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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第4章:そして始まる、現代ダンジョン探索元年

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4−60:VSフレイムデビル・前編


『フン、我ノ相手ハ貴様ラダケカ? 随分ト舐メラレタモノダ……』


 怒りが籠もった口ぶりとは裏腹に、どこかホッとした様子でフレイムデビルが槍を構える。上目でチラッとフェルの様子を確認していたので、フェルに動く気が無いことを確信できたのだろう。

 プライドは高いが、かと言って自分の力を過信するタイプでもない。ゴブリンキングは煽りに激弱でやりやすかったが、フレイムデビルは煽りにもグッと耐えて自制できている。中々に厄介な知性を持った相手だが、こういう相手はその実力以上に手強いと相場が決まっているわけだ。


 さて、4人はどう攻めていくつもりだ?


「リンちゃん!」

「ミサキ!」

「ひゅいっ!」

「ざぶぅっ!」


 互いに声を掛け合った後、三条さんが真正面からフレイムデビルに突貫していく。三条さんの肩に乗っていたコチは空へと飛び上がり、フレイムデビルの上空に位置取った。

 ……風の妖精であるコチは、低高度ながら飛行可能でスピードも速い。加えて体がヒナタよりも小さいので、相手からすれば非常に攻撃を当てづらいだろう。

 一方のハートリーさん・シズクコンビは二手に分かれ、フレイムデビルを左右から挟み込むように動いている。さすがにシズクは空を飛べないが、【水魔法】で作り出した水に乗ってサーフィンするかのように高速移動している。


 ……俺の予想では、フレイムデビルは水属性攻撃に弱いと見ている。その予想と4人の動きを見るに、三条さんとコチは陽動に徹し、攻撃はハートリーさんとシズクをメインに据える方針だと思うのだが……果たしてどうだろうか?


『フンッ!』

――ヒュッ!


 真正面から迫る三条さんに向けて、フレイムデビルが右手で三叉槍を突き出す。攻撃のリーチは圧倒的にフレイムデビルの方が長く、間合いに入る前に槍の一撃が三条さんへと迫る。


「はっ!」


 その攻撃を、三条さんは余裕をもって横に回避した。少し速度が落ちてしまったが、三叉部分が水平になっていたので大きめに避ける必要があったようだ。


「しっ!」

――ヒュッ!


 しかし、その余計な回避機動すらもうまく勢いに変えた払い斬りが放たれる。低い姿勢から放たれた腰溜めの一撃が、風斬り音を伴いながらフレイムデビルの右手へと迫る。

 ……見え見えの攻撃だが、三条さんの体勢は安定している。外れて不利を背負うようなギャンブル攻撃ではなく、いざとなれば三条さんはバックステップなりサイドステップなりで、フレイムデビルの攻撃を避けるつもりなのだろう。外れても良し、当たれば尚良しの2段構えのようだ。


『ヌゥッ!』

――ガギンッ!


 しかし、フレイムデビルもさるものだ。突き出した槍を素早く引き戻しつつ、三条さんの斬撃が速度に乗る前に槍で弾いた。軌道を変えられた斬撃は、何も無い空間を空振りする。

 その瞬間には、三条さんはフレイムデビルから距離を取るべく動き出していた。


『"フレイムスパイク"!』

――バゴウゥゥッ!


 フレイムデビルが【火魔法】を唱える。そこからほぼノータイムで、フレイムデビルの周囲の地面から噴き出した炎が三条さんを襲う。


「はっ!」

――タッ、タッ、タッ!


 しかし、既に三条さんは大きくバックステップをして、危険地帯から離脱していた。爆炎は誰も居ない場所を焼き尽くし、熱気を撒き散らしながら霧散していく……。


『クッ、マサカコレヲ避ケラレルトハ!?』


 フレイムデビルが見るからに狼狽(うろた)えている。必殺の攻撃だったつもりが、あっさり回避されて驚きを隠せなかったのだろう。

 ……ゴブリンキングの"クリスタルスパイク"に似て、術者の周囲にノータイムで強力な攻撃を放つ魔法だったからな。確かに、俺だったら当たってたな。


「ふふっ、予想以上に出が早かったですね。しかし、私のスピードの方がほんの少しだけ(まさ)ったようです」


 早めに動き出して正解でした、と事もなげに言う三条さんには、おそらく俺には把握できていなかった何かが見えていたのだろう。何かしらフレイムデビルの予備動作的なものを読み取って、即座に回避へ舵を切ったのだと思われる。ほんの少し教えただけなのに、留学開始当初とはまるで別人のような強さだ。


『ナラバ、"ファイ「ひゅいっ!」』

――ビュォォォッ!!


 フレイムデビルが別の【火魔法】を放とうとした所に、コチの【風魔法】が重ねられる。魔法名は分からないが、フレイムデビルを中心に強烈な竜巻が生み出された。


――ズバババッ!

