2−8:困りごとは魔法で解決、だけどちょっとやり過ぎた?
◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇
本文より先にお礼を述べるべきと考えましたので、前書きにて書かせて頂きます。
前話以降、多くの方にブックマーク・評価を入れて頂きました。結果、日刊ランキングに本小説『【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記』が載ることと相成りました。
また、本小説において初めてご感想を頂きました。
初話投稿時からずっと応援してくださった方をはじめ、本小説を読んでくださった全ての方に心からの感謝を申し上げます。
また、今後も引き続きペースを落とさないよう投稿を続けていきたいと考えております……が、リアルの方で資格試験があるので、最後の追い込みのため投稿ペースが多少落ちるかもしれません。
その場合は、活動報告等でまた連絡させて頂きますので、よろしくお願いいたします。
朱音さんと探索した、翌日。今日は俺1人で探索する日だ。
「………」
昨日、一昨日と同じように電車に乗り、馬堀駅で降りて徒歩5分、着替え5分、ゲート移動2分。既にダンジョン入りし、俺は第1層の広場に立っていた。魔力は十分、気合も十分である。
今の時刻は、午前9時10分。これまでは午前10時からのスタートにしていたが、今日は朝9時の開場に合わせてやって来た。なお、同時刻に入った他の探索者は誰もいなかった。
ここ亀岡ダンジョンバリケードの開場時間は、午前9時から午後8時までだ。それ以外の時間は、建物に出入りすることはできないらしい。
なのでダンジョン内で午後8時を超えてしまった場合、午前9時になるまでダンジョンバリケード内に留まることになるそうだ。ゲートを出たすぐ近くに簡易宿泊設備が設けてあり、そこで開場時間まで待つことになるらしい。
「さて、今日は全力で稼ぎますか」
今日の狙いは、もちろんゴブリン。第3層まで一気に通り抜け、できれば1万円以上は稼ぎたいところだ。第4層への階段も見つけられればベストだが、無理はしないでおこう。
しかし昨日の探索で思い知ったが、ブラックバットの奇襲が厄介だ。【探知】スキルが本格的に欲しいところだが、調べたところそのスキルスクロールは相当貴重な品のようで、5000万円で取引された実績もあるらしい。ポーションを売れば買えるかもしれないが、さすがにリスクの方が大き過ぎる。
……というわけで、スキルで解決できないならギフトで解決してしまえばいい。
「"オートセンシング・クアッド"」
殺傷能力の無い、ただ距離を測るためだけの弱いレーザーを常に4本出し続ける魔法を唱える。もちろん同じ方向に出していては死角だらけになってしまうので、照射方向を超高速で切り替えるようにした。
この測定距離に大きな変化があれば、その場所に動く物体がいると判断できる。ブラックバットのように、常に動き続けるようなモンスターなら検知できるだろう。常時発動タイプの魔法なので魔力を常に消耗するが、自然回復量の方が上回っているので魔力は満タンの状態を維持できている。
「よし、行くか」
今のところ、ブルースライム相手に試したいことは特に無い。動きの遅いブルースライムでは、オートセンシングの効果を十分に検証することができないからだ。
さっさと階段を降りて、ブラックバット相手に検証したいところだな。
◇
ブルースライムを一切相手にせず、サクッと10分ほどで第2層に降りてきた。
「ギッ!? ギィィィ---」
「"ライトショットガン・ダブル"!」
いるかもしれないとは思っていたが、やっぱりいましたホーンラビット。俺を見つけて威嚇している隙にライトショットガン・ダブルを先制で浴びせかける……と同時に、オートセンシングが30メートルほど前方の上空で何かの動きをキャッチした。
「ギィッ!?」
いきなりの攻撃に反応が遅れたのか、ホーンラビットは回避動作もとれないまま散弾でしこたま撃ち抜かれる。それがそのまま致命傷になったようで、光の粒子から魔石が1つ地面に落ちた。
「「キィッ!?」」
---コトン、コトン
ついでに、かなり前方から断末魔が2つと、固い物が2つ地面に落ちる音。オートセンシングで動きを捉えていた存在---おそらくはブラックバットもまとめて仕留めたようだ。
他に動く物体は……無し。少なくとも、目に見える範囲のモンスターは全て仕留められたようだ。
「回収、回収っと」
魔石3つを拾い上げ、リュックに放り込む。残念ながら装備珠は出なかったようだ。
「さて……」
図らずもオートセンシングの試験運用ができたが、しっかりとブラックバットを捕捉することができた。もう少し検証は必要だが、効果はありそうだ……と、オートセンシングに次の反応が。
しかし、それはすぐに消えてしまった。これがブラックバットの反応なら、そのままこちらに近付いてくるはずだが……今は何も反応が無い。
「……まさか」
2日前の出来事が頭をよぎる。あの時は姿が見えないままに偶然撃ち抜いた、空を舞う幸運の蝶……!
