4−48:飃嵐大鷲(ディザスターイーグル)・中盤戦
「"ライトニング"」
――ゴロゴロゴロ……
――カッ!
翼が凍り付いたディザスターイーグルに向けて、ライトニングを放ってみる。【風魔法】で自重を支えているような状態なら、この攻撃も命中するかと思ったのだが……。
「ガァッ!」
――ヒュッ!
――ドォォォォン!
羽ばたき1つしないまま、滑らかに空中を滑って雷撃を回避してきた。俺が考えていたよりも【風魔法】の錬度は高いらしい。さすがは特殊モンスターといったところだろうか。
ただ、やはり少し動きが鈍いようにも感じる。それでもライトニングを軽々と避けてしまう辺り、ディザスターイーグルがスピード特化の強敵であることに疑いの余地は無いな。
「ほいっ」
――ブォン
なので、再度防壁叩き付け攻撃を試みる。ライトニングは予兆があるが、防壁叩き付けは腕を軽く捻るだけなので予備動作がほぼ無い。これならさすがに当たるはずだ。
――バヂッ!
「ギャウッ!?」
案の定、ディザスターイーグルの体が防壁に弾かれ、再び大きく傾いだ。2度目ゆえ向こうも警戒していたとは思うが、反応はできても体がついていかなかったのだろう。
「もう1度! "風昇斬"!」
――ヒュッ!
「イケ〜! "アクアショット"!」
――バシュッ!
「きぃっ!」
――パァァァッ!!
そして当然、隙を晒せば遠距離攻撃の雨あられが飛んでくる。そこを見逃すほど、うちのパーティメンバーは甘くない。
――ザシュッ! バシャァッ! パリパリパリッ!
「グギャァ!?」
「"アイスロック"ネ〜!」
――パキパキパキ……
「ギャァァッ!?」
先ほどの焼き増しのような光景が、目の前に広がっていき……重ねて氷を張り付けられたことで、見るからにディザスターイーグルの動きが不安定となった。【風魔法】で今もなんとか浮いてはいるが、どうも体勢が安定しないようだ。
……おそらく、翼に付いた氷が原因だろう。重量増加ももちろんだが、俺自身そこまで詳しくはないものの、自然界に住む鳥や飛行機の翼は流体力学的に洗練された構造となっているらしいからな。そこに気流を乱すような物体が付くことで、本来の飛行性能を発揮できなくなる事例は相応にあるらしい。
氷が付着したままの翼で飛んだ結果、大事故となってしまった旅客機もあるらしいしな……傍目には大したことが無いように見えて、飛んでいるものにとっては決定的な事象に陥ってしまっているのかもしれないな。
「きぃっ!」
――パァァァ……
トドメは、やはりヒナタに任せることにした。【光属性攻撃】のスキルを身に纏い、大空へと舞い上がり……上空から一直線にディザスターイーグルへと向かっていく。
「グァッ!?」
「お前の相手はそっちじゃない! "ライトニング"!」
――ドォォォォン!
「ギャッ!?」
一方の俺たちはと言うと、今もダイブイーグルが防壁にぶつかっては落ちていくので、そちらの処理も並行して行わなければならない。光り輝くヒナタの方へ目がいくダイブイーグルも何体か居たが、それは雷撃音で強制的にこちらへ意識を向けさせた。当たれば倒せるので一石二鳥でもある。
そして、ディザスターイーグルはもう1体いる。こういうトドメの時こそ横槍を入れられ易いので、その警戒はしっかり行った。
「グァッ!?」
「きぃぃぃぃっっ!!!」
――ドシュッ!!
ヒナタの急降下突進攻撃が、迎撃もままならないディザスターイーグルに見事直撃する。ヒナタが突き抜けた後のディザスターイーグルには、大きな穴が開いており……それが決定打となった。
「グァ……」
――ボシュゥッ!
