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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第4章:そして始まる、現代ダンジョン探索元年
159/205

4−10:決着、反省、そして分配


「ごめん、もっと簡単に倒せると思ったんだけど……」

「逃げ回られてしまい、中々相手を捉えられませんでした……」


 戦闘を終えたところで、朱音さんと帯刀さんがどこか申し訳なさそうな様子で戻ってくる。通常のリザードマン相手に、苦戦はせずとも時間稼ぎを許してしまったからだろう。

 あまり気にするな……と言いたいところだが、お互いそうもいくまい。


「"アイテムボックス・収納"っと。いやいや、こっちも4人いたのにだいぶ手こずってたからなぁ……あ、ありがとな、影。"リリース・ドッペルシャドウ"」

――ウォォォン……


 影が元の平面状に戻り、俺の足下にスッと収まる。ハイリザードマンの気を引くという役割を、ドッペルシャドウはきっちり果たしてくれた。

 ……その様子を朱音さんがニヤニヤしながら見ていたが、俺は気付かないフリをした。そこを深掘りするのは、非常に危険だからな……。


 まあ、それはともかく。俺たちも、ヒナタを抜いた3対1でハイリザードマン相手に手こずってたわけだからな。戦い方もゴリ押しな部分が多かったし、もっと楽に勝てる方法があったかもしれない。

 その辺りの反省会をする必要があるとは思うが……それは、今じゃないな。


「まあ、戦いの反省は後にしよう。またモンスターが出てくるといけないし、とりあえず階段まで戻ろうか」

「「「了解 (です)!」」」

「きぃっ!」

「ぱぁっ!」


 さっきのダイブイーグルは、何の前触れもなく急に現れてきた。いつ遭遇するか分からない以上、ここに長居は禁物だ。

 全員を引き連れて階段を上り、第13層を後にする。


 ……今回は、ヒナタがダイブイーグル相手に圧勝できたのが収穫だったな。【オートプロテクト】の存在も大きかったとは思うが、仮にそれが無くとも元は特殊個体であるヒナタと、結局は通常モンスターでしかないダイブイーグルとではれっきとした実力差があるのだろうな。そうでもなければ、あんな一方的な展開にはなるまい。

 本当に、ヒナタが居てくれて助かるよ。






「……さて、皆さんお待ちかねの、スキルスクロール確認の時間だ!」

「イエーイ!」

「い、いえーい?」

「せっちゃん、無理してやらなくても大丈夫なのです」


 ああでもない、こうでもない、と今の戦いの反省会を終えたところで……定期的に開催される、お楽しみ会の時間に移る。

 特に今回は、ハイリザードマンこと爬人隊長を倒したことで、スキルスクロールを2つ入手している。前に戦った時は【ファイアブレスⅡ】のスキルスクロールのみドロップしたが、果たして今回はどうだろうか?


「"アイテムボックス・一覧"」


 早速、アイテムボックスの中身を確認していく。



 ☆


・ダイブイーグルの魔石×1

・爬人隊長の大魔石×1

・スキルスクロール【ファイアブレスⅠ】×1

・スキルスクロール【チャージ】×1


・スキルスクロール【鼓舞】×1

・スキルスクロール【羽音】×2


 ☆



「おっ、【ファイアブレスⅠ】と【チャージ】があるな」

「ハイリザードマンのドロップ品かしら?」

「多分な」


 【ファイアブレスⅠ】は普通のリザードマンも落とすらしいが、どうも相当な低確率みたいだからな。どちらかと言えば、ハイリザードマンからのドロップを狙った方が入手性は高いのだろう。

 ……もっとも、ハイリザードマンもそう頻繁に出てくるわけではないみたいだけどな。ホブゴブリンを除く他の特殊モンスターは出現報告が極端に少ないので、相対的にハイリザードマンの出現率は高めになっているが……横浜ダンジョンでさえ、2週間に1度出てくれば多い方らしいが。


