4−84:VSオノドリム、横浜ダンジョンにて・後編
☆
名前:オノドリム
種類:ボスモンスター (第20層)
スキル: (スキルレベル5が必要)
属性耐性: (スキルレベル2が必要)
状態異常耐性: (スキルレベル10が必要)
弱点: (スキルレベル3が必要)
説明:巨大な木の姿をした、第20層のボスモンスター。樹齢数千年の老木に邪悪な精霊が宿り、意思を得て生まれたものだと言われている。
その場から一切動くことができない。初手の種子乱舞攻撃が非常に厄介。また時折モンスターを呼び出したり、毒・麻痺・睡眠の木の実を飛ばして状態異常に陥らせてくる。近接戦闘を挑む者には棘の蔓にて迎撃するが、本質的に近接戦闘を苦手とする。
(スキルレベル5が必要)
☆
「………」
さっさと使っといた方がよかったじゃん、【鑑定】。危うくチームメンバーを無駄な危険に晒すところだった、これじゃあリーダー失格だな。
未知の強敵には【鑑定】が必須、これではっきりと分かったよ。残念ながら情報がだいぶ穴抜け状態で、高いスキルレベルが無いと開示されない情報も多いみたいだが……それを差し引いても、本当に有用だわこのスキル。
「コイツは麻痺と睡眠の状態異常になる木の実も投げつけてくるぞ! 色が変な木の実を投げてきたら要注意だ! あと、接近戦は苦手らしい!」
「「「「!!」」」」
『グヌ、キサマ【カンテイ】モチカ!』
さすがにオノドリムにも察知されたようだが、それならそれで好都合だ。俺にヘイトが集まっても、その分他の人たちが動ける隙が増えるだけだからな。
『ダガ、ワカッテイテモ、ワレニ、チカヅケルカナ?』
――ガサガサガサッ!
オノドリムが体を激しく揺らし、紫色・黄色・青色の3色の木の実を大量に飛ばしてくる。数に大きな偏りは無く、3色ともほぼ同じくらいの数に見える。
……アキの状態異常の霧と同じ配色なら、あれらはおそらく。
「黄色が麻痺の実、青色が睡眠の実か! 全員、オノドリムに近付くな!」
「霧を吹き飛ばす準備はできています!」
「ひゅいっ!」
三条さんとコチから頼もしい言葉が飛ぶ。幸いにして黄色の実と青色の実は重量があるらしく、毒の実に比べて飛距離が短い。比較的オノドリムに近い所に、全てボトボトと落ちていっている。
――バババンッッ!!
――プシュゥゥゥ……
そして、次々と実が爆ぜた。麻痺の実からは黄色い霧が、睡眠の実からは青い霧が瞬間的に撒き散らされるが、すぐに薄くなって虚空へと消えていく。毒の実はしばらく毒霧を噴出させて、辺りを紫色に染めるくらいには勢いがあるのだが……どうやら、麻痺と睡眠の実は挙動が違うようだ。こちらとしてはありがたいところだが。
『フンッ!』
――ガサガサガサ!!
「「「「ギチチチ……」」」」
ここで、またもやフォレストスパイダーが大量に現れる。辺りを包む毒の霧は敵モンスターも巻き込まれるはずだが、フォレストスパイダーはものともせずにこちらへゾロゾロと近寄ってくる。自身も毒を扱うからか、どうやらフォレストスパイダーには毒耐性があるようだ。
「三条さん、ヒナタ、フェル、コチ! 毒の霧を吹き飛ばしがてら、全て焼き尽くすぞ!」
「了解!」
「きぃっ!」
「ぐぁぅっ!」
「ひゅいっ!」
個々に対応していては面倒なので、毒霧ごとフォレストスパイダーをまとめて焼き飛ばしてしまうことにした。風に炎を乗せて攻撃するのは、前にやったことがあるからいけるはずだ。人数が多い分、合わせるのは難しいけどな。
「ファイアブレス!」
「"ウインドブラスト"!」
「きぃっ!」
「ぐぁぅっ!」
「ひゅいっ!」
――ゴォォォォッッ!!
