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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く

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3−10:ダンジョン第1の壁、再び


 九十九さんをパーティに加えた俺たちは、まっすぐ第3層を目指して突き進む。総勢11名、うち第4層経験者3名を含む探索者集団にとって、第2層で出てくる程度のモンスターなど鎧袖一触。出てきたそばから打ち倒していった。

 ちなみに、道中にて九十九さん関連でこんな場面があった。


「恩田さん、恩田さん」

「なんですか、九十九さん?」

「次のモンスターは、私に任せて欲しいのです」

「そうですね……ええ、ぜひお願いします」


 一度、九十九さんの力を見せてもらおう……そんな軽い気持ちで九十九さんの提案を了承したのだが、返ってきたのはあまりに鮮烈な一発回答だった。


「ギッ!? ギィィィィィ!」

「出たわ、ホーンラビットよ!」

「よし、九十九さんお願いしま---」

「"フレイムピラー"なのです!」

---ゴオオッ!!

「ッ……」


 ホーンラビットが出現したので九十九さんに対処をお願いしようとしたら、詠唱と共に天井まで届くほどの特大火柱が一瞬でお目見えした。俺の魔法攻撃は総じて威力が低めなので、モンスターの断末魔が聞こえることが多いのだが……九十九さんの場合は威力が高すぎて、モンスターは声すらあげられなかった。オーバーキルにもほどがある。

 魔石がそのまま燃料にならないか心配になるほどの大火力だったが、魔石は傷1つ無い状態で回収できた。もしかしたらドロップ後◯◯秒は外部からの影響を受けないとか、そういうダンジョンパワー的なもので守られているのかもしれないな。


 そういうことがありながらも、俺たちは無傷で第3層への階段前にたどり着いた。ここで一旦、小休止を挟むことにする。

 ……第3層に入る前に、確認しなければならないこともあるからな。


「さて、九十九さんと朱音さんは大丈夫として……藍梨さん、陽向君。第3層からは、新たにゴブリンが出現します」

「ああ、把握している。人型をしたモンスターなのだろう?」

「人の形をしたモンスターを倒すことへの忌避感、ですか……ダンジョン第1の壁、と呼ばれているそうですね」

「ええ。迷宮探索開発機構の方によれば、ここでゴブリンを倒せず脱落する人が意外と多いそうです」


 やはりと言うべきか、藍梨さんと陽向君は不安を露わにしている……が、個人的に心配なのは陽向君の方だ。

 藍梨さんはゴーレムを操って戦わせるので、自らの手で仕留めたという感覚が多少は薄くなる。一方で、陽向君は弓で射るにしろ短剣で斬りつけるにせよ、自らの手で倒したという感覚が残りやすい。こういう場合に忌避感が強く出てしまいがちなのだ。

 だが、俺にできることはほとんど無い。自ら壁を乗り越えていくしかないのだ。そこは、2人を信じるとしよう。


「念のため確認ですが、九十九さんは問題ないですね?」

「です。人型でも所詮はモンスター、淡々と燃やすだけなのです」


 さすがは第4層経験者、既に壁は乗り越えた後らしい。あっけらかんと言い放つその姿に、緊張や気負いなど微塵も感じられない。


「朱音さんは?」

「正直、最初は『どうかな? いけるかな?』って不安だったけど。ゴブリンの顔を見た瞬間に『あ、これならヤレるわ』と思ったわね」

「こらこら、うら若き乙女がそういうことを言うんじゃない」


 こちらはこちらで容赦が無い。つまりそれ、可愛くないやつは◯ねってことだろ? ゴブリンもビックリだわ、そんな理由で壁を乗り越えてくるなんてさ。


「ふむ、やってみなければ分からないか。やれるだけのことはやってみよう」

「僕も、頑張ります」

「……我々への心配はご無用です」


 藍梨さんと陽向君はさすがに不安そうだが、瀧野瀬さん含むガードマンの人たちはさすがの自然体だ。詮索するつもりは一切無いが、おそらくはそういう経験が過去にあったのだろうな……。


 2人の意思を再確認し、第3層への階段を降りていく。ちなみに、階段を降りるゴーレムの足取りは第2層の時よりも遥かに安定していた。



 ◇



 第3層へと無事降り立つ。いつもの通り、階段前には誰もいなかった。


「さて、ゴブリンは……と、いたな」


 少し移動して、最初の曲がり角の向こうを覗く。おあつらえ向きに、ゴブリン3体組がそこにたむろしているのが見えた。

 ちなみに、他のモンスターはいない。別の探索者が通った後なのだろうか、明らかにモンスターの密度が落ちていた。


「……まずは私がやろう」


 そう言って、藍梨さんが重装ゴーレム2体をゴブリンたちにけしかける。

 ゴーレムの接近に気付いたゴブリン3体が、汚らしい嗤い声を上げてゴーレムに迫ってきた。


「「………」」

「ギャッ!?」


 と、ゴーレムが1体のゴブリンの棍棒を槍で弾き飛ばす。すぐにもう1体のゴーレムがゴブリンを捕まえ、羽交い締めにした。その動きはとても滑らかで、藍梨さんがゴーレム2体の操作にだいぶ慣れてきたことが一目で分かった。


