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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第4章:そして始まる、現代ダンジョン探索元年

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4−66:ある地獄な横浜ダンジョンライブ配信……?


「ほぉ、ほぉ、これがダンジョンの中か! 話には聞いていたが、まるで洞窟の中にいるかのようだな!」


 ……全員がダンジョンの中に入った途端、岩守総理がなんか楽しげにはしゃぎだした。さっきまでの引き締まった空気感はどこへやら……一気にゆる~い雰囲気へと変わっていく。言葉には出さないが、嘉納さんも菅沼さんも持永局長でさえも……心の中で「……え?」と言っているであろうことが、その表情から伝わってきた。


「……総理、あまり我々から離れては危険です」

「む、そうか。いやぁすまんすまん、遂に念願のダンジョンに入れたわけでな。嬉しさでつい子供のように騒いでしまったよ」


 さすがにSPの人たちは、総理の奇行を目にしてなお緊張感を保ったままだったが……俺たち探索者組は、はたから見れば全員が唖然と立ち尽くしているように見えたことだろう。


「……岩守さん、もう少し我慢できなかったのですか? 気持ちは分かりますけども……」

「ひゅい……」

「ウンウン、楽しいのは良いことダヨ!」

「ざぶぅ!」


 いや、そうでもないか?

 三条さんとコチは、2人とも額に手を当てて首を横に振っているし……ハートリーさんとシズクは相変わらず楽しげだ。特に三条さんは、さっきまでの令嬢然としたよそ行きの顔ではなく……まるで知り合いのおじさんを見ているかのように、素で呆れたような表情を浮かべている。総理の呼び方も岩守()()に変わってるし。

 ……三条さん、最初から岩守総理の本当の性格を知っていたな。「父上がいつもお世話になっております」と言っていたし岩守総理も否定していなかったから、普段からある程度の付き合いがあったのだろう。コチは三条さんの真似をしてるだけだと思うが。


「ふっ、ハートリー殿の言う通りだ。ワシの長年の空想が現実になったのだぞ? これが楽しまずにいられるか!」


 己の欲望に正直すぎだろこの人……。


「……とまあ、それは今はおいておこう」


 ……かと思えば、岩守総理はすぐにキリッと表情を引き締める。切り替えが早すぎるだろ、さすがは総理大臣と言えばいいのか?


「真面目な話、ワシは昔から()()()()()()に憧れていてな。3年前にダンジョンが出現した時は、本当はすぐにでもダンジョンを一般公開したうえで議員を辞め、自分も探索者になりたかったのだが……その前にやるべきことがあるだろうと思ったわけだ。私のような立場だからこそできる、探索者の立場を明確にするための法を立てるという大仕事が。

 思ったより時間は掛かってしまったが、どうにか道筋は整えた。一般探索者による探索進度という観点では、現状で日本は世界の後塵を拝してしまっているが……なに、すぐに追い付くであろう。他国と違って明確な制度ができ上がり、サポート体制も十分に整えたのだから……」


 岩守総理の言葉が唐突に途切れる。


「……おおっ!?」


 そしてすぐ後、思わずといった感じの楽しげな声が漏れた。


 ……これは来たな、初探索者恒例のギフト授与の儀が。

 岩守総理の装備品は、完全に軽装寄りだから……間違い無く後衛型だな。さすがにバリバリ前衛をこなせるようなタイプには見えないし……。


「……岩守総理、どのようなギフトが得られましたか?」


 少し時間をおいてから、持永局長がそっと問い掛ける。ギフトの内容は迷宮開発局に報告する義務があるので……まあ、いわゆる定例行事というやつだ。


「なるほど、これが初探索で誰もが経験するという、ギフト授与というものか。ワシのギフトは【空間魔法士】だそうだ」

「なるほど、【空間魔法士】ですか……」

「「「……!」」」


 三条さんとハートリーさんの視線が、一瞬だけ俺の方を向く。

 【空間魔法】……俺の記念すべき初探索で、ブルースライムからドロップしたスキルスクロールで覚えた魔法だ。ブルースライム100万体目討伐記念でドロップしたそれは、様々な面から俺のダンジョン探索を支えてくれている超優秀なスキルである。アイテムボックスにマッピング、あとは最近こっそり試行を重ねているとある魔法と、有用な魔法は非常に多い。


 それを、まさかギフトで得るとは……。


「……【空間魔法士】ですか。ということは、使える魔法は【空間魔法】ということでしょうか?」

「ふむ、どうやらそのようだ。【空間魔法】というものがあるとは、寡聞にして知らなかったが……君らは知っているかね?」

「いえ、オ……私は知らないですね」

「私も、申し訳ありませんが存じ上げません」

「我々も、そのような魔法があるとは知りませんでした」

「「「………」」」


 自衛隊上がりのSPの人たちでさえも知らないとは、よほど【空間魔法】とは希少なスキルらしい。ラージスライム……ブルースライムの特殊個体辺りがドロップしそうなものだが、ドロップ率が低いのか特殊個体の出現率が低いのか。


 ……さて、俺はどうしようか。雄弁は銀、沈黙は金ということで、ここで沈黙を続けるのも十分アリだが……もうすぐ辞任されるとはいえ、さすがに現役の総理大臣の前で嘘をついたなら、その嘘は最後まで貫き通す必要があるだろう。

 まさか急にこんなことになるとは思っていなかったので、正直なところだいぶ慌てている。俺が黙っていることを選択したなら、三条さんとハートリーさんはその選択を尊重してくれるとは思うが……。




