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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第4章:そして始まる、現代ダンジョン探索元年
203/204

4−52:VSワイバーン・後編


「グォォォオオォォォ!!」

――ブォン!

――スカッ

「そんナノ、何度やってモ当たらないネ〜!」


 このやり取りも、もう何度繰り返されただろうか。


 全身の鱗を大量に剥ぎ取られ、ダメージを負って怒り狂うワイバーンが急降下滑空から右爪攻撃を振るうが……ハートリーさんは、その攻撃を余裕をもって回避する。さすがは一流の前衛だけあって、その回避は俺よりも遥かに余裕があった。

 対するワイバーンのスピードは少しずつ速くなってきているものの、同時に動きが段々と単調になってきている。当初こそフェイントを織り交ぜたり、尻尾攻撃やファイアブレスを挟んだり、無理な攻撃を自制する動きもあったのだが……今では見え見えの爪攻撃を振るった挙句、俺たちに軽くかわされる始末だ。それでワイバーンの怒りのボルテージが上がり、更に動きが単調になっていくというループに入っている。

 【ファイアブレスⅢ】も既にネタ切れだ。こちらに炎を防ぐ(すべ)があって、かつワイバーンの魔力量が少ない以上、いつかこうなることは確定していたのだが……ワイバーンが怒りに任せて炎を撒き散らした結果、俺の予想より早くガス欠へと至ったわけだ。


「鱗を剥ぐまでは、何もできていませんでしたからね。少しでも貢献しなければ……はぁっ!」

――ヒュッ!

――ズバッ!

「ギャウゥッ!?」


 腹部の鱗が失われた部位に、三条さんの風刃が直撃する。ダンジョンモンスターゆえ血などは出なかったものの、深い傷がワイバーンの体に刻まれた。

 ……気付けば、ワイバーンの全身に似たような斬り傷がいくつも刻まれている。これらは三条さんの攻撃がもたらした結果だが、他にも小さく抉れた部位や1円玉大の穴が空いた部位もあり……三条さん・ハートリーさん・ヒナタの3人による総攻撃が、着実にワイバーンを追い詰めていた。


「グ……グォオオオォォオォオォッッ!!」

「もウ、ムダにタフね! いい加減倒れてヨ!」


 だが、それでもワイバーンは倒れない。傷だらけの体を空中で支え、血走った目をこちらに向けながらなんとか翼を羽ばたかせている。それは強者の意地なのか、あるいは単なる悪あがきなのか……とにかく、戦意は全く衰えていないようだ。

 しかし、体力面で徐々にワイバーンが弱ってきているのは間違いない。気力でどうにか持ち堪えているみたいだが、果たしてどこまで保つかな?


「"ライトニング・コンセントレーション"!」

――ゴロゴロゴロ……

――カッ!

――ドドドドドドドドッ!!

「グォォォオオォォオオッッ!?!?」


 頭頂の鱗も既に剥がれているので、雷撃が面白いように効く。ワイバーンが雷に打たれるたび、体を何度もピンと硬直させていた。

 やはりワイバーンはその巨体ゆえ、回避はかなり苦手なようだ。それを圧倒的な攻撃力と防御力で補っていたのだが、攻撃パターンが単調になっていくせいで攻撃力はほとんど発揮できず、鱗が取れたせいで防御力も格段に落ちている。いくらドラゴン系といえど通常モンスターだから、理不尽な能力を持っているわけではないようだ。


「きぃっ!」

――パァァァァッ!!

「グギィィッ!?」


 ヒナタのホーリーブレスがワイバーンの顔に着弾し、その目を(くら)ませる。ワイバーンとのスピード勝負ではヒナタに軍配が上がり、ワイバーンを翻弄しながら3種のブレス攻撃全てをガンガン叩き込んでいた。

 ……まあ、ファイアブレスだけは全く効かなかったのだが。鱗が取れて弱点が晒されても、火属性攻撃だけは一切通用しなかった。念のため俺もファイアブレスを撃ってみたが、綺麗に弾かれてワイバーンに笑われてしまったわけだ。


 さっきの過剰な雷攻撃は、その辺の鬱憤晴らしも兼ねてたりする。ワイバーンがこちらを馬鹿にしてくれるのは、戦う上では大変ありがたいことなのだが……だからといって、何とも言えないモヤモヤ感が無くなるわけじゃないからな。


「リンちゃん!」

「ミサキ!」

「……お?」


 三条さんとハートリーさんが並び立ち、それぞれ刀と槍を掲げて交差させる。これは、完全に合体魔武技の流れ……そろそろワイバーンに、トドメを刺しにかかるようだ。

 そして、今のワイバーンは目が眩んで大きな隙を晒している。合体魔武技は威力が高い分、息を合わせて溜めを作る時間が必要なのが欠点だが……この状況なら、ほぼ確実に攻撃は当たるだろう。


 ならば俺は、万が一のファイナルアタックに備えて準備しておこうかな。通常モンスターでファイナルアタックを使ってくるモンスターとは、今まで遭遇したことは無いが……絶対に無いとは言いきれない。第50階層台のモンスターともなれば、もしかしたらファイナルアタック有りが前提になってるかもしれないからな。


「"風竜閃"!」

「"水竜撃"」

「「合体、"風水竜撃閃"!!」」

――バシュゴォォォ!!


