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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く

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58/215

3−21:忘れちゃいないかい、ここはダンジョンの中だよ?


 ☆


(前略)


・ブルージェリーの魔石×8


(中略)


・スキルスクロール【水中呼吸】×1


(後略)


 ☆



 ブルージェリー……ジェリーフィッシュという意味なら、やはりクラゲか? 光を半透過半反射するなら、多分そうなんだろう。

 ただ、クラゲって淡水にも居るものなのか? 仮にいたとして、これだけ流れが激しい所に棲めるのか? 急流をものともせずに漂っていたし、生態があまりに謎すぎる。

 ……ダンジョンって、本当に不思議な場所だよな。


「ねえ恩田さん、アイテムボックス、なんて書いてあったの?」

「ん? ああ、ブルージェリーの魔石だってさ。クラゲタイプのモンスターかな?」

「クラゲ……うわあ、なんか毒とか持ってそうね」

「確かにな。今後、川はなるべく避けていこう。入らざるを得ない時は要注意だな」


 ブルージェリーは半透明で見分けにくいし、念のため川には足を踏み入れない方がいいな。被害が出る前に気付けて良かったよ。


 ……さて、と。そろそろ本題に入るとしますかね。


「そういえば、スキルスクロールも拾った。【水中呼吸】のスキルだってさ」

「「「!?!?」」」


 川に流されそうになっていたドロップアイテムは、どうやらスキルスクロールだったようだ。よく見ていなかったが、確かに茶色っぽい色をしていた気がする。


「"アイテムボックス・取出"」


 【水中呼吸】のスキルスクロールを取り出し、右手に持つ。システムアナウンスらしき声が、いつもの通りに頭に響くが……。


---スキル【水中呼吸】を覚えられます

---スキルスクロールを使用しますか?


 【チャージ】を手にした時のような前置きが、この【水中呼吸】には無い。スキルを覚えられます、使用しますか、というシンプルな問い掛けのみだ。つまり、これは……。


「このスキルスクロールは確率ドロップだな。さっきのクラゲ、結構良いものを落とすみたいだ」


 今は調べられないが、売ればそれなりのお値段になるだろう。確率ドロップなら7桁は行かないだろうが、人気が高ければ6桁後半はかたいだろうな。


「そういえば、聞いたことがありますね。世の中には"水中型ダンジョン"と呼ばれるダンジョンがあって、そこでは【水中呼吸】のスキルスクロールがほぼ必須なのだそうです。ここからの最寄りが関西国際空港ダンジョンになるくらいには、水中型ダンジョンは更に数が少ないそうですが」

「なるほど…………ん?」


 さっき倒したブルージェリー……あの見た目で陸に上がれるとは思えないし、多分水中型モンスターだよな? で、明らかに動きは鈍そうだったから、水中版ブルースライムと考えてもいいだろう。

 そうすると、だ。


①最弱の水中型モンスターがドロップするのだから、水中型モンスター全般が【水中呼吸】のスキルスクロールをドロップする可能性があると推測

②水中型ダンジョンに入るには【水中呼吸】が必須だが、それさえ覚えていれば水中型モンスターと多く戦う機会が得られる

③ゆえに【水中呼吸】のスキルスクロールを度々入手するが、既に覚えているので売るしかない

④結果として売却数が多くなりがちで、需給バランスが乱れて値崩れを起こしやすい


 この論法が成り立つのではないだろうか? 水中型ダンジョンを進むのに【水中呼吸】のスキルが必須で、しかしそれは水中型モンスターを倒さなければ入手できない、というジレンマはあるものの……それさえ乗り越えてしまえば、【水中呼吸】のスキルスクロールは逆に余り物となる。


 ①の仮定が成り立たなければ②〜④も成り立たなくなるが、少なくともブルージェリーが【水中呼吸】を確率ドロップすることは分かった。討伐を重ねればまた入手できるだろう。それなら今使っても、さして変わらないのではないだろうか。


「使うか」


 水中型ダンジョンに潜る時が、いつかくるかもしれないからな。


「恩田さん。もしかしたら、ですが……売ってもあまり高くなさそう、という結論になられたのでは?」

「お、帯刀さんもですか?」

「はい。ブルージェリー以外のモンスターのドロップ次第ですが、それでも余りますよね?」


 付け加えられた一言で、帯刀さんが俺と全く同じ流れを想像していたことが分かった。

 さて、そうなるとこれを誰が使うか、なのだが……。


「……決めました。これは帯刀さんが使ってください」

「えっ? わ、私ですか?」

「はい」


 朱音さんには【チャージ】を譲ったばかりだし、九十九さんはそもそもギフト(【焔の魔女】)が水中ダンジョンに向いてなさすぎる。俺は俺で、【資格マスター】にこんな資格がある。



 ☆


資格名:潜水士

効果:水属性魔法を使用可能 水中呼吸可能 泳力上昇


 ☆



 【水中呼吸】の効果を含み、更には水属性魔法使用可能と泳力上昇の効果も付くため、完全な上位互換になる。

 ちなみに、前に調べたことがあったのだが、潜水士の合格率は70〜80%とかなり高かった。実技が無いタイプの試験なので、勉強さえきちんとすればそう難しい資格ではないだろう。

 ……さすがに、勉強無しで合格できるほど甘くも無いだろうけどな。合格率7割ということは、3割の人は落ちているということなのだから。




「私も、せっちゃんが適役だと思うのです!」

「私は別のスキルスクロールを貰ってるから、これ以上は貰い過ぎになってしまうわ。だから、帯刀さんが使ってちょうだい」


 朱音さんと九十九さんの同意も得られた。あとは帯刀さん次第だ。

 スキルスクロールを手に帯刀さんをじっと見ていると、根負けしたように小さく息をついた。


「……分かりました。謹んでお受け取りいたします」


 帯刀さんがスキルスクロールを受け取る。頭に響いたであろうシステムアナウンスに少し驚きつつ、帯刀さんが羊皮紙を開こうと……ん?