「「ギャッ! ギャッ!」」


 仲間が捕まって慌てたのか、残ったゴブリン2体がゴーレムに向けて棍棒を何度も叩き付ける……が、表面が僅かに凹むだけでまるで堪えていないようだ。

 そうして捕まったゴブリンに、もう1体のゴーレムから槍の一撃……ではなく、なんとシールドバッシュが飛んできた。

 フルスイングされた青銅製の大盾がゴブリンの顔面にクリーンヒットし、その醜い顔を大きくひしゃげさせる。それが致命傷となったようで、ゴブリンは魔石に変化して地面へ落ちた。


「……ふむ、悪くないな。それに、ゴブリンを倒したが思ったよりも平気だったな。朱音の言う通りだったよ」


 そう、藍梨さんが呟く。どうやら藍梨さんは、第1の壁を問題無く突破できそうだ。


 視線の先では、手持ち無沙汰になったゴーレムがすぐに次のゴブリンを捕まえて羽交い締めにしている。もう1体のゴーレムがすぐに接近し、今度は槍でゴブリンの喉元を貫き倒した。

 そうして、残りのゴブリンは1体になった。


「……ふむ」


 藍梨さんが小さく頷いたかと思うと、ゴーレムが最後のゴブリンから棍棒を奪い取り、同じように羽交い締めにする。

 そうして拘束され、身動きがとれなくなったゴブリンをなんとこちらに連れてくるではないか。いつの間にか2体のゴーレムでガッチリとゴブリンを掴んでいるので、逃げられる心配は無さそうだが……。


「え? 藍梨さん、どうしたんですか?」

「まあ、見ててくれ。ガードマン部隊は私に付いてきてくれ」

「……かしこまりました」


 そう言って、藍梨さんは曲がり角を越えてゴブリンに近付いていく。俺もオートセンシングで警戒しているが、他のモンスターは近くにはいないようだ。


「ギャァッ! ギャァッ!」

「………」


 必死に威嚇してくるゴブリンを尻目に、藍梨さんは左手の指揮棒をジッと見つめている。

 ……そうして、1分ほどが経っただろうか。何やら覚悟が決まったのか、藍梨さんの表情がキッと引き締まる。


「……ふんっ」


 左手に持った指揮棒を引くと、なんとゴブリンのお腹目がけて思い切り突き刺した。指揮棒の先は意外と鋭いのか、半分くらいの深さまでゴブリンに刺さる。


「ギャッ!?」

「ふんっ」

「ギャフッ!?」

「ふんっ!」

「グギィッ!?」


 続けて、2回、3回、4回と刺突を繰り出す。全ての攻撃が指揮棒の半分くらいまで突き刺さり、ゴブリンの悲痛な叫びが辺りに響き渡る。

 その声に引き寄せられてきたホーンラビットを、ガードマンの人たちが危なげ無く処理する。そうしてガードマンの人たちが戦っている間も、藍梨さんはゴブリンに刺突を繰り出し続けた。


 そうして攻撃すること、13回目。そこでダメージが許容値を超えたのか、ゴブリンが魔石となって消えた。

 指揮棒を軽く振った藍梨さんが、ガードマンの人たちを引き連れてこちらに戻ってくる。


「正直、あまり気分の良いものではないな。

 ……だが、やらなければやられる。そのことをしっかりと肝に銘じるため、あえて私自ら手を下した」


 藍梨さん、すごいな。自ら指揮棒を振るって戦うことなどまず無いだろうに、それでも自分の手でゴブリンを倒すことにしたのか。

 第1の壁を見事乗り越えた藍梨さんが、陽向君の右肩にポンと手を置く。


「さあ、陽向。次は陽向の番だ」

「……はい!」


 陽向君の顔から、すっかり迷いが消えていた。憧れの人の前で、情けない姿を見せたくないのだろう。

 短剣に手を掛けた陽向君の横を抜け、藍梨さんが俺の方に近付いてくる。


「そういえば、魔石の他にこんなものも残ったのだが」


 そう言った藍梨さんの手には、魔石4つの他にゴブリンの棍棒が1つ握られていた。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
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