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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第2章:朱き飃風は母を想いて舞い踊る

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30/215

2−23:激闘、第二次モンスターパレード(後編)


「「「「ギッ! ギッ!」」」」

「「「「ギャッ! ギャッ!」」」」

「「「「「「「「ギギャギャギャァァ!!」」」」」」」」


 ホーンラビットの威嚇音と、ゴブリンの汚らしい叫び声。無数の声が幾重にも折り重なり、重低音の大合唱となって階段下から響き渡ってくる。

 オートセンシングの反応から、モンスターは間違いなく150体以上いる。下手すると200体に迫るのではないだろうか、昨日よりも確実に規模が大きくなっている。

 ……これは、撤退も視野に入れて動いた方が良さそうだ。


「昨日よりも数が多いな。1.5倍くらいは居そうだ」

「す、すごい迫力ね……数体ならどうってことなかったけど、3桁集まるとこうも圧迫感があるのね」

「確かにな」


 数だけが勝敗を決めるわけではないが、少なくとも数が多い方が戦いにおいては確実に有利だ。それでいくと、この戦いは2対150……数のうえでは75倍以上の差がある。普通に考えれば勝つのは難しい。

 だが、個々の実力も地の利も俺達の方に分がある。現に昨日、俺は1人で100倍近い数の差をひっくり返したのだ。やってやれないことはない。


「……見えてきたぞ」


 やがて、遠目に霞んでいた敵影が徐々にハッキリしてくる。

 ……階段の横幅一杯まで(ひし)めきあう敵、敵、敵の群れ。白と緑がおどろおどろしく入り混じり、その光景はさながら怪物共の大行進……そう、モンスターパレードとでも呼ぶべきか。とにかくめちゃくちゃな数のモンスター達が、ゆっくりと階段を上がってくる。


「最初が肝心だぞ、朱音さん」

「え、ええ……!」


 あらかじめ仕掛けておいたトラップ地帯に、モンスター達が少しずつ近付いてくる……!


「今だ! "ルビーレーザー"!」

---ビィィィィィ!!

「「「「ギィッ!?」」」」

「「「「ギャアァァッ!?」」」」


 まずは、ルビーレーザーで敵の前衛を焼き払う。エンチャントで強化された一撃は10体以上のモンスターを一瞬で魔石に変え、同じくらいの数のモンスターを戦闘不能に陥らせる。

 その倒し切れずに残ったモンスター達が、後続の進行を邪魔していく。大群の速度が、ほんの少しだけ緩まった。


「"飛刃・風蛇"、"飛刃・双蛇"!」

---ブシャッ!!

---ブシィィィッ!!

「「「「ギィィィィッ!?」」」」

「「「「グギィィィッ!?」」」」


 続けて、朱音さんが生み出した2体の風の大蛇がモンスターに向けて飛んでいく。大蛇はモンスターを無差別に食い荒らし、敵の大群を混乱の渦中に陥れた。更に大群の歩みが遅くなっていく。

 そんな中でも、ポツポツと前に飛び出してくるモンスターはいたが……。


---バチッ!

「ギッ!?」

---バチン!

「ギャッ!?」


 仕掛けておいたパラライズトラップに引っ掛かり、全員がその動きを止めていく。それが後ろのモンスターの進路を妨げ、向きを変えたモンスターが別のトラップに引っ掛かって立ち往生し、進軍速度が更に落ちる。もはや立ち止まっているのと変わらない状況になった。

 乱戦になれば、数の少ない俺達が不利になる。いかに敵の大群を足止めし、遠距離攻撃で一方的に打ちのめせるかが勝利の鍵となる。相手側に遠距離攻撃できるモンスターがいないので、なおさらその重要性は高い。そして今のところ、その作戦は功を奏しているようだ。


---ゴロッ!

「ギィッ!?」

「"ライトショットガン・ダブル"!」

「「「「ギィィッ!?」」」」


 ちなみにこれは偶然なのだが、放置しておいたブラックバットの魔石が地味に良い仕事をしてくれている。ただでさえ階段のせいで突進力を活かせないホーンラビットが、魔石に足を取られて更に本領を発揮できないでいるのだ。ゴブリンも含めて、もはや良い的でしかない。


「"エンチャント・ウインド"!」

「ありがとう、"飛刃"!」

「「ギグッ!?」」


 隙を見計らい、エンチャントが切れた朱音さんの武器に再びエンチャントを施す。今も派手に暴れ回っている風蛇を更に追加する……ということはしないようで、朱音さんは強化された飛刃で近場の元気なゴブリン達を地道に狙い撃ちしていた。


「"ルビーレーザー"!」

---ビィィィィィ!

「「「「ギッ!?」」」」

「「「「グギャッ!?」」」」


 再び、ルビーレーザーで奥の敵を薙ぎ払う。数が減った分だけ密度も減り、さっきより少ない計15体ほどを戦闘不能に陥らせた。


「なかなか、"ライトショットガン・ダブル"! 減らねえな、"ライトニング・ハンマー"!」

---ゴロゴロゴロ!!

---ダァァァァァァァン!!!

