4−100:魔物が棲む城
「……盾、展開」
――ブォン
穴を通り切ってすぐ、盾から防壁を展開して備える。今も【風魔法】とオートセンシングで安全確認はしているが、万が一に備えておいて損はないだろう。
そうして、辺りを見回す。城門の向こう側には、荒れ果てた前庭が広がっていた。異世界ものに出てくる大貴族の邸宅に、こんな感じの豪華絢爛さと美しさを兼ね備えた庭がよく出てくるが……それも手入れが為されなければ、こうなってしまうわけか。
花壇は石壁ごと崩れ落ち、土を辺りにぶち撒けている。生け垣は無造作に伸び放題となっており、地面には色とりどりの巨大な花が咲き乱れ、石畳になっていない場所をびっしりと埋め尽くしていた。
……そして、城門をくぐった辺りから嫌な予感を強く覚えるようになった。方向としては城のかなり上の方で、俺よりやや格上の何かが居るように感じる。しかし、さすがに真紅竜や不死者ノ王ほどの強さではないようだ。
やっぱりコレ、なんかスキル生えてきてるだろ。スキル自体は別にあって困るものではないが、どんなスキルか分からないのでは俺も落ち着かないし、また帰ってから自分に【鑑定】が使えないか試してみるとしよう。
「……きぃ」
「……ぐぁぅ」
ヒナタとフェルも、中に入った途端に辺りを警戒し始めた。
……ヒナタはともかく、フェルがこういう挙動をするのは珍しいな。それこそ不死者ノ王と遭遇した時くらいじゃないか? 他のモンスターなんて大概格下だろうし、フェルはむしろ威圧感で蹴散らす側だったから……相当手強い敵でなければ、こうはならないはず。
これは、警戒度を更に一段引き上げた方がいいな。
「よいしょっと……あら、どうしたの? やけにキョロキョロしてるけど」
「ぱぁ……」
「うんしょっと……うわぁ、ボロボロのお庭なのです、でもすっごく広いのです」
「……なるほど、中はこういう風になっているのですね」
後から追いかけてきた4人も、無事に門をくぐり抜ける。そうして俺に倣い、周囲を警戒し始めた。
「城の上の方から、嫌な気配を強く感じる。あと、その辺の花からもな……【鑑定】」
城から感じる強い気配に紛れて、花からも嫌な気配を感じていた。こんな場所にただの花が無造作に咲いてるわけがないし、花弁もやたらと大きい。コイツは多分モンスターだろう。
……そう思って【鑑定】してみたら、案の定だった。
☆
名前:アルラウネ (紫花)
種類:モンスター
スキル:【毒攻撃】
属性耐性:水 (半減) 光 (半減)
状態異常耐性:毒
弱点:火 (3倍)
説明:植物に強い魔力が宿り、意思を持って動き出したもの。頭に咲いた花の色に応じて、対応する状態異常に陥る花粉を飛ばしてくる。紫花なら、毒花粉を飛ばしてくる。
直接攻撃はしてこないうえ、ステータス面もかなり貧弱。そのため、迂闊に近付かなければ簡単に倒せる。火属性攻撃が非常に有効。
☆
たまたま花が紫色のヤツに【鑑定】を掛けたが、他にも黄色・青色・白色・黒色の花弁を持った花がある。おそらく、この花全てがモンスターなのだろう。
「なるほど、コイツがアルラウネか。花の色によって、使ってくる状態異常攻撃が変わるらしいぞ。紫花は毒を使ってくるから、近付くのは危険だな」
「そうなのですね……」」
トレントやドリアードに並ぶ、植物系モンスターの定番だな。もっとも【鑑定】の情報が全て開示されているので、アルラウネはそこまで強いモンスターではないらしい。"ステータス面もかなり貧弱"なんてハッキリ書かれてるし、状態異常攻撃に気を付ければ大丈夫だろう。
……ちなみに、アルラウネの説明文にもリビングアーマーと同じく、"〜〜に強い魔力が宿り〜〜"という文言が含まれている。やはりここは、魔力が特段強い場所になってるみたいだな。
「ぱぁ!」
朱音さんの右肩に乗るアキの方を見ると、何やら機嫌良さげに踊っている。アキも状態異常攻撃を扱う植物系モンスターだから、同族に会えて嬉しいのかもしれない。
……まあ、アキの方が遥かに高位のモンスターっぽいけどな。
ちなみに、アルラウネをよく見ると花弁の根元付近に小さな目がある。それらが一斉にアキの方を見ていて、なかなか怖ろしい光景だった。
「アルラウネって強いのかしら?」
「いや、【鑑定】によるとステータス面では貧弱らしい。弱点は火属性で、3倍のダメージが通るそうだ」
「火に弱いのは予想通りですが、随分数が多いですね……庭の奥に進むのは、かなり骨が折れそうです」
いくら弱いモンスターと言えど、数が数だ。城門から城の入り口までは、まっすぐ石畳が敷き詰められているが……そこから1歩でも外れてしまえば、アルラウネだらけの危険地帯となってしまう。
ファイアブレスや【火魔法】でアルラウネを焼き払えば、先に進めなくもなさそうだが……。
「こちらの探索は後回しにしようか」
「……そうね、そうしましょう。またあとで来ましょうか、アキ」
