4−81:神秘なる第20層
「……よし、抜けたか」
「危なかったネ〜、他のヘビータートル来てたヨ」
「ざぶぅっ!」
湖畔の道をさくっと通り抜け、湖の中にいるであろう他のヘビータートルに遭遇する前に再び森の中へと入ることができた。ハートリーさん曰く、かなり近くまでヘビータートルが来ていたらしいが……まあ、あれだけ派手に音を立てればそりゃ気付くよな。
ただ、ヘビータートルは図体のわりに臆病なところがある。フェルに投げ飛ばされた仲間よ姿を見て、近付いたはいいものの攻撃を躊躇したのかもしれないな。
「……それにしても、モンスターの気配が全くしないですね。ずっと風で探ってはいるのですが……」
「ひゅいっ」
「コチも見つけられていないようです」
そして、今までならこのタイミングでステルスネークやフォレストスパイダーの襲撃を受けていたのだが……今回は、モンスターが近付いてくる気配さえ感じられない。強敵グリズリーベアの気配すらも感知できないのだ。その理由は、やはり……。
「ぐぉぉぉぅっっ!!」
――ドスンッ、ドスンッ!
間違い無く、俺たちの前を歩くフェルの存在だろう。フルサイズのフェルが放つ強烈な威圧感に加えて、森に棲むモンスターは総じて火に弱いのばかりだ。ステルスネークにフォレストスパイダー、グリズリーベアも火に弱いのだから、余計にフェルを怖がって近付いてこないのだろう。
まあ、ヘビータートルは属性相性的にフェルの方が不利なので、フェルを知らない個体ならまだ相対してくる可能性はあるのだが……同階層に2箇所も湖があるとはさすがに考えにくいので、帰途につくまでヘビータートルと戦うことはもう無いだろう。そうなれば、後は森の道を進んで下り階段を見つけるだけだ。
「お、着いたな」
そして歩くこと、数分後。遂に俺たちは、第20層への下り階段までたどり着いた。
「ぐぉぉぉぅっっ!!」
――シュルシュルシュル……
フェルの体がみるみるうちに縮んでいく。そうしていつものミニサイズになったフェルは、定位置である俺の頭上に移動した。
俺たちは早速階段を下りて、途中のステップ部分に腰掛ける。ここなら
「……さて、どうするみんな? ボス戦は明日にして、先に寝るか?」
ダンジョン内は常に一定の光量があるので、時間感覚がおかしくなりがちなのだが……外は既に夕方を越え、夜もだいぶ深まってきている。加えて疲れが残った状態で、未知のボスと戦うのは良くないのではないかと思ったわけだ。
……そう思って聞いてみたが、案外みんなケロッとした様子だ。
「うーん、思ってたよりも消耗してないからな。すぐにボス戦でも、俺は構わないぜ」
「私も、恩田さんたちのおかげでだいぶ楽させてもらったもの。十分に余裕はあるわ」
嘉納さんと菅沼さんは大丈夫そうだ。無理している様子は一切無く、本当に余裕があるように見える。
……これを見ると、いかにステルスネークの存在が2人にとってネックだったかがよく分かるな。第15〜19層を抜けるなら、やはり斥候役は必須というわけだ。
「あ、私もいつでもオッケーなのです」
「私もいけます」
「私も、いつでも大丈夫です」
「ワタシもいいネ〜」
「ひゅいっ!」
「ざぶぅっ!」
九十九さん、帯刀さん、三条さん、ハートリーさん、コチとシズクも問題無さそうだ。
「きぃっ!」
「ぐぉぅっ!」
「ぱぁ」
ヒナタとフェルがやる気満々で、アキがあまり興味無さそうなのもいつも通りだ。
「いつでも良いわよ、高良さん?」
……うん?
