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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第4章:そして始まる、現代ダンジョン探索元年
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4−6:ジグザクに行くと時間がかかるなら、まっすぐ登ればいいじゃないか


 1時間ほどの昼休憩を終え、階段を下りて第12層に立つ。階段前広場から前方を見上げてみると……第11層の焼き増しのような光景が、目の前には広がっていた。


「第12層も変わらないわねぇ」

「おいおい、またコレを登るのかよ?」


 またもやそびえ立つ高い崖と、ジグザクに伸びる上り坂にゲンナリとしてしまう。1度目は新鮮に感じたが、2度目ともなるとその感動は半減どころか、ゼロを下回ってマイナスにまで落ち込んでしまっている。


「とりあえず"ビューマッピング"っと……さて、どうしようか?」


 のんびりと構えているように見えるかもしれないが、実は頭をフル回転させている。ここは早めに結論を出さないといけないからだ。

 ……第12層の階段前広場も、濃い目の藪に囲まれている。今はまだ平穏無事だが、そのうちモンスターが出てくることだろう。その前に行動方針を決めてしまいたいところだ。


 ここ(第12層)の上り坂も長そうだし、崖も心なしか第11層より高い気がする。今日は帰ってから他にやりたいことがあり、できれば30分くらいで頂上に着きたいところだが……正攻法では少し厳しいだろう。ならば、どうするか。


 第11層の頂上からスタート地点を見下ろした時に、ふと思ったことを実行してみることにする。


「ものは試しだ、崖を飛び上がってみるか。"ハイジャンプ・オール"」

――フワァ……


 ここにいる全員に、跳躍力が大きく上がる付与魔法を唱える。素で空を飛べるヒナタには不要だが、無意味ではないので一緒に掛けておく。

 ハイジャンプの魔法には跳躍力を上げる以外にも、落下速度を緩くしたり体を軽くしたりする効果があるからな。飛行を補助する効果もある。不要だが無意味ではない、というのはそういう意味だ。


「で、だ。こうしたら……」

――ヒュッ!


 一息で15メートルほど跳び上がったが、それだけでは高さが全く足りない。

 ……だが、崖には岩が突き出た部分が無数に存在し、手を掛けられる場所がたくさんある。そこを利用して体を持ち上げ、更に上へと跳び上がっていく。


 8回ほどそれを繰り返すと、目の前の風景が大きく開けた。どうやら、上り道の途中に無事合流できたらしい


――スタッ!

「よし、いい感じだな」

「きぃっ!」


 ヘアピンカーブ1個分を、一気にショートカットすることができた。所要時間は1分未満、道なりに歩けば5分ほどかかることを考えると、実に5分の1ほどの短縮成功だ。

 魔力消費量が多い (今ので8%ほど持っていかれた)ことを考えると、あまり多用はできないけどな……。それに、崖上りの途中でハイジャンプの効果が切れてしまうと非常に危険だ。このルートを安全に使うためには、更なる検証が必要となるだろう。


「到着!」

「おー、私たちもいけたのです」

「意外といけるものなんですね」

「ぱぁっ♪ ぱぁっ♪」


 さあ、戻って朱音さんたちと合流しよう……と思っていたら、4人とも後追いで登ってきた。あの崖を登るのは結構勇気がいると思うんだが、どうやら女性陣もアキも非常に勇敢な人たちであったらしい。

 ……ん? 朱音さんが、ちょっと怒った顔でこっちに歩いてくるな……?


「ちょっと、恩田さん?」

「ん、なんだ?」

「勝手に1人で行ったらダメでしょ! モンスターと出くわしたら危ないじゃないの!」

「……あ」


 確かにそうだ。単にポップ率が低いだけで、モンスターは濃い藪の近く以外のところにも出現する。

 そして、もし跳び上がった先にモンスターがいたら……。


「恩田さん、分かった?」

「ああ、ごめん。次は気を付けるよ」

「本当ね? もし、次に同じことをやったら……これ、だからね?」


 やや上目遣いに、デコピンをするようなそぶりを見せる朱音さんだが……なぜか、仄かに顔を赤らめている。これは、何か別の意味があるのだろうか? 俺にはピンときていないが……。


「……と、ところで恩田さん。ここまでの地図ってできてるの?」


 ああ、その感じはもう気にしないでくれってことね。その無言のサイン、確かに受け取ったよ。


「ん? ああ、そうだったな。"ビューマッピング"」


 上に登ってからはビューマッピングを使っていなかったので、忘れないうちに使っておく。

 第11層に引き続き、第12層もヘアピンカーブの所以外はまっすぐな道が続いている。ゆえに、ビューマッピングでもほとんどの地形をしっかり捉え、地図に転記することができている。たまに影となった部分が、ほんのちょっとだけ欠ける程度だ。

