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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第4章:そして始まる、現代ダンジョン探索元年
174/205

4−25:横浜ダンジョン留学、出発の日


 時は流れて、4月21日早朝。


 権藤さん経由で、横浜ダンジョンの持永局長から打診を受けていたダンジョン留学……今日は、その出発の日だ。


「お見送りありがとうございます、権藤さん、朱音さん」

「恩田探索者は、亀岡ダンジョンの誇りだからな。局長たる私が見送らなくてどうするのだ」

「ふふん、当然よ」


 ほぼ始発の時間だというのに、権藤さんと朱音さんがわざわざ京都駅の新幹線ホームまで見送りに来てくれた。これから1週間ほど京都を離れるので、しっかりと2人の顔を心に刻んでおかなければな。

 ……まあ、朱音さんに関しては昨日から俺の家で一緒に過ごしていたワケだが。もはや第2の我が家というくらいの勢いで朱音さんが入り浸っており、今日も京都駅まで同じ電車でやってきている。色々あって寝坊しかけたが、わりと普通に出発時間に間に合うことができた。


「気を付けてね」

「ああ、朱音さんも無理しないようにな」

「もちろんよ、なんたって私は亀岡ダンジョンの看板娘なんだから。疲れた顔なんて見せられないわ」


 朱音さんがそう言いながら、勝ち気な笑顔を満面に浮かべる。そこにマイナスの感情は全く含まれておらず……もしかしなくても、今この瞬間の朱音さんが心身共に一番充実しているのかもしれないな。


「ヒナタも、無理しないでね?」

「きぃ♪」


 ちなみに、ヒナタは今回ケージの中に入ってもらっている。

 ……ルール上はリュックの中でも良いのだが、さすがに今回は長時間の移動となるので、外が見えるようにした。真っ暗な中で2時間以上というのは、さすがにヒナタがかわいそうだからな……。

 幸い、ヒナタはかなり快適そうな様子なので、この状態のまま横浜ダンジョンまで連れて行くつもりだ。小柄で軽いので、ケージを運ぶのが楽なのはありがたいな。


「そうそう、先に送った荷物は向こうに届いてるそうだ。昨日の夜に連絡があった」

「おっ、そうですか。結構厳重に防護してましたけど、意外と早く着くんですね」


 実は、一昨日(おととい)の段階で装備一式を横浜ダンジョンに向けて発送している。迷宮探索開発機構が手配してくれた業者に装備品を渡し、厳重な封印を施したうえでトラックに載せた所までは確認していたのだが……まあ、無事に届いたようでなによりだ。

 もっとも、実は2線級の装備しかトラックには載せてないんだけどな。俺が普段使いしている装備品は、全てアイテムボックスの中に収めていて……トラックの中には、あえてランク3で統一した装備しか載せていない。


 まあ、正直なところ様子見だ。高ランク装備をホイホイと預けられるほど、見ず知らずの業者を簡単に信用することはできない。

 それに……俺の装備は、いささかランクが高すぎる。それで変に目を付けられても困るしな。

 権藤さんにもこっそり打診して、『恩田探索者だからな、もちろん俺は信頼している。ゆえに俺は、何も聞かなかったことにしておこう』との返答も貰っている。


――間もなく、11番のりばに〜


「おっと、もうすぐ来るか」


 パンパンに物を詰めた、大きめのスーツケースを右手に持つ。衣服なんかは都度洗濯して使っていくつもりだが、その前提で持っていく物を選別してもスーツケースに物が収まらなかったので、かなりの量をアイテムボックスに入れている。見る人が見れば、旅行慣れしていないのが丸分かりだな……。

 ホント、アイテムボックスがあまりに便利すぎるな。最近はアイテムボックスの存在が当たり前になりすぎて、『困ったらとりあえず入れておこう』って感じで整理整頓がどんどん下手くそになってきている自覚がある。こちらも気を付けなければ……。


――♪♪♪♪♪〜〜♪♪〜♪♪♪♪♪〜〜


 新幹線が到着し、ホーム柵が開いていく。電車の扉が開いても、早朝だからか降りてくる人は全くおらず……そのまま、俺は電車の中に乗り込んだ。


「それじゃあ、行ってきます」

「頑張れよ〜」

「気を付けてね〜」

「きぃ!」

「ぱぁ!」


 朱音さんのリュックの中にいたアキが、顔だけ出して手を振ってくれた。


――♪〜♪〜〜、♪〜♪〜〜

――バタンッ


 扉が閉まり、新幹線は一気に加速していく。権藤さんと朱音さんの顔が見えなくなるまで、窓から2人に向けて手を振り続けた。



 ◇



「………」


 新幹線の車内で、流れる風景を眺めながら横浜ダンジョンに思いを馳せる。意図せず別ダンジョンへ入り込んでしまったことはあるものの、本来の入り口から亀岡ダンジョン以外のダンジョンへ入るのは初めてなので、楽しみ半分緊張半分といったところだろうか。


「………」


 ふと、この2週間のことが頭に浮かぶ。


 ……最初のライブ配信から、2週間。その間に4回ほどライブ配信を行ったのだが、回を重ねるごとに同接数が増えていったのには驚いたな。通算5回目のライブ配信では常に同接数1万を超え、その時に亀岡ダンジョンチャンネルの登録者数も5万人を超えた。名実共に、人気チャンネルの仲間入りと言ってもいいだろう。

 ライブ配信ではない、普通の動画も何気に大人気だった。"権藤局長の1日"や"ダンジョン探索者基礎講座"、"亀岡迷宮犯罪対策課の業務紹介"といったおカタい内容も地味に視聴数を稼いでいたが……なにより人気だったのは、"提携企業紹介:株式会社ダンジョン・シーカーズ"の動画だった。