「ぱぁ!」
アキに似たモンスターを焼き払うというのは、精神衛生上あまりよろしくない。ここはまず、城の中から探索していこう。
……朱音さんとアキの反応を見る限り、アルラウネ軍団は時間さえ掛ければ、アキが何とかしてくれそうな気がする。ここは、アキのカリスマ性に期待しておこう。
◇
リビングアーマーに行く手を遮られたり、アルラウネに気を取られたりと色々あったが……ようやく俺たちは、当初の目的地である古城の中へと足を踏み入れることができた。
……城の入り口にあった扉にも、城門と同じような穴が幾つも開いていた。よく見ると壁にも開いていたので、これはもう確定と言っていいだろう。
高火力を一点に集中させ、固い防御さえ貫く攻撃を放つモンスターが中に潜んでいる。穴の数はそこまで多くなかったので、大群ではなさそうなことだけが唯一の救いか。
「……居るな、モンスターが」
荘厳なエントランスホールが、俺たちを出迎える。ウェルカムモンスターが出てこないか警戒していたが、やはり何箇所かから怪しい気配が漂ってきている。
……特に、三叉の槍を持った双翼の人型悪魔のような石像が2体立っていて、そこから強い気配が漂ってきている。ただ、城門をくぐった時に感じた、あの嫌な予感の大本ではなさそうだ。
「【鑑定】」
怪しいと思ったら、まずは【鑑定】だ。まるで情報の無い状態から、最大魔力量の1割程度の消費で敵の情報を得られるのだから活用しない手は無い。残魔力量は7割を切りそうだが、自然回復速度が早いのでそこまで気にしなくていいのもありがたいな。
――【鑑定】のスキルレベルが2に上がりました
「……ん?」
☆
名前:ガーゴイル
種類:モンスター
スキル: (スキルレベル4が必要)
属性耐性: (スキルレベル2:開示済) 火 (無効) 闇 (無効)
状態異常耐性: (スキルレベル8が必要)
弱点: (スキルレベル3が必要)
説明:石像に強い魔力が宿り、意思を持って動き出したもの。体が石でできているため守りが固く、打撃攻撃以外の物理攻撃はまともに通らない。その代わりに足が遅く、動作も比較的緩慢である。
(スキルレベル4が必要)
(スキルレベル8が必要)
☆
やっぱり、石像はモンスターだった。しかもガーゴイルという、これまたRPGゲームでは定番中の定番モンスターだ。
そして、情報開示に要求されるレベルが全体的に高い。ニードルカクタスより高く、オノドリムよりは低いほど。ということは、ガーゴイルの強さはニードルカクタスを超えるが、オノドリムには多少届かないくらいのものを持っているのだろう……ボスモンスターが比較対象に出てきている時点で、ちょっとおかしいんだけどな。
「……属性耐性欄が開示されてるな。スキルレベルが2に上がったってアナウンスがあった気がしたが、どうやら本当だったみたいだ」
そして、属性耐性欄の表記が変わっている。本来は"スキルレベル◯が必要"とだけ表記されている場所に"スキルレベル2:開示済"と表記され、属性耐性が表示されている。ガーゴイルは火属性と闇属性が一切効かず、レッドキャップを強化したような属性耐性を持っているようだ。
……ということは、ガーゴイルも氷属性が弱点だったりするのかもな。さすがに弱点欄はスキルレベルが足りないので、まだ開示されていないが……。
「あの悪魔みたいな石像は、ガーゴイルというモンスターらしい。ニードルカクタスより強いモンスターで、火と闇が効かないそうだ。弱点までは分からなかったが、おそらく水と氷だと俺はみている」
「ガーゴイルか〜、また定番のモンスターが出てきたわね」
「氷属性が効くのでしたら、私もダメージ源として貢献できそうです」
「……うう、今回は私の出番はなさそうなのです……」
「………」
……やっぱりこれ、九十九さんにも何かしら【火魔法】以外の攻撃方法があった方がいいかもしれないな。ただ、九十九さんの場合は装備やギフトの影響で、火属性以外の攻撃は威力が減衰してしまうそうだし……ん?
これ、"火属性の攻撃"か"火属性の魔法"かで事情が変わってきそうだな。例えば水属性の物理攻撃なら減衰されないとか、そういう可能性もありそうだ。
「………」
もっとも、具体的にどうしたらいいのか思い付かないのが、俺の残念なところだが。もし何か良いアイデアが浮かんだら、九十九さんと相談してみよう。
「……よし、みんな準備はいいな? では、いくぞ」
「「「了解」」」
「きぃっ」
「ぐぁぅっ」
「ぱぁっ」
城に入って最初の敵は、ガーゴイルとなった。さて、コイツはどんな攻撃を繰り出してくるのだろうか。
◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇
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