「ギッ……!?」

「「「「「「「「ギァァァァッ!?」」」」」」」」


 光の散弾で近場の敵を牽制しつつ、一撃の威力を大きく高めた雷を距離が離れた敵陣のど真ん中に落とす。雷はホーンラビットの角に直撃し、飛雷した高圧の電撃が周りのモンスターをも焼き焦がしていく。この一発で、また15体近いモンスター達を戦闘不能に追い込んだ。

 ……雷魔法を使う時は、朱音さんに当たらないよう細心の注意を払わなければならない。魔法の発射点が俺自身になるサンダーボルト系魔法は危険なので使えず、雷撃を落とすライトニング系魔法も発射点を離さなければ槍に落ちて危険だ。無差別絨毯爆撃をかますライトニング・ボルテクスなど論外である。


「よしっ、そろそろ残り6割くらいか!?」

「ええ、確実に減ってるわ!」


 まだまだモンスターは犇めきあっているが、その密度が明らかに低くなっている。パラライズトラップの効果もあり、未だモンスターに肉薄されてはいない。

 ……だが、雷撃音を聞きつけたモンスターが第4層から増援に来るかもしれない。階段奥の様子にも注意しておこう。


「エンチャントは!?」

「まだ残ってるわ! "飛刃"!」

「ガフッ!?」

「了解! "ライトニング・ハンマー"!」

---ドォォォォォォォン!!!

「「「「ギィィッ!?」」」」

「「「「ガァァッ!?」」」」


 どれだけ切迫した状況でも、頭だけは冷静に。近場の敵を朱音さんに任せて、俺は遠くの敵を叩くことに専念する。


---バチン!

「ガッ!?」

「"飛刃・風蛇"!」

---ビュオッ!

---ブシュウッ!

「ギァッ!?」


 と、朱音さんが風の大蛇を飛ばす。先に放っていた双蛇の姿は既に無く、朱音さんの武器からも風のエンチャントが消えていた。

 ……うーん、エンチャントを乗せた攻撃は確かに強力なんだが。何度もエンチャントするのはちと手間だな。


「エンチャント切れたわ!」

「了解! "エンチャント・ウインド・ダブル"!」

「ありがとう!」


 付与頻度を下げるため、倍量のエンチャントを一度に付与できる魔法を使う。元の魔法と比べて2.1倍くらい魔力を消費したが、手間が減ったことを考えればトントンといったところか。

 ……結構魔法を使ったな、残り魔力は7割くらいか。モンスターの残りは半分ほどだから、4割くらいは魔力が残りそうだ。


「朱音さん、あと一息だ! いくぞ、"ライトショットガン・ダブル"!」

「ええ! "飛刃・双蛇"、"飛刃・三蛇"!」

「「「「ギガァッ!?」」」」

---ブシィッ!

---シャアァァァ!

「ギャッ!?」「ギィッ!?」


 朱音さんが蛇を3体繰り出し、スパートをかける。俺も負けてられないな!



 ◇



「これで最後だ! "ライトニング・ハンマー"!」

---ダァァァァァン!

「「「ギァァァァッ!?」」」


 最後に残ったゴブリン3体を、天井から降り注ぐ雷撃で撃ち抜く。ゴブリンは断末魔の叫びを上げながら、魔石へと変化していった。

 辺りを見回せば、床を埋め尽くす魔石、魔石、装備珠……モンスターの姿は、もうどこにも無かった。オートセンシングにも反応は無い。


「……はぁ〜〜〜、勝ったな」

「はぁ、はぁ、はぁ……な、なんとか勝てたわね」


 激闘を制し、残心を解いた俺達は2人して床にペタンと座り込む。朱音さんの方は息が上がっているが、基本武技でもあれだけ放てば相当に疲れるらしい。


「"アイテムボックス・収納"、"アイテムボックス・収納"、"アイテムボックス・収納"、"アイテムボックス・収納"……うわぁ、まだ残ってるよ」


 ドロップアイテムをアイテムボックスに収納していくが、4回目の収納でもまだ魔石や装備珠が床に散らばっている。昨日より多くのモンスターを倒したことは明らかだった。

 5回目の収納でもまだ少しだけドロップアイテムが残り、6回目で全てアイテムボックスに収まった。これ、一覧見るのちょっと怖いな……。


「………」


 ふと、階段の下を見る。あれだけモンスターを倒したのだから、今の第4層にはほとんどモンスターがいないはず。俺の予想では第4層のモンスターポップ率は高いはずなので、探索するなら今しかない。


「"ヒール"」

「えっ……?」


 朱音さんに回復魔法をかける。実は傷を癒やすだけでなく、疲労を取るのにも使える魔法だったりするのだ。


「疲れは取れたかい?」

「え、ええ、だいぶ良くなったけど……急にどうしたの?」

「第4層の探索、今しかチャンスは無いと思ってな」

「あ〜……」


 階段の下を見て、納得したように朱音さんが小さく頷く。「確かに……」と小さな声で独りごちていたので、朱音さんも前向きに考えてくれているようだ。


「疲れてるかもだけど、ちょっと見に行こうか。危なくなったらすぐ第3層に戻ろう」

「ええ」

「さてと。さあ、手を」

「………はい」


 先に立ち上がり、朱音さんの右手を取ってそっと引っ張り上げる。そうしてからゆっくりと、慎重に。階段を1段ずつ、2人で並んで降りていく。

 そして、階段を降り切った。


「……うわぁ」

「……すごい」



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
【一言】 恩田さんがさり気なく紳士さを出してる。 好感度ポイントGET!? 〉先に立ち上がり、朱音さんの右手を取ってそっと引っ張り上げる。そうしてからゆっくりと、慎重に。階段を1段ずつ、2人で並んで降…
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