「帯刀さん、"使います"と口に出すか、装備珠と同じように念じたらいけますよ」

「えっ、そ、そうなんですか? 知りませんでした……」


 帯刀さん、スキルスクロールを使うのは初めてか。第4層まででスキルスクロールを手に入れる機会はほとんど無かっただろうし、さもありなんといったところか。

 ……今思い返せば、俺のビギナーズラックは中々に凄まじかったらしい。初手【空間魔法】なんて、一生分のダンジョン運を使い切ったのではないだろうか。


「………」


 スキルスクロールを両手で包み込み、帯刀さんが目を閉じる。どうやら彼女は念じることにしたらしい。

 しばらくすると、スキルスクロールが解けて光に姿を変える。その光が、帯刀さんの体へ吸い込まれていった。


「……特に変化は感じないのですが、これで大丈夫なのでしょうか?」

「ええ、もう使えるようになっていると思いますよ。試すのはちょっと危険ですが……」


 試してみたい気持ちは察するものの、今は少し危険だ。ブルージェリーが水中にいるかもしれないし、もしかしたら他のモンスターも……。


---ガサリ……

「あっち、モンスターだ!」

「「「!!!」」」


 草を踏む音が聞こえたのと、オートセンシングがモンスターの存在を検知したのはほぼ同時だった。モンスターが現れた方角を指差し、即座に全員へ注意を促す。

 位置関係的には、ちょうど川を背にして戦うことになる。まさに背水の陣というやつだが、逆に言えば後ろをあまり気にしなくても良いということなので、帯刀さんも前に出て戦闘態勢を取った。


「「「グルルル……」」」


 森の深い藪を掻き分けて、灰色の狼のようなモンスターが3体現れた。大きさはいずれも中型犬くらいだろうか、生では初めて見るモンスターだ。

 ……そう、初心者御用達のあのパンフレットに、絵と一緒に名前が書いてあった。


「グレイウルフだ! ホーンラビットの強化版モンスターだぞ!」

「グルァッ!」


 俺が大声を出したと同時に、一番前にいたグレイウルフが一直線に飛び掛かってきた。ホーンラビットのような溜め動作も無く、0から一気にトップスピードへと加速して襲い掛かってくる。

 狙いは……帯刀さんか!


「ガァァッ!」

「帯刀さん!」

「……ふっ!」


---ガキィン!

---ピキキキ……


「ギャウ!?」


 グレイウルフの飛び掛かり噛みつき攻撃を、帯刀さんは冷静に盾で受け止める。その直後、なんと盾の表面が凍りだした。

 大口を開けて盾に食らいついていたグレイウルフは、そのまま盾と共に凍りついていく。


 ……やがて、オオカミの全身氷像が1体出来上がった。氷像は盾の表面の氷ごと剥がれて、地面へと落ちていき……。


---ガシャァン!


 落下の衝撃で、粉々に砕け散る。後には魔石と、装飾珠がドロップした。


「"アイスシールド"の魔法です。直接攻撃を盾で受け止めた時に、カウンターで相手に氷属性のダメージを与えます」

「すごいな……」


 ただ敵の攻撃を受け止めるだけでなく、カウンターでダメージを与えていく攻防一体型の魔法か。しかも、グレイウルフを一撃で倒すくらいの威力はあるようだ。


「ギャウ!」


 と、次のグレイウルフが飛び掛かってくる。今度の狙いは朱音さんのようで、まっすぐそちらに向かっていった。

 ……同時に来られるとかなり厄介なのだが、なぜかグレイウルフは1体ずつ攻撃を仕掛けてくる。集団で現れた割に、群れで戦うことがあまり得意ではないのだろうか?


「……はっ!」


 案の定、準備万端待ち構えていた朱音さんに攻撃を避けられ、カウンターで横に一刀両断されている。ここで残った2体が同時にかかっていれば、少しは手こずったかもしれないのに。

 ……見た目は全く違うが、ホーンラビットの純粋な強化版、といった感じかな。良くも悪くもな。


「"ライトニング"」


---ドン!


「ギャッ!?」


 そろそろ飛びかかってくるかなと思い、最後の1体にライトニングを叩き込む。やはり突撃態勢を整えていたようで、避ける間もなく最後のグレイウルフに雷が直撃。そのまま魔石へと姿を変えた。


「……"アイテムボックス・収納"」


 後続のモンスターが来ないことを確認して、アイテムボックスにドロップ品を収める。

 第5層で最初の戦いは、こちら側の圧勝に終わった。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
[一言] ついでに武器も魔法も使いにくいので 不人気ダンジョンとなり、 よりあまりそう。 人気ダンジョンだけど階層の一部で必須という ダンジョンあれば、需要ありますが。
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