「追いかけるか」
モンスターが近くにいないことを確認して、一気に駆け出す。道中で3回ほどオートセンシングに何かの存在が引っ掛かったので、その都度ライトショットガンを上空に発射したが……残念ながら全てブラックバットだった。道を塞ぐホーンラビット3体を出会い頭のライトショットガンで粉砕し、ブラックバット7体分も合わせて魔石10個と武器珠1つ、装飾珠1つをドロップしたので全て回収した。
そして、場所は十字路へ。右の道へ行けば第3層への下り階段に繋がるが、オートセンシングの反応は直進方向へ一瞬で消えていった。やはりというべきか凄まじい速さだ。
「………」
ここで待っていても、おそらくラッキーバタフライは来ない。こちらが存在を捉えた瞬間に、向こうもこちらの存在に気付いてものすごいスピードで逃げていくのだ。倒すなら前へ進むしかない。
「……"ライトショットガン・ダブル"!」
「「「キィィッ!?」」」
とりあえず、左の上空から忍び寄ってきていたブラックバット3体をまとめて叩き落とす。魔石3つに変わったので、サッと拾ってリュックへ放り込んだ。
今のところ、他にモンスターの影は無い。
「……行くか」
十字路をまっすぐ進んでいく。緩やかに左へカーブする道の途中、脳内マップが途切れたくらいのところに小部屋があるのを目視で確認した。
「"ビューマッピング"」
マップを埋めるため、ビューマッピングを使用する。小部屋の角が少し欠けているが、あと1回でこの道のマップは全て埋められそうだ。
……そういえば、魔力量がビューマッピング16回分くらいまで成長しているな。昨日は探索でも結構魔力を使っていたし、家に帰ってからもわざと魔力を空にする訓練をしたが、それらが実を結んだのかもしれない。
まあ、まだ仮説の段階だけどな。結論を出すのはまだまだ早い。
「……お?」
小部屋の入り口に立つと、最も遠い天井隅にオートセンシングの反応があった。その場所を見てみるが、いるはずのものの姿が見えない。
ビンゴだ、ラッキーバタフライで間違いない。ここで絶対に仕留めてみせる。
「食らえ、"ライトショットガン・トリプル"、"ライトショットガン・トリプル"、"ライトショットガン・トリプル"---」
ダブルで二倍なら、トリプルで三倍。三倍増しの散弾をありったけばら撒き、小部屋の中を弾幕で埋め尽くす。魔力が相当な勢いで消耗していくが、構うものか。
しかし、さすがはラッキーバタフライ。なかなか攻撃が当たらない。オートセンシングの反応を追うに、弾幕を掻い潜って部屋の外へ逃げ出そうとしているようだ。
だが、入り口に近付くほど俺との距離も近くなり、必然的に弾幕の密度も増していく。オートセンシングで位置も把握できているので、攻撃範囲からラッキーバタフライが外れることもない。
---バチッ! バチバチバチバチッ!
やがて、何も無いように見える空間で光の弾が1つ弾けた。ほんの一瞬だけ時間をおいて、同じ場所で次々と光弾が弾けていく。
ちょうど5発目の光弾が弾けたところで、20メートルほど離れたところにアイテムが3つドロップした。結局最後まで姿は見えなかったが、無事にラッキーバタフライを倒せたようだ。
「"アイテムボックス・収納"」
オートセンシングに反応が無いことを確認し、ドロップアイテムをサッとアイテムボックスへ収納する。ついでにリュックの中のアイテムも指定し、まとめてアイテムボックスへ収納した。
「"アイテムボックス・一覧"」
☆
・ホーンラビットの魔石×3
・ブラックバットの魔石×10
・ラッキーバタフライの魔石×2
・装備珠(赤・ランク1)×2
・装備珠(青・ランク1)×1
・装備珠(黄・ランク2)×1
・装備珠(黄・ランク5)×1
・アイアンアーマー(久我朱音用)×1
・ポーション×2
・ポータブル電源(満充電)×1
・電気式湯沸かし器×1
・カップ麺(醤油味)×12
・ミネラルウォーター(2リットルPET)×6
☆
思わぬところでポーションのおかわりが手に入った。装飾珠のランク5も手に入ったし、まさにオートセンシング様々だな。
……ただし、代わりに魔力を半分ほど消耗してしまった。ドロップアイテムも今は売れないので、今日だけ見れば損したことになる。まあ、今後やろうと思えばラッキーバタフライ狩りができるようになったわけなので、長い目で見れば大きなプラスにはなるか。
「"アイテムボックス・取出"」
アイテムボックスから装飾珠を2つ取り出す。それぞれに念じると、ランク2の装飾珠は薄手の金属製グリーブに、ランク5の装飾珠は布製の帽子に変化した。
まずはグリーブの装着具合を確かめてみる。その場で走ってみたり、足を大きく上げたりしてみたが違和感が全く無い。重量もさほどではなく、なかなかいい感じだ。
そして帽子の方だが、外して見てみると青っぽい色でつばが無いタイプの帽子だ。こういうのをベレー帽というのだろうか、シンプル過ぎてランク5の装備とは到底思えないつくりに見えるが……おそらくは、特殊な効果があるのだろう。
帽子を被り直してみるが、心なしかしっとりとした触感だ。例えば水属性の攻撃ダメージが無効になるとか、特定の種類の攻撃に対して防御効果を発揮するタイプの特殊効果持ちなんだろうな。
いずれにせよ、俺の防御能力がかなり高くなったのは間違いない。ゴブリンと戦う上での安全マージンが、また1つ大きくなったようだ。
「"ビューマッピング"っと。そろそろ行くか」
きっちりと小部屋の地図を埋め、オートセンシングに反応が無いことを確認してから改めて下り階段に向けて移動を始める。今回はちゃんと食料も買い込んできたし、安全地帯さえ見つかれば昼食もとれるだろう。
昼からも探索を続ければ……どれだけ稼げるか、楽しみだな。
ここで、一旦今の恩田高良の装備をまとめておきます。
武器:白玉の杖(ランク1)
特殊効果:光魔法使用時の威力を1割増
防具:見習い魔法士のローブ(ランク1)
特殊効果:受ける魔法ダメージ3割減
装飾品1:試製マジックシールド(ランク10)
特殊効果:魔力を込めると守備範囲が広くなる 魔力が自動的に回復する(回復速度:遅)
装飾品2:ホーリィバングル(ランク2)
特殊効果:体力・疲労が自動的に回復する(回復速度:遅)
装飾品3:フィアリルグリーブ(ランク2)
特殊効果:受ける物理ダメージ1割減 受ける魔法ダメージ1割減
装飾品4:ウォーターベレー(ランク5)
特殊効果:火属性攻撃ダメージ半減 水属性攻撃ダメージ無効 毒無効
フィアリルとは、鉄に5%ほどミスリルを混ぜた合金です。ミスリル含有量は少ないですがそこそこ軽く、物理にも魔法にもそこそこ強く、丈夫で安価という優秀な合金になります。
もっとも、強いモンスター相手となるとやはり力不足なので、テンリル(ミスリル10%合金、ランク4)やハフリル(ミスリル50%合金、ランク7)製の装備に少しずつランクアップさせていき、最後は全ミスリル(ランク10)製装備にする流れになります。
あと、オートセンシングについてはくどくなりそうなので細かい説明は省きました。とりあえず、動き回るモンスターを検知できると思ってもらえれば幸いです。
◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇
なろうに数多ある小説の中から、私の小説をお読み頂きまして誠にありがとうございます。
読者の皆様へ、著者よりお願いがございます。
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