『ヌオォォォォォッ!?!?』


 フレイムデビルが風の刃に切り刻まれながら、一気に上空へと持ち上げられていく。随分と◯意の高い攻撃魔法だが、放った本人(コチ)は平然とその様子を見送っていた。

 ……空中からこれほどの攻撃が飛んでくるのって、考えてみるとちょっとヤバいな。ブラックバットの時から飛行型モンスターは厄介だと思ってたけど、深層に行けばこのレベルのモンスターが現れる可能性もあるってことか……。


『グッ、"ファイアボールラッシュ"!』

――ドドドドドドドドドドッ!!


 竜巻の上に放り出されたフレイムデビルが、空中で翼をバタつかせながら体勢を整えて、ファイアボールをマシンガンのように撃ち下ろしてきた。ムキムキの体格に似合わないほど小さな翼だが、空を飛ぶことこそできないものの空中で姿勢を変えることはできるようだ。


「盾展開」

――ブォンッ


――バヂヂヂヂッ!


 燃え盛る玉が俺の方にも何個か飛んできたので、防壁を展開して弾く。フェルが一瞬反応したが、手でやんわりと制止しておいた。


――バゴォッ!

「くっ!?」

「ひゅいっ!?」


 着弾した火球は破裂して、辺りに炎を撒き散らしている。その火勢が思ったよりも強かったのか、着地点に近付こうとしていた三条さんとコチが足止めを食らっていた。


『我ヲ、ソウ簡単ニ倒セルト思ウナ!』


 そうして、降り注ぐファイアボールの雨あられが功を奏したのだろう。フレイムデビルは着地際を狙われることなく、炎に支配された地面へと無事に戻ってきた……。




「"アクアショット"」

――バシッ!

『ウグッ!?』

「ざぶぅっ!」

――バシャッ!

『ガァッ!?』


 ……なんて、そう簡単にいくわけ無いじゃないか。

 着地したフレイムデビルの両側面から、ハートリーさんとシズクの水属性攻撃が飛んでくる。着地直後の隙を見事に突かれ、まともに攻撃を浴びたフレイムデビルが痛みから悲鳴を上げた。


「ナラ、こんなバーニングでワタシを止められると思うナ!」

「ざぶぅっ!!」


 燃え盛る炎の壁を突き破って、ハートリーさんとシズクが姿を現す。2人とも水のバリアのようなものを身に纏っており、炎の熱さをものともしていないようだ。

 そして、水属性攻撃を食らってふらつく(スタンする)フレイムデビルへ2人が突撃していく。


『グッ、小癪ナ……!』

――ゴウッ!!


 ハートリーさんたちがたどり着くよりも早く、フレイムデビルがスタンから復帰する。そうして三叉槍を構えると……なんと、手首から噴き出した炎が槍を包み込んでいく。どうやらフレイムデビルも魔武技が使えるらしい。


「!!」

――ゴゴゴゴゴゴ……


 それを見たハートリーさんも、槍に水流を纏わせていく。透明な水がハートリーさんの槍をすっかりと覆い尽くした。


 ……俺が見た感じでは、槍に込められた魔力量はフレイムデビルの方が多い。保有魔力量が多いのだからある意味当然なのだが、魔力を扱う技術的な部分でもフレイムデビルの方が優れているようで、槍に纏わせた魔力の密度とでも言うべきものがまるで違うのだ。いくら属性的にハートリーさんが有利でも、この差を覆すまでには至らないだろう。

 ……とまあ、以前までのハートリーさんなら良くて相討ち、大半のパターンでは属性不利を押し退けてフレイムデビルが押し勝つ結果になっていただろうが……今のハートリーさんは、1人ではない。


「ざぶぅっ!!」

――バシュゥゥゥ……

『クッ!?』


 水流を纏うハートリーさんの槍に、シズクがさらに水流を重ねていく。ついでにフレイムデビルへ水弾を撃ち込み、体勢を崩させていった。


 ……シズクの保有魔力量はかなり多い。現時点で俺とほぼ互角、フレイムデビルと比べても多分多いんじゃないかな?

 加えて、水属性に限れば技術的な面でも完璧だ。ハートリーさんの槍に追加の水を纏わせながらフレイムデビルに水弾を放つ、という二重詠唱(デュアルマジック)さえシズクは行使可能なのだから。


「"アクアスラスト"!」

『グッ、"ファイアスラスト"!』


 ゆえに、フレイムデビルは不利な状況のままハートリーさんを迎え撃つハメになった。


――ガギンッ!!


 ハートリーさんとフレイムデビルの槍が交錯する。水と炎の魔力が押し合い、弾け飛び……やがて、趨勢は決する。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
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