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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第2章:朱き飃風は母を想いて舞い踊る
20/175

2−13:階層境界の長い階段を下り抜けるとそこは……


「……よし、そろそろ行くか」


 魔力は既に満タンになっていたが、きっちり5分休んだところで腰を上げる。

 パンフレットによると、次の第4層では新しいモンスターは出てこないとのこと。これまで通りホーンラビット・ブラックバット・ゴブリンの3種がメインの敵になるそうだ。

 まあ、それなら安全マージンを十分取りつつ、これまで通りに少しずつ探索を進めれば……。




「……へ?」


 これまでとは打って変わり、階段を降りた直後がとんでもない大部屋になっていた。後ろこそ壁になっているものの、右、左、前と遮るものが何もなく、視界がかなり開けている。そして---


「「「「キイッ! キイッ!」」」」

「「「「ゲギャギャギャ!」」」」

「「「「ギイィィィ!!」」」」


 大部屋をうろつくモンスターの群れ、群れ、群れ。全て合わせて100を超える数のモンスターが、そこら中を闊歩していた。


「げっ!?」


 つい出てしまった俺の声に反応したのか、大量の視線が一斉に俺の方を振り向いた。

 おいおい、階段降りた直後がモンスターハウスかよ!? 難易度上がり過ぎじゃないのか!?


「"ダークネス"!」

「「「ギッ!?」」」」

「「「「ゲギャッ!?」」」」


 咄嗟に黒霧を周囲へばら撒く。これでホーンラビットとゴブリンの動きは牽制できたが……。


「「「「キイィィィ!」」」」


 黒霧をものともせず、ブラックバットが突っ込んでくる。壁がある方向を除く全方位から、30ではきかない数のブラックバットが時間差で迫ってきていた。


「無理だろこんなもん!」


 急いで階段を上って逃げる。黒霧の中でも俺を追いかけてきたブラックバットは、階段の途中で引き返して……いかなかった。


「!? 嘘だろ、まだ上ってくるのか!?」


 さっき休憩していた階段の中ほどを過ぎても、ブラックバットはまだ追いかけてくる。

 ……もしかして。さっき第3層のブラックバットが遮られていたあの場所が階層の境界で、そこ()モンスターが通り抜けることはできない。

 しかし、階段上は別に安全地帯でもなんでもない(1つ下の階層のモンスターが入ってくるかもしれない)ってことかよ。


 だが幸いなことに、階段という限られた空間にブラックバットが殺到したために、モンスターが来る方向や一度に戦う数を制限させることができた。これならやれるかもしれない。


「"サンダーボルト・チェイン"!」


 意を決して足を止める。1体の敵を撃ち据えた雷撃が、他の敵に次々と飛雷していく……そんなイメージで、振り返りざま魔法を唱えた。


「ギッ!?」

「キィッ!?」

「ビッ!?」


 先頭切って飛んでいたブラックバットに雷撃が着弾し、そこから放射状に雷撃が飛び火していく。7体ほどのブラックバットを焼き焦がしたところで雷撃は止まった。

 しかし、後ろからはまだまだブラックバットが押し寄せてくる。


「"サンダーボルト・チェイン"!、"ライトショットガン・ダブル"!、"サンダーボルト・チェイン"!、"サンダーボルト・チェイン"!、"ライトショットガン・ダブル"!」

「「「「ギィィィィッ!?」」」」


 とにかく早口で飛び火する雷を連射し、雷撃をすり抜けてきたブラックバットは2倍増しのライトショットガンで撃ち落とす。魔力がなかなかの勢いで減っていくが、気にする余裕は全く無い。


 およそ1分で、どうにか全てのブラックバットを倒しきった。魔石があちこちに散乱し、いくつか装備珠が落ちているのも見える。

 集めたいところだが、あと2分もすればダークネスの効果が切れ、次はホーンラビットとゴブリンの集団が階段を上がってくるだろう。ドロップアイテムを拾い集めていては、来ると分かっている敵の大群に備える時間が無くなってしまう。その場合、モンスターが階層境界を越えられないのは分かっているので、第3層に逃げるのが無難な選択肢になる。

 ここでドロップアイテムを集めて撤退するか、ホーンラビットとゴブリンに備える---つまり、大群と戦うか。魔力残量は8割くらいあるが……。


「……やるか」


 大群とは戦うが、魔力残量が4割を切ったら第3層へ逃げる。そうと決めたら、まごついている暇は無い。

 敵を待ち伏せるのなら、やはりトラップを仕掛けるに限る。倒せなくとも動きさえ鈍らせれば、魔法で撃ち抜く時間を長く確保できる。


「"パラライズトラップ"、"パラライズトラップ"、"パラライズトラップ"---」


 踏むと弱めの電流が流れ、相手を痺れさせる設置型魔法を階段に仕掛けていく。攻撃力が低いので消費魔力量が少なく、こういう場面ではコストパフォーマンスの良い魔法だ。

 30個ほど仕掛けたところで、時間切れになった。


「……来たか」


 ダークネスの効果が切れたのだろう、ホーンラビットとゴブリンが一気に階段を上ってくる。見るとホーンラビットの群れが前、ゴブリンの群れが後ろに比較的固まっているようだ。合計で100体くらいはいそうだ。

 さあ、トラップ地帯まであと15メートル、10メートル、5メートル……今だ!


「焼き払え、"ルビーレーザー"!」

「「「「ギッ!?」」」」


 トラップ地帯に敵の最前列が差し掛かる直前、ルビーレーザーを放つ。2回目のダークネスはモンスター達が慣れてしまっている可能性があったので、ここは貫通力のあるルビーレーザーを選択した。

 赤いレーザーが右から左へ一瞬で走り抜け、前列にいたホーンラビットを10体ほどまとめて焼き切る。だが、まだまだモンスターはたくさんいる。

 仲間を倒されて怒ったホーンラビットが、一斉にこちらへ突進しようとしてくるが……。


---バチッ!

「「「ギッ!?」」」

「「「「ギィッ!?」」」」


 最前列のホーンラビットがパラライズトラップを踏み抜き、体を硬直させる。そこに後続がつっかえて、突進の勢いが完全に削がれていく。


「"サンダーボルト・チェイン"!、"ライトショットガン・ダブル"!、"ルビーレーザー"!」

「「「ガビッ!?」」」

「「「ギィィッ!?」」」


 その隙を逃さず、魔法を連射する。サンダーボルトは群れの奥へ飛ばし、ライトショットガンとルビーレーザーで近場の敵をガンガン薙ぎ倒す。

 魔力がゴリゴリ削れていくが、目に見えてモンスターの数も減っていく。俺の魔力量が4割を切るのが先か、モンスターが全滅するのが先か……さあ、勝負だ!



 ◇



「これで最後だ、"ライトショットガン・ダブル"!」

「ギィッ!?」

「ギャッ!?」


 最後に、手負いのゴブリンと角が半ばで折れたホーンラビットを仕留め、モンスターの大群をどうにか捌ききった。残り魔力量は4割ちょっと、本当にギリギリだった。

 一応は辺りを警戒するが、襲ってくるモンスターはどうやらもういないようだ。


「……………ふう」


 残心を解き、その場にへたり込む。

 ……な、なんとかなったな。正直、生きた心地がしなかったよ。


「………」


 第4層の方を見下ろす。キラキラとしたものがそこら中に散らばっており、魔石、武器珠、防具珠、装飾珠、角……実によりどりみどりだ。




 ……ん?


「……なんか、変なのが混じってなかったか?」


 よく分からないが、とりあえず回収だ回収。


「"アイテムボックス・収納"」


 落ちているもの全てを指定して、アイテムボックスに収納……したつもりだったのだが。一度では回収しきれず、まだたくさんのアイテムが散らばっている。


「"アイテムボックス・収納"……くっ、まだ入りきらないのかよ。"アイテムボックス・収納"……まだ少し残ってる!?」


 結局、4回目のアイテムボックス・収納で全てのドロップアイテムを回収しきることができたが……魔力残量が少し減り、ちょうど4割くらいになってしまった。

 もしかしたら、一度に収納できる数に上限があるのではないだろうか。この感じだと50個ぐらいが上限な気がする。


 ……アイテムボックスの中、見るのが怖いなぁ。とんでもないことになってそうだ。


「………」


 まさか、第4層に立ち入った瞬間にあんなことになるとは。軽く手を出していい階層ではなさそうだが、他のダンジョンもこんな感じなのだろうか。それとも、亀岡ダンジョンだけが特殊なのだろうか。

 まあ、考えてても仕方ないか。ドロップアイテムの拾い忘れが無いかもう一度確認して、今日はもう引き上げるとしよう。第4層のビューマッピングができていないが、もう一度立ち入る勇気はさすがに無い。

 ……よし、ちゃんと全回収できているな。階段が安全地帯ではないと分かった以上、長居は無用だ。早足で去るとしよう。


 皆様、あけましておめでとうございます。いつも拙作"【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記"をお読みくださいまして、ありがとうございます。


 本話の投稿日である2024年1月6日をもちまして、拙作"【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記"は総合評価20,000ptを頂く事ができました。また、翌1月7日には月間ローファンタジー1位となり、PV数合計も500,000を超えました。☆評価も1300人を超える方々に評価して頂き、頂いたご感想も30件を超えました。

 初期から応援してくださった皆様、ブックマークをして頂いた皆様、ご評価を頂いた皆様、ご感想を頂いた皆様のおかげで、遂にここまでくることができました。本当にありがとうございます。


 今後も、週二回の投稿ペースを落とさずにいきます。まずは目標としていた10万文字まで、あと少し……!


 皆様、本当にありがとうございます。今後とも本小説を、よろしくお願いいたします。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。


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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
[良い点] 京都在住で資格取得も興味がある性のため、出てくる地名、西大路駅の話、資格の話など、どれも身近でとても楽しく拝読しています。 [一言] 酸欠・硫化水素危険作業主任者はかなり取りやすい資格です…
2024/01/09 02:20 退会済み
管理
[気になる点] 古物商とか毒・劇物取り扱い、食品衛生管理なんかの資格も面白そう
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