ディザスターイーグルが白い粒子へと還り、空中にドロップアイテムを撒き散らしていく。沈んでいく偽夕陽に照らされて、魔石と装備珠がキラキラと輝いていた。
これで、まずはディザスターイーグル1体討伐完了だ。身構えてはいたが、どうやらディザスターイーグルにファイナルアタックは無いらしい。
「………」
もう1体のディザスターイーグルに、動きは無い。こちらを見据えつつ、ヒナタの動きを確認しながら飛ぶ位置を微妙に調整していた。
先ほどの戦闘で、防壁叩き付け攻撃が飛行型モンスターに思いがけず有効であることが判明した。ならば、ぜひともそれを使っていきたいところなのだが……1つ、注意しなければならないことがある。
「グァウ……」
そう、今も欠伸混じりの態度で余裕綽々に観戦するワイバーンの存在だ。こちらから手を出さなければ、ワイバーン以外が全滅するまでは動かないだろうが……もし攻撃の1つでも掠ってしまえば話は別だろう。あのプライドの高そうな性格からして、激怒するなりなんなりして襲ってくるはずだ。
ゆえに、今の段階でワイバーンには絶対に攻撃を当ててはいけない。仮にディザスターイーグルを揺さぶるためだとしても、防壁を無茶苦茶に振り回したり物量で押し切ったりしてはいけないのだ。
……強くてやる気の無い敵を、あえてやる気にさせる必要などどこにも無いのだから。
問題は、残った方のディザスターイーグルがそのことをしっかり理解している点だろう。
「グァァ……」
ディザスターイーグルは、常に俺たちとワイバーンを結ぶ直線上に自身が来るよう飛ぶ位置を微調整している。俺たちの立ち回りを観察して、直線的な遠距離攻撃が多いことに気付いたらしい。
ここまで俺たちが見せた攻撃の中で、ライトニング系攻撃とヒナタの攻撃だけは直線的でない。そちらをディザスターイーグルは最大限警戒しているようで、しきりにチラチラと上空を見たり、ヒナタの動向を確認したりしている。予兆があれば、すぐに回避行動へと移るだろうな。
「……これでは迂闊に攻撃できませんね。避けられるとワイバーンに当たってしまいます」
「特殊モンスターって賢いのネ〜、少し見直したヨ」
「……でもまあ、逆に言えばその程度ってことだな」
特殊モンスターゆえ知能が高いといっても、所詮はモンスターだ。攻撃が前や上から来るものだと思っている。もしかしたら、こうなるかも……などということが想定できないわけだ。
「グァァッ!」
――ゴゥッ!!
ディザスターイーグルが、口からブレスを吐いてきた。ウインドブレスのようだが、ダイブイーグルのそれよりも威力が高そうに見える。ということは、おそらく……。
「【ウインドブレスⅡ】か、そりゃそうだよな。よっと」
――バヂヂヂヂッ!
防壁を少し斜めにし、受け流すようにして攻撃を防ぐ。向こうもそれは分かっていたようで、特に驚くようなこともなく淡々と空を飛んでいる。どうやら牽制程度に撃ってきたようだ。
「グァッ!」
――ゴォォォォッ!
続けて【風魔法】で作り出したと思われる竜巻が4つ、様々な方向からこちらに向けて迫ってくる。1つ1つの竜巻が非常に大きく、どうやらディザスターイーグルの大技と見て間違いなさそうだ。
今の一枚板のような形をした防壁では、真正面から攻撃を受け止めることになってしまうな……よし、ここは防壁の形を変えてみよう。
「防壁変化」
――ブォン
一枚板のような形から、上から見た時に放物線の形となるように防壁の形を変化させた。この形なら、竜巻をまともに受け止めるようなことにはならないはずだ。
――ゴォォォォッ!!
――バヂヂヂヂッ!!
「ぐっ……!」
竜巻が1つ、また1つと防壁に当たる。滑らかな形をした防壁に弾かれ、後ろの方へと滑るように流れていく竜巻だが……当たる度に、結構な圧が手元に加わってくる。どうやら結構な魔力が込められているらしいが、さすがは特殊モンスターの攻撃といったところか。
――ゴォォォォッ!
「「「「ギャァァッ!?」」」」
――ガガガガガッ!
ただ、その竜巻に大量のダイブイーグルが巻き込まれている。竜巻に振り回され、高々と打ち上げられたダイブイーグル共が力無くきりもみ落下し、地面に次々と激突してはドロップアイテムをばら撒いていった。おかげでダイブイーグルがかなり減り、頑張れば数えられる程度の数になった。
そして、受け流された竜巻は生み出された順番に霧散して消えていく。威力はあるが長続きしないタイプの攻撃魔法だったようだ。
「グァッ!?」
しまった、というような表情をディザスターイーグルが浮かべている。巻き込むつもりは無かったようだが、その攻撃はさすがに迂闊だと言わざるを得ないな。
……そして、これでディザスターイーグルの狙いが何となく分かった。もしかしなくてもこれ、持久戦狙いだろう? こちらを少しでも消耗させて、後ろで観戦するワイバーンに後を託すつもりか。
残念だが、そうはさせない。ここからは俺たちの攻撃ターンだ。
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