 ……でもまあ、色んな人に【空間魔法】の存在はちょこちょこ教えたりしてるし。探索者として、俺もそれなりのレベルになることができたし。ここらが潮時ってことなんだろうな。


「……すいません、少しよろしいですかね?」

「む、恩田君か。どうしたのかね?」


 もっと緊張するかと思ったが、思ったよりスッと声が出た。


「まあ、あれこれ語るよりはコレを見てもらえれば分かると思います。"アイテムボックス・取出"」

――ポスッ


 アイテムボックスの中から、両手に1つずつラッシュビートルの魔石を取り出して乗せる。それを見た全員――三条さんとハートリーさんと仲間モンスターを除く――が驚きの表情に染まった。ずっとポーカーフェイスだったSPの人たちまで驚いているのは、ある意味で痛快とも言えるな。


「フェル、ヒナタ、お腹減ってるだろう?」

「きぃっ!」

「ぐぉぅ!」


 そのまま、ヒナタとフェルに魔石をあげる。実は30分くらい前に部屋で魔石を食べさせているので、2人ともまだお腹は減っていないと思うが……俺の行動の意味を察したのか、2人は嬉しそうに受け取ってくれた。


「アイテムボックス……まさか、それを【空間魔法】で作り出しているのかね?」

「はい。容量はおそらく無限、いくら入れても重量ゼロ、ただし中身の時間は普通に流れる……という性能の魔法です。物の出し入れに多少魔力を使いますが、維持に魔力が要らないので重宝しています」


 これが無ければ、俺のダンジョン探索は根本的に成り立たなくなる。それくらいに重要な魔法だ。


「ほぉ……ダンジョンライブ配信を行うのに絶対必要なギフトを持ち、モンスターの仲間を2体も引き連れ、更に【空間魔法】スキルを持っているとは。恩田君、君はどれだけ希少要素を抱えた探索者なんだい?」

「良いか悪いかは別として、異様なほどレアケースに遭遇しましたので……【空間魔法】については、運が良かったのだと思います」


 ふと、今の俺がどんなスキルを持っているのか改めて確認してみた。

 ……【空間魔法】【闇魔法】【風魔法】【ダークブレスⅠ】【ファイアブレスⅡ】【杖術】【鼓舞】【鑑定】か。8個というのは多いのか、少ないのか……多いんだろうなぁ、多すぎてあまり使ってないのもあるくらいだし。例えば【鼓舞】とかな。

 亀岡ダンジョンでは九十九(つくも)さんがメインで使ってくれてたのと、九十九さんがクールタイムの時は声掛けしてくれたから自発的に使ったことが1度も無かった。重ね掛けも無効なことに途中で気付いたから、余計に自発的に使う意識が無かったんだよな……。

 試練の間で使っていれば、もうちょっと楽に勝ててたかもしれない。今さら言っても意味は無いし、無傷でクリアしておいてそれ以上を求めるのは欲張りなのかもしれないがな……。


 まあ、それはともかく。【空間魔法士】ということなら、岩守総理に教えられることもありそうだ。


「私自身、【空間魔法】スキルの運用方法は今現在も開拓中です。アイデアはいくつかありますが、今の私の実力では行使できないことも結構ありまして……」

「ふむ……例えば、どんなアイデアがあるのかね?」

「実現できたものは、先の"アイテムボックス"に加えて"ダンジョンマッピング"と"ワープ"くらいでしょうか。実現できていないものとしては……」

「ま、待て待て待て!」

「はい?」


 うん? どうしたというのだろうか?


「今、ワープを実現したと言ったかね!?」

「はい、事前にマーキングした所に一瞬で飛んでいくイメージですね。横浜から京都くらいまでなら、今の私の魔力でも往復可能です。ただしその性質上、1度は行ったことのある場所にしか行き先指定することはできませんが……」


 それで、たまに横浜から京都に帰っては色々してるんだよね……まあ、ちょっとここで語るには不適格なことを色々と、ね。

 魔法自体は、某忍者漫画の四代目さんが使っていた術を長距離版にしたようなイメージかな? 短距離ならマーキング無しでも転移できるけど、そうすると魔力消費量が多くて連発ができない感じだ。

 ……まあ、いずれにせよ某四代目さんのようには使えない。魔法の性能云々ではなく、俺の体が追い付かないのだ。つくづく俺の運動神経の無さが憎いよ……。


 ……っと、話がだいぶズレてしまったな。時間も少しかけ過ぎた、あと5分でライブ配信を始める時間になってしまったな。


「とりあえず、ライブ配信がてらどんなことができるのか確認していきましょうか。岩守総理が前衛型なら嘉納さん、後衛型なら菅沼さんがお教えする予定でしたが……僭越ながら、今回は私恩田が講師役を務めさせて頂きます」

「むむ、もうそんな時間か。それでは、皆よろしく頼むぞ」


 ササッと、事前に決めた通りの配置に皆が付く。ちょっと想定外なことはあったが、時間は待ってくれないのだ。

 ……なんだか、急に緊張してきたな。横浜ダンジョンでのライブ配信、うまくいくように最後まで頑張ろう。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
雷系が使えるんなら、ちょっと憧れる技なんだってばよ!の、四代目頭領さんですね。 横浜に来てるんだから、中華街にラーメンを食べに行かなきゃ(ニヤリ)
空間魔法の所持を知られちゃうと、密輸に窃盗アリバイ工作何でもありの、歩く要注意人物になっちゃうけど、この場合仕方ないよね。
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