「朱音さん?」
「あら、どうしたのかしら?」
何でもないように朱音さんが言うが、その目と名前呼びなところをみれば何となく意図は伝わってくる。『いつでも良い』と言ったのも、持たせた意味はおそらく1つだけじゃないはずだ。
「……後でな」
「期待してるわよ♪」
朱音さんが、とても楽しげな笑顔を浮かべる。それにつられて、俺もつい笑ってしまった。
……よし、良い感じに肩の力も抜けたな。
「それじゃあ、先に進もうか」
早速、第20層へと突入する。ここにも情報封鎖の呪いがかかっていることから、ボス戦があるのはほぼ間違いないだろう。
さて、第20層ではどんなボスが出てくるのだろうか……?
◇
「………」
第20層へと足を踏み入れる。そこには、圧巻の光景が広がっていた。
「……これは、凄いわね」
「……ああ、そうだな」
第20層も、引き続き森林地帯のような風景が広がっている。ただ、第15〜19層で見たような雑多な感じの森ではなく……どちらかと言えば、よく手入れされた鎮守の森ような神聖さを感じる風景だ。
枝葉が低い所に全く無く、それでいて幹が太く背の高い木……どこぞの千年樹かと思うようなそれが、道を作るように両脇に並んでいる。メタセコイア並木を見たことがあるなら、それを思い浮かべてもらえばイメージとしては分かりやすいだろう。葉は夏場の深緑色をしており、天を覆うように生い茂っている。
「明るいな」
木の枝葉で空が覆われているわりに、不思議と周囲は明るい。木漏れ日かと思ったのだが、上を見てみるとどうも違うようだ。
「……あれのおかげか」
木の高所部から伸びた枝葉が、ところどころ発光しているのが見える。これが光源となり、俺たちの視界を照らしてくれているようだ。それでいて奥の方が光っておらず、薄暗くぼやけて見えるのは……ボスの姿をうまく覆い隠すための演出か。
……それにしても、光る木というのは初めて見るな、なんとも不思議な木だ。日◯のCMじゃないけど、こういう木がもし外にあったら間違い無く観光名所になるな。
「……いいねえ、この雰囲気。気が引き締まるというか、なんというか」
「第10層もそうだったけど、『強いモンスターがこれから出てくるぞ!』って感じが凄いするのよね」
「燃えてきたのです、私の魔力も昂ぶっているのです」
「せっかくここまで来たのですから、絶対に勝ちましょう」
「私の刀が、果たしてどこまで通用するでしょうか?」
「楽しくなってきたネ〜♪」
「きぃっ!」
「ぐぉぅっ!」
「ぱぁ」
「ひゅいっ!」
「ざぶぅっ!」
アキ以外の全員が、静かに気を昂らせている。アキはいつも通り、自然体で朱音さんの
「さあ、先に進みましょう、高良さん」
「おう」
定規か何かできっちり揃えたかのように、全く同じ間隔で立ち並ぶ巨大な木々。その間を、俺たち13人はまっすぐ進んでいく。
……やがて、並木が大きく円形の広場を形作っている場所まで来た。どうやらここが、ボスと戦う場であるらしい。
「ボスは……」
周囲を見回すが、広場の中央に大きな木があること以外には、特に変わったところは無い。その木はまさに日◯の木といったような見た目をしており、樹高はそこそこながら枝葉が大きく平面方向に広がっている。
……ということは、まさかコレが――
――ゴゴゴゴゴゴ……
「っ! 全員、戦闘用意!」
突如として地面が揺れ始め、なんと広場中央の日◯の木が幹を軸にゆっくりと回転し始めた。
そして、木がちょうど180度回った時。その立派な幹には、明らかに人のような顔が浮かび上がっていた。
「まさか、この木が第20層のボスか!?」
『……ヨクキタナ、ニンゲンドモヨ』
「やっぱり喋りやがった!」
ゴブリンジェネラルやゴブリンキングもそうだったが、ボスというのは言語能力を標準搭載しているらしい。その分、知能は他のモンスターに比べて段違いに高いのだろう。
『ワガナハ、"オノドリム"。キニヤドリシ、ジャアクナルセイレイデアル。
サア、ニンゲンドモヨ。コノサキニススミタケレバ、ワレヲミゴト、ウチタオシテミセヨ!』
幹に浮かび上がった顔が、こちらを鋭く睨みつける。
第20層ボス、オノドリムとの戦いが始まった。
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