 この前のライブ配信が大成功を収めたことで、ダンジョン・シーカーズ……もとい、藍梨さんも動画配信に乗り気になってくれたようだ。従業員の業務評価にも組み込まれたようで、ダンジョン・シーカーズの社員が亀岡ダンジョンチャンネルの動画に出てくれるようになった。

 特に影響を受けたのが帯刀(たてわき)さんで、ダンジョン・シーカーズの稼ぎ頭たる彼女も遂に顔出し動画出演を承諾。今では、ライブ配信などにも積極的に参加してくれている。

 一方の九十九さんは本業会社の承諾を得られていないらしく、動画出演はまだ実現していないが……近く、結論が出るらしい。俺が横浜ダンジョンから戻る頃には、結論が出ているといいんだけどな。


「……おっ?」

「きぃ?」


 そんなことを考えながら、ぼ〜っと窓の外を眺めていると……とても特徴的な風景が、俺の視界に飛び込んできた。




 そう、日本が誇る神々の山、霊峰富士のお出ましだ。


 今日は朝から天気が良かったので、新幹線から富士山が見えるかもしれないと期待していたのだが……くっきりハッキリ、車窓から綺麗な富士山を拝むことができた。E席を取っておいて正解だったよ、朝からだいぶ幸先が良いな。

 ……さて、富士山が見えてくると、静岡県区間ももうすぐ終わりだ。ここから長い長いトンネルを抜けて、熱海駅を越えればまもなく神奈川県に入る。そこから新横浜までが地味に遠いのだが、新幹線は20分もかからずに走り抜けてしまうのだ。


「……ホント、久し振りだな、横浜……」


 確か、15年振りくらいになるのか。あの頃はまだ大学生で、インターンシップで横浜まで行ったんだったっけな……とても貴重な経験をさせてもらったよ。

 さて、あの頃から何か変わったのだろうか。今回も楽しみだな。



 ◇



――♪♪♪♪♪〜〜♪♪〜♪♪♪♪♪〜〜


「ふう、着いたな」


 新幹線の扉がゆっくりと開き、遂に俺は新横浜駅へと降り立つ。2面4線のシンプルな駅だが、ここが新幹線における横浜市の玄関口になるわけだ。

 ……さて、ここから乗り換えか。件の横浜ダンジョンは、新横浜駅ではなく横浜駅の近くにあるからな……そこまで、在来線に乗り換えて移動だな。




「……人多いな、いやまあ京都駅も多いけどさ」


 在来線ホームに着いたものの、朝のラッシュ時間帯とあってか待ち人でホーム上は混雑している。

 この横浜線、どうも様々な理由から、1編成の両数を8両を超えて増やすことができないらしい。それが原因で朝と夕方は特に混雑するのだが、例の感染症や別会社線への直通列車設定を経て、現在はだいぶマシになったそうだ。

 だが、それでも目の前のホームは人、人、人……1面2線という、最優等種別の新幹線が止まる駅とはとても思えないようなこぢんまりとしたホームであることが、混雑に拍車をかけているような気もするな。


 こういう場合、階段からより遠い車両……具体的には、一番前か一番後ろのどちらかの車両が比較的空いている。階段は最後尾車両の方に向けて下りているようなので、そちらに向けて移動を始めた。在来線はたかだか十数分程度の旅程だけど、荷物も大きいしあまり人に迷惑はかけたくないからな……。



 ◇



 ……さて、結論から言おう。




 横浜駅で結構迷いました。大阪駅や京都駅、名古屋駅もなかなかのものだったが、横浜駅もダンジョン駅と呼ぶにふさわしい複雑さだった。もうここがダンジョンでいいんじゃないかな……普通に亀岡ダンジョンの中よりも迷ったし。

 まあ、それでも到着予定時刻の15分前くらいには着けそうなので、結果オーライだな。




 さて、ここで横浜ダンジョンについて確認しておこう。

 以前から、横浜駅西口前には大きなバス乗り場があるらしいのだが……ダンジョン発生のその日に、当時は平面だったバス乗り場の上空にダンジョンゲートが現れたそうだ。それ以来、バス乗り場付近は名古屋のバスターミナルのようにビル化され、その6階部分にダンジョンゲートがある構造となっている。

 ……そう、実は横浜ダンジョンは、ビルの中にあるダンジョンなのだ。日本有数の巨大駅の眼前であるうえに、地下にも無数の構造物がある中でのビル建築……そこには、俺も知らない多大な苦労があったに違いない。

 だが、現実にビル建築は見事短期間でやり遂げられ、バス乗り場の機能を残したまま横浜ダンジョンバリケードは構築された。一般開放された今では日本一のダンジョンと呼ばれているのだから、世の中何が起こるか分からないものである。


「………」


 横浜ダンジョンビルへは、歩道橋を渡ってアクセスできるようだ。階段を上り、道路を越えて2階にある入り口へと向かうことにする。


「いらっしゃいませ、ようこそ横浜ダンジョンへ」


 中に入ると、カウンター越しに受付嬢さんが声を掛けてくれた。この辺の配置ややり取りは、どこのダンジョンでも変わらないらしい。


「あ〜、亀岡ダンジョンから来ました、恩田といいます。こちらが探索者証です」

「拝見いたします……恩田さんですね、持永局長よりお話は伺っております。横浜ダンジョンを代表しまして、歓迎いたします」


 探索者証を提出すると、受付嬢さんは軽く頷きながら内容を確認して返却してくれた。さすがに話は通っているようだ。


「エントランス前は待ち合いスペースとなっておりますので、しばらくこちらでお待ちください。今、迎えの者がこちらに――」




「――おう、見たこと無い顔だな、オッサン」


 受付嬢さんの言葉を遮って、なんかコテコテのチャラ男キャラっぽいのが現れた。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
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