 その僅かな欠けを気にする俺ではないので、欠けている場所までわざわざ確認し行くつもりも無い。このままでも、地図としては十分だからな。


「ここまでの地図なら、ほぼできてるよ。これがあれば迷わず帰れるだろうな」

「ねえ、それデータか何かで出力することってできる? できれば、私も貰いたいなぁって」

「出力?」

「あ、それは私も欲しいのです」

「できれば、私も頂きたいです」


 朱音さんに続き、九十九さんと帯刀さんからも声が上がる。なんだかんだで後回しになっていたが、そろそろ考える必要があるか……。


「……まあ、とりあえず第12層を抜けてしまおうか。ここで考え込むのはあまり良くないし」

「あ、確かにそうね」

「よし、それじゃあ先に行くぞ」


 そう言ってから、俺は足に力を込めた。






 そうして、後は一気に崖を跳び上がっていく。最初は少し怖かったが、そのうち慣れてむしろ爽快な気分となった。


 ……ただし、朱音さんが懸念していたことも当然の如く起きる。


「「「シャァッ!?!?」」」


 5回目の崖登り後、道の真ん中でリザードマン3体と遭遇した……のだが。どこか、リザードマン共の様子がおかしい。

 なぜか俺を見て、驚いたかのように固まっているのだ。いわゆる俺の奇襲攻撃扱いなのだろうか、リザードマンが棒立ちで隙を晒している。


 もちろん、その隙を逃す手は無い。


――スタッ!


 空中でリザードマンの姿を認めた時から、魔法の準備は進めていた。それを着地と同時に、リザードマンに向けて放つ。


「食らえ、"サンダーボルト・バースト"!」

――ヂヂヂヂヂヂヂヂ……


 俺が選択したのは、右手からボール状に成形された電撃を高速で放つ魔法だ。硬式野球ボール大の大きさまで電撃を圧縮しており、ボールの中では激しい電撃が幾筋も(ほとばし)っていた。


――バヂッ!!

――バヂヂヂヂヂヂヂヂ!!

「「「アギャギャギャギャギャッッ!?!?」」」


 ちょうど真ん中に立っていたリザードマンへ、電撃ボールが命中する。その瞬間にボールは炸裂し、辺りに電撃を激しく飛び散らせた。

 似たような魔法にライトニング・サークルがあるが、それよりも消費魔力量は多い。だが、ライトニング・サークルよりも威力が高いので、リザードマンにも十分なダメージを与えることができる。


――スタタタッ!

「あらら、電撃音が聞こえたからそんな気はしてたけど……リザードマンがビリビリしてるわね」

「上がってきたら、もう一押しの状態だったのです。さすが恩田さんなのです」

「ぱぁっ!」


 電撃エネルギーが発散しきったところで、後続の4人も道に跳び上がってくる。一方のリザードマンは3体とも麻痺状態に陥ったようで、倒れたままピクピクと小さく痙攣していた。


「トドメは任せていいかい、帯刀さん?」

「はい、私にお任せを。

 ……はぁっ!」


――ズバッ!

「ギャッ……!?」

――ズブッ!

「シャゥッ……!?」

――ドスッ!

「ゲブッ……!?」


 帯刀さんが、丁寧にリザードマンの首を突いていく。人に似た姿のモンスターが、共通して持つ弱点部位……そこを突かれたリザードマン共が、白い粒子へと還っていく。

 後には、魔石3つと武器珠1つが残った。


「"アイテムボックス収納"っと。さて、先に進もうか」

「「「ええ(です)!」」」

「きぃっ!」

「ぱぁっ!」


――ヒュッ!


 更に上を目指して進む。

 ……奇襲扱いになると、こちらに有利な状況で戦闘を始めることができるんだな。今までそういうことが無かったから、今回でまた1つダンジョンに関する新たな知識を得ることができた。






「よし、着いた!」

「きぃっ!」


 最後の崖を登り切り、第12層の頂上広場へとたどり着く。時計を見れば、第12層の攻略を始めてからまだ10分ほどしか経っていない。

 ハイジャンプの効果は最後まで切れなかったが……大体15分くらいは保つ感じだろうか? パワーゲインやプロテクションよりも長い気がするのは、直接的に戦闘に関わるようなバフではないからだろうか。


「よっと。あら、もう頂上?」

「うんしょ。坂を上がるよりずっと早いのです」

「ふぅ、到着ですか。あっという間でしたね」

「ぱぁっ♪ ぱぁっ♪」


 後続の4人も、最上部まで無事に登ってきた。

 ……このショートカットはアリだな。モンスターとの遭遇率が低く、遭遇しても奇襲扱いで確実に先制攻撃ができる……リスクが小さくてかつ早いとは、まさに理想的な時短方法だ。ぜひとも、第11層でも活用していこう。


「この勢いなら、第15層まではスイスイいけそうだけど……どうする、恩田さん?」

「そうだな……」


 朱音さんの言う通り、行けるところまで行ってみたいのはやまやまなんだけどな……。


()()の準備をしないといけないからさ、今日は早めに帰りたい」

「アレって……もしかして、動画配信のこと?」

「そうだ。それを考えると、探索できるのはあと1時間くらいかな」


 せっかく、第10層で第二級陸上特殊無線技士の効果を確かめたんだ。俺がいれば、第15層まではライブ配信をすることだってできる。その辺を含めて、今日は権藤さんに相談しないといけない。

 ……ダンジョン探索者という職業には、なんだかんだで愛着が湧いてきた。新年度にもなったし、少しでも探索者の人口増加に寄与できればいいけどな。


「……第13層で最後かな。とりあえず行ってみようか」


 全員で頷き合い、階段を下りていく。さて、次はどんな階層だろうか……まあ、これまでのパターンから察するに、第13層も崖を登っていくんじゃないかと思うけどな。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
1stヒロインの価値が駄々下がってて心配になりますね。 関係前はフレーバー的に機能してたけど、後ではノイズになってるように思われます。 まぁ気に入らなければ読むななので。
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