンさんは休日に急遽呼び出されていたので、今日はさすがにお休みとのことだ。実に3日振りのソロ探索である。
「………」
……そういえば、ソロの日は2日とも何かが起こってるな。【空間魔法】のスキルスクロールを拾ったり、2度もラッキーバタフライを討伐したり、知らずに足を踏み入れて第4層の手荒い歓迎を受けたり……良いこともあれば悪いこともあったが、平穏無事に探索が終わった試しが無い。なにか、俺はそういう星の下に生まれてきたのだろうか?
であるならば、今日も何かが起こるかもしれない。それが良いことか悪いことかは、ともかくとしてだ。気を引き締めて、より一層安全に留意して探索するとしよう。
◇
「よし、着いたな」
徒歩で西大路駅まで行き、電車を乗り継いで馬堀駅まで移動し、更に徒歩で移動しておよそ1時間。特に何事も無く、亀岡ダンジョン前まで到着した。
ダンジョン前には、既に開場を待っている人たちが10人ほどいたが……ざっと見た感じ、昨日の金髪君や魔石泥棒共はいないようだ。まあ、それならそれで平穏に過ごせるから、別に構わないのだが。
「………」
鋼鉄製の扉を眺めながら、今日の探索プランを考える。
具体的には、第4層と第5層のどちらを探索するか、だ。ソロで第6層に進むのは無謀過ぎるので、必然的にその2択となるだろう。
……第5層の地図が現状全くできていないし、今日は第5層をじっくり探索しようかな。もちろん、ソロでも行けそうな安全な場所に限定して、だ。
そのためには第4層を突破する必要があるが、昨日編み出したコンボで倒し切れるだろう。
「お待たせしました、開場です」
鋼鉄の扉が開き、澄川さんが中から出てくる。時計の時刻は9時ちょうどを指していた。
……よし、今日もそれなりに頑張りますかね。
「さて……」
装備一式を身に着け、ダンジョンゲートをくぐる。元々着替えの早さには自信があったが、今日はダンジョン一番乗りを果たせたみたいだ。
……ただ、着替えている途中で重大な問題に気が付いた。
付与魔法が、今日は使えない。
……いや、正確には使えるものの、魔力消費量がかなり大きくなる。朱音さんがいないため、ギフトによる"2級着付け技能士"の各種恩恵を受けられないからだ。
エンチャント、クイックネス、プロテクション、パワーゲイン……これらの恩恵を十分に受けられないことに、少しだけ不安を感じている。昨日の金髪君との騒動で、プロテクションの効果がハッキリと実証された分だけ余計に、な。
「"オートセンシング・フォー"」
まあ、とりあえずはオートセンサー発動だ。見える範囲内にはブルースライムしかいないので、スルーして下り階段を目指すことにする。
……いや、それだけじゃないな。第4層手前の下り階段に到着するまで、今日は道中のモンスターをなるべく避けて進むとしよう。ホーンラビットだけは後ろから突かれては堪らないので倒すが、他のモンスターからはひたすら逃げることにする。
さて、何分で到着できるだろうか?
◇
「ゼェ、ゼェ、ゼェ……な、なんとか最後まで息がもったな、ハァ、ハァ、ハァ……」
ホーンラビットを除き、ひたすらモンスターを無視して走り続けること、約30分。ホーンラビットが第3層直線通路に居なかったので、第3層の全てをスルーして全速力で走り抜けた結果、過去最速タイムを叩き出しながら第4層手前の階段まで到着した。
道中で戦ったのはホーンラビット6体だけで、後は全無視だ。おかげで……。
「「「「キィッ! キィッ!」」」」
「「「「ギャッ! ギャッ!」」」」
俺を追いかけてきた第3層のモンスター共が、階層境界の向こうで大騒ぎだ。ざっとブラックバット15体、ゴブリン20体くらいはいるだろうか。途中で結構な数のモンスターを撒いたつもりだったが、それでもかなりの数を連れてきてしまった。
もちろん、このまま放置するつもりはない。俗に言う"トレイン行為"というやつに近い行為で、後続の探索者に迷惑をかけるわけにはいかないからだ。
「……ふぅ」
息も整ったし、早速始めるとしますかね。
とはいえ、この状況……階層境界の検証もせずにモンスターを殲滅してしまっては、非常にもったいない。
「"フラッシュ"」
なので、まずはフラッシュを使い、階層境界の向こうのモンスターに効くのかを試してみる。
「「「「キィィッ!?」」」」
「「「「ギャッ!?」」」」
強烈な閃光を浴びて、モンスター共の悲鳴が聞こえた……が、直後に何事もなかったかのようにまた騒ぎ出す。
目を開けて確認しても、普通にこちらを向いてモンスター共が騒いでいた。やはりと言うべきか、補助魔法も階層を跨いでは効果が無いようだ。
ならば、次の検証だ。実は階段を下りる直前に、"ライトニングトラップ"という雷属性の設置型魔法を仕掛けておいた。これを遠隔で起動させ、階層境界の向こう側にいるモンスターにダメージを与えられるか試してみる。
「"ライトニングトラップ・アクティベート"」
何段か階段を下りた後、第3層側の雷撃トラップを遠隔操作で起動させる。果たして、結果は……。
――ゴロゴロ!
――ピシャァァン!!
「「「「キッ!?」」」」
「「「「ギャッ!?」」」」
階段を中心に、半径7メートルくらいの範囲内に雷撃が降り注ぐ。雷撃は階段内にも侵入してきたが、俺は退避していたので当たることはなかった。
一方で、雷撃を浴びたモンスター共がダメージを受け、次々と魔石に変わっていく。どうやら、このパターンなら階層を跨いでも効果があるようだ。起動した時は第4層にいても、魔法自体は第3層にいる時に設置したからだろうか。
「「キッ……キィ……」」
「「ギャッ……ギャッ……」」
階段を上り、戦果を確認する。ライトニングトラップ1回で全てのモンスターを仕留められたわけではなかったが、残ったモンスターは全員が虫の息だった。
「悪く思うなよ、"ライトショットガン"」
「「キッ……」」
「「ギャッ……」」
「よし、"アイテムボックス・収納"」
光の散弾で全員にトドメを刺し、ドロップアイテムを全てアイテムボックスに放り込む。特に数を数えるつもりはないが、魔石だけで4000円くらいにはなっただろう。
「………」
討ち漏らしは、無し。集まってきたモンスターは一網打尽にできたようだ……!?
「新手か!?」
オートセンシングがモンスターらしき影を検知し、通路の少し奥の天井付近に顔を向ける。
「キィ」
「………」
天井からぶら下がるブラックバットと、バッチリ目が合う。心なしか、そのブラックバットがこちらを睨んできているような……そんな気がしたので、こちらも負けじと睨み返す。
数十秒間、たっぷりと睨み合った後……ブラックバットはきびすを返し、通路の奥へと飛んで消えていった。
「………」
……なんなんだ、あのブラックバットは。挙動が明らかにおかしかったが、果たして追うべきか、無視してこのまま先に進むべきか。
いや、本来は追いかけるべきなんだろう。だが、追いかけても決してヤツを見つけられないような……なんとなくだが、そんな気がした。
「……行くか」
気にはなるが、ここは無視して先に進むとしよう。
さて、まずは第4層の突破からか。フラッシュからのライトニング・ボルテクス、今回もこのコンボを試してみるか。
◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇
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