 三条さんとハートリーさんが同時に武器を振るい、そこから水流を纏った小さな竜巻が竜のような形をとって飛翔する。風と水の属性を纏った強力な一撃だ。

 この攻撃は、ゴブリンジェネラルを1発で仕留めていたが……果たしてワイバーンに通用するだろうか?


――ゴゴゴゴゴゴッ!!

「ガアァッ!?」


 目が眩んで見えていなくとも、辺りに轟く尋常ならざる音に危機感を抱いたのだろう。痺れて整わない体勢のまま、ワイバーンが回避機動を取ろうとする。


「きぃっ!」

――バシュゥゥゥ!

「"ライトニング・クイックボルト"」

――ドゴォォン!

「グガァァァァァァッ!?」


 もちろん、そんなことは俺たちが許さない。どこかに当たるとは言っても、どうせ当てるなら急所が一番良いからだ。

 ヒナタは【ウインドブレスⅠ】を、俺は高速の雷撃をワイバーンに叩き付ける。雷撃で痺れがさらに深くなり、そこをウインドブレスで押されたワイバーンが大きく体勢を崩す。


 そこへ、合体魔武技が飛来した。


――ゴゴゴゴゴゴォォォォッッ!!

――ドシュッ!!

「グガァァァッ!?!?」


 風水竜撃閃がワイバーンを直撃し、右翼の根元と右腕・右脚、そして胴体の一部を消し飛ばした。ゴブリンジェネラルを一撃で倒した攻撃は、どうやらワイバーンですら致命傷を負うほどの破壊力を持っていたようだ。

 ……というか、鱗があっても貫いてたんじゃないかコレ? ワイバーンは水属性が弱点だから、鱗を砕きながら貫通していた可能性が高い。最初から弱点が分かってたら、フラッシュで隙を作ってから撃ってもらったんだけどな……まあ、それも含めての試練だから仕方ないか。


「ガ……グ……」

――ヒュゥゥゥウウウウ

――ドゴォォォォ!


 さすがのワイバーンも、片翼を失ってはもはや飛ぶことは叶わない。キリモミしながら力無く墜ちてきて……地面に激突し、その場でモゾモゾともがいている。

 それでもまだ倒れないあたり、ワイバーンの生命力の強さを嫌でも感じるが……まあ、それも時間の問題だろうな。


「グ……ガァァァ……」

――フゥーッ、フゥーッ


 目を充血させたワイバーンが、鼻息荒く俺たちを睨みつける。痛みで薄れゆく意識の中で、怒りはより濃く深く渦巻いているようだ。


「"スプラッシュインパクト"」


 ダンジョンモンスターであっても、痛みや苦しみは当然のように感じる。ワイバーンの苦しみをこれ以上長引かせないよう、早めにトドメを刺してやることにした。

 使う技は【杖術】を用いて発動する魔武技が1つ、スプラッシュインパクト。打撃を与えた者に強烈な水流を叩き付け、相手を穿つ技だ。水属性が弱点のワイバーンにはよく効くことだろう。


「じゃあな、ワイバーン。強かったよ」

「……グォ」


 ワイバーン1体だけで、本当に良かったと思う。これがディザスターイーグルと一緒だったら、苦戦は必至だったろうから。

 ワイバーン目がけて、杖を振り抜く。万が一、尻尾や爪が飛んできても大丈夫なように警戒していたが……どうやら杞憂だったようだ。


――ドゴッ!

――バシャアァァァッ!!


 杖から放たれた激流が、ワイバーンをみるみるうちに包み込んでいく。断末魔の叫びを上げる間もない、まさに一瞬の出来事であった。








『皆さま、おめでとうございます。試練の間をクリアいたしま……』


 メッセージが、試練の間のクリアを告げようとして……なぜか、途中で止まった。


「? どうしたノ?」

「いや、なぜかメッセージが途中で止まって……!?」


 ワイバーンを覆う水が、大きく膨らんでいく。なぜだか水は白煙を噴き、ボコボコと泡が弾けるような音を立てていた。

 ……これは、水が沸騰してるのか? さっきまで冷たい水だったのに、目を離した一瞬でこうなるとは……いや、まさか。


 凄く、すっごく嫌な予感がする。


『……いえ、どうやらまだクリアではないようですね』


 メッセージが、そう告げた直後。


――バッチィィィンッ!!

「………」


 体が真っ黒に染まったワイバーンが、沸騰する水の中から無言で飛び出してきた。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
今のは痛かった…… 痛かったぞおおおぉぉ!!!
こんにちは。 水が沸騰してる…つまりフレイムワイバーン的な上位種に転生(?)したってことですかね。
感想一覧
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