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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く
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3−90:やっぱりさ、ラッシュビートルって出てくるタイミング早すぎない?


「ここが第8層か……風景はほとんど変わらないな」


 階段を下りきり、第8層に到着する。第8層はこれまでの階層とほとんど変わらず、階段前が広場になっていて、その周囲には緑が溢れていた。

 ……この様子だと、第9層も同じ風景が続きそうだ。第10層でボス戦を挟んで、第11層からまた風景が変わるのだろう……。


「相変わらず、のどかな風景ね。危険なモンスターが跋扈(ばっこ)する場所とは、とても思えないわ」

「モンスターさえいなければ、ピクニックしたくなるような場所だと思うのです」

「いいわね、それ。恩田さんと九十九さんと帯刀さんと私、4人でまた良さげな場所を探しましょうよ。これだけ広いんだから、そういう場所が1ヶ所くらいあってもいいでしょ」

「ふふっ、そうですね。ピクニック……とても楽しそうです」

「きぃっ! きぃっ!」

「ぱぁぁっ!」


 女子5人 (?)、和気藹々と話している……今回はちゃんと九十九()()だったな、朱音さんよ。

 とはいえ、みんな周囲の警戒は怠っていない。ダンジョンという超危険地帯の中にあって、程よく緊張した状態を継続するのは中々難しいものがあるが……それが全員、しっかりとできている。良いパーティメンバーに恵まれたものだな、俺は。


 改めて、周りを見渡す。今回は、藪の薄い道が1本だけ伸びているようだ。とりあえずそちらに進んでみるか……!?


「「「「敵襲!」」」」

「「「「ギャギャ?」」」」

「「「「ギャッ、ギャッ!」」」」


 槍を装備したゴブリンと、弓を装備したゴブリン。それぞれ5体ずつが、藪から一斉に飛び出してきた。ゴブリンアーミーとゴブリンアーチャー、これが通常階層での初遭遇になる。

 弾かれるように朱音さんと帯刀さんが前に