「おっと、そういえば【鼓舞】と【羽音】のスキルスクロールも残ってたな。"アイテムボックス・取出"」


 さっきの戦いで得た戦利品に加えて、12回目辺りのゴブリンジェネラル戦でドロップしていた【鼓舞】のスキルスクロール、ヘラクレスビートル戦などでドロップしていた【羽音】のスキルスクロールも一緒に取り出す。この辺、アイテムボックスにしまい込んだまま忘れてしまっていたからな……そろそろ使い道をはっきりさせておこう。


「さて、皆に相談だ。誰が、どのスキルスクロールを使う?」

「とりあえず、私は【羽音】か【鼓舞】かしら? 【チャージ】は前に使わせて貰ったし……」


 朱音さんの言葉に、少し考える。

 朱音さんには【ファイアブレスⅠ】が良いんじゃないか、と一瞬思ったのだが……よくよく考えると、朱音さんは武技で高威力の遠距離攻撃ができる。仮にダイブイーグルと戦ったとしても、飛刃や飛突を使えば互角以上に撃ち合えるだろう。

 そうなるとファイアブレスは要らないから、必然的にその2択になる。


「そうだな……朱音さんはどっちがいい? 選ばなかった方を俺が貰おうかな」

「あ、私に決めさせてくれるの? それなら【羽音】の方がいいわね。敵の注意を引けそうだし」

「了解」


 朱音さんに【羽音】のスキルスクロールを手渡すと、早速念じ始める。スキルスクロールはいつもの通り白い光へと変わり、朱音さんの体の中へと入っていった。

 俺も【鼓舞】のスキルスクロールを使っておく。光が体内へと入り込み、新たな力を得た感覚が全身に広がっていった。


「……あ、やっぱりそういう効果なのね、コレ」

「敵の注意を引く感じか?」

「ええ。混乱効果もあるみたいだけど、低確率っぽいからアテにはできないわね」


 そりゃ、アキの霧の方がよっぽど強力だもんな。【羽音】の混乱効果はあくまでオマケ、本題は敵寄せ効果の方になりそうだな。


「さて……九十九さんは【チャージ】がいいか。攻撃の威力を一定の割合で増加させる効果らしいから、九十九さんの【焔の魔女】と相性は良いと思う」

「了解なのです、ありがたく頂戴するのです」


 【チャージ】のスキルスクロールを九十九さんに渡す。これで、九十九さんの火力が更に上がることだろう。


「そして、帯刀さんが【ファイアブレスⅠ】だな」


 九十九さんに【チャージ】を覚えてもらっている間、帯刀さんには【ファイアブレスⅠ】のスキルスクロールを差し出す。

 ……さっきの戦いの時も考えていたことだが、帯刀さんは遠距離攻撃を苦手としている。帯刀さんの【氷騎士】は防御寄りのギフトらしく、元から攻撃力がそこまで高くないのだが……こと遠距離攻撃となると、弱点を突いてさえゴブリンキングに通じなかった【氷魔法】しか無いのだ。

 その点を考慮すると、帯刀さんに【ファイアブレスⅠ】を使ってもらうのが一番良いと思うのだが……。


「私、【氷騎士】ですが大丈夫でしょうか……?」


 そう、そこだけが懸念点なのだ。

 言うまでもなく、炎と氷は非常に相性が悪い。ギフトとの兼ね合いで、もしかしたら【ファイアブレスⅠ】が思ったような効果を発揮してくれないかもしれないのだ。

 まあ、とは言え……。


「ものは試しだ。とりあえず使ってみて、結果が出てから考えてみようか」

「え? いえ、しかし……それ、今売れば250万円は行くのではありませんか?」


 帯刀さんが慌てたようにそう言うが、確かに今ならそれくらいは行くかもしれないな。


 ……スキルスクロールが値上がりしている理由は、ほぼ間違い無く迷宮関連基本法の公布と施行だ。ダンジョン探索者が法的に正式な職業として認められることが決まり、各種スキルスクロールの需要が増したのだろう。元々高値だったのが、3月20日に迷宮関連基本法が公布されてから一気に高騰し始めたのだ。

 【ファイアブレスⅠ】のスキルスクロールも稀にオークションで出品されるが、以前の倍以上の値段で取引されるようになった。昨今の物価高も合わせれば、帯刀さんの言う通りの値段はすぐに付くだろう。


「確かに、それくらいは堅いだろうな」

「だとすれば、すごくもったいないです。もし、私のギフトと相性が悪かったら……」

「ふむ、なるほどな」


 帯刀さんの考えももっともだ。完全に役立たないスキルと化す可能性があるならば売って金銭を得た方がいい、という考え方は当然ありだと思う。

 しかし……。


「だけどさ。うまくいかない、という事が早めに分かればそれだけで十分な収穫だろう? もちろん、うまくいけばそれでヨシだ、何の問題も無い」

「………」

「言い方は悪いかもしれないが、所詮は【ファイアブレスⅠ】なんて同系統で1番弱いスキルだ。これを【ファイアブレスⅡ】のような上位スキルでやらかしたら、それこそ大きな損失になりかねない」


 俺と九十九さんは、習得してもあまり意味が無いからな。【ファイアブレスⅡ】持ちの俺と【火魔法】が得意な九十九さんが今さら下位互換的なスキルを得たところで、それこそ使わないスキルと化すことは目に見えているのだから。


「だから、今試してみないか、帯刀さん?」

「し、しかし……」

「よし、それなら代わりに【羽音】のスキルスクロールを売ろう。こっちも今は100万円くらいになるから、いい臨時収入になるはずだ」


 4人で割って25万円、俺の前職の月収よりも多い (手取りではなく、総支給額で比較してなお多いのが悲しいところ)。これほどの大金が急に手に入ることもあるのが、探索者という職業であり現代ダンジョンという場所なわけだ。


「……わ、分かりました」


 そこまで言って、ようやく帯刀さんが小さく頷いてくれた。彼女の気が変わらないうちに、【ファイアブレスⅠ】のスキルスクロールを素早く手渡す。


「………」


 それでも、少しの間悩んでいた帯刀さんだったが……遂に、スキルスクロールへ念じる。

 スキルスクロールから変化した光が、帯刀さんの体へと吸い込まれていった。


「……どうだ? いけそうな感じか?」

「いや、まだ分からないでしょ」


 すぐ朱音さんにツッコまれた。なんでい、冗談じゃねえかよぅ……とまあ、それはおいといて。


「帰り際に、第5層辺りで試してみるか?」

「……はい、ぜひお願いします」


 ここでは敵が強すぎるし、インプやリザードマンのように火が効かない敵もいる。ゴブリンとグレイウルフ、あとはブルースライムしか出てこない第5層で試すのが一番いいだろう。


「………」


 帯刀さんがそわそわしている。やはり探索者として、新しいスキルを得ると試してみたくなるのだろう。どこかワクワクしたような様子を隠せていない。

 だが、それでいいさ。俺だって【鼓舞】を試したくて仕方ないのだから。


「あとは魔石だけど……」

「きぃ」

「ぱぁ」


 爬人隊長の大魔石を出してみたが、アキはともかくヒナタもあまり食べたくなさそうな表情を浮かべている。これは、どういうことだろうか……?


「そうか……よし、それならコレは売ってしまおう」


 特殊モンスターの魔石だからな。大きくて色合いも良いし、それなりに高値で売れるだろう。第4層のモンスター狩りで得られる利益が大きすぎて、少し霞んでる感はあるけどな。


「それで、ダイブイーグルの魔石は……?」

「きぃ」

「ぱぁ」


 こちらも、2人とも食べる気は無いようだ。お腹が空いていないのか、単にこの魔石が苦手なのかは判断しがたいが……まあ、それならこっちも売ってしまおう。2人の食事は、ラッシュビートルの魔石があるから十分に賄えるしな。


「"アイテムボックス・収納"っと。よし、そろそろ地上に向けて移動を始めようか。道中で余裕があれば、色々とスキルを試してみよう」

「「「了解(です)」」」

「きぃっ!」

「ぱぁっ!」


 全員で頷き合い、地上を目指して歩き出す。

 ……さて、帰り道は平穏無事に終われるだろうか? こういう時って、大体何か起こるんだよなぁ……。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
こんにちは。 >ヒナタもアキも食べたくなさそう もしかして魔石にも、人間には解らない味の良し悪しがあるのかな?
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