炎のブレスに追い風を重ね、猛烈な勢いでモンスター共に向けて叩きつける。5人で重ねたその火力は、真紅竜のファイアブレスにも負けては……いるか、さすがに。それでも、ワイバーンのファイアブレスより強いのは間違いない。
「「「「ギィィィィィッ!?!?」」」」
さっきの炎でさえ、フォレストスパイダーは避けられなかったのだ。更に強力になった爆炎を避けられるはずがない。
まるでリピートしたショート動画のように、同じように怯んで硬直したところを爆炎に飲み込まれ、焼き尽くされていく。炎はそのまま毒の実と紫色の霧を巻き込み、高熱で消毒 (?)しながらオノドリムへと迫っていった。
『ナッ、フザケルナ!? ソレハ、ハンソクダロウ!?』
オノドリムの表情には、明らかな焦りの色が浮かんでいる。
「俺たちが完璧に息を合わせて、ようやく実現できる攻撃なんだ。反則も卑怯もへったくれもないな」
次に同じようにやったとして、今回ほどの火力が出せるかは疑問だ。今回はたまたま上振れた値を叩き出せただけで、攻撃を放つタイミングが少し前後にズレてしまえば、火力なんて簡単に上下してしまうだろう。
運が無かったと思って、諦めてくれ。
――バゴォッ!
『グォォォォォォッ!?』
――バシュウッ!
爆炎がオノドリムに到達し、その身を激しく焼く。すぐにオノドリムは炎を弾き飛ばしにかかったのだが……あまりに火勢が強すぎたのか、1回だけでは消し切れなかったようだ。
残り火が枝葉を焼き、幹を焦がしていく。
――バシュウッ!
1回目からおよそ5秒ほど空けて、2回目の魔力放出が行われる。これで全ての炎を吹き飛ばされ、オノドリムは元の状態を取り戻した。
しかし、与えたダメージはかなり大きかったようだ。枝葉は半分以上が焼け落ち、幹にも深い焦げ跡が付いている。再生能力で少しずつ癒えていってはいるようだが、回復速度が全くもって追い付いていない。
『ハァ、ハァ……グッ、ナントヤッカイナ、コウゲキダロウカ』
「よく凌いだな」
もう少し大きなダメージを見込んでいたのだが、残念ながらオノドリムの対応は早かった。さすがはボスモンスターとだけ言っておこう。
……さて、と。ここまでこれば、もう大丈夫かな?
『……!?』
オノドリムの顔が、初めて恐怖の色を帯びる。その目線は、俺たちの後ろへと向いているようだ。
……ようやく気付いたようだな。攻撃を苦手とするアキを除いて、こちらに1人だけまだ1度も攻撃していない人がいたことに。
火属性攻撃に弱いモンスターからすれば、まさに最強最悪の天敵と呼んで差し支えない人がな。
「……準備が整ったのです」
九十九さんが、赤く輝くロッドを掲げる。ロッドの先端に取り付けられた宝玉、その周囲がまるで陽炎のようにゆらゆらと揺らめいており、見る人が見れば莫大な量の魔力が込められていることが分かる。
【焔の魔女】九十九彩夏さん。火属性魔法にかけては【賢者】である菅沼さんも遠く及ばない火力を持つ、亀岡組の頼りになる攻撃魔法士だ。
「トドメは任せた、九十九さん」
「了解なのです。私の魔力の8割5分、お前にたっぷりくれてやるのです! 全てを灰燼に帰せ、"カタストロフィック・ブレイズ"!」
『!?』
九十九さんが魔法名を唱えた瞬間……それは、広場に音も無く現れた。
膨大極まりない、超絶圧縮された熱エネルギーの塊とでも評すべき何かがオノドリムの頭上に現れ……ゆっくりと、降下してくる。
「盾、展開」
――ブォン
これは、相当な余波がやって来そうだ。爆風を受け流せるように流線型の防壁とし、床面も覆うように形をしっかり調整する。
……よし、うまくいったな。後は俺が圧力に耐えるだけだ。
――カッ!
――ドゴォォォォォォッッ!!!
調整が終わるとほぼ同時に、熱エネルギーの塊が激しく炸裂する。辺りにオレンジ色の炎の嵐が吹き荒れ、空気すらもことごとく焼き尽くしていく。
圧力はそれなりにかかっているが、新幹線の先頭形状を真似て作った流線型の形状により、かなりの割合で爆風を受け流すことができた。おかげで魔力消費も思ったほどではなく、余裕で持ちそうな状況だ。
……やがて、爆風が止む。その中心地には枝葉が全て焼け落ち、全身が黒く焦げたオノドリムが立っていた。あれほどの攻撃をまともに食らって、まだ原型が残っているというのは凄まじい耐久力だったが……さすがにもう、戦える状態ではなかったようだ。
『……ミ……ゴト……ダ……ガハッ!?』
――パァァァ……
オノドリムの体が、端から少しずつ白い粒子へと変わっていく。
……そして、その後には魔石と3色装備珠が残った。
俺たちの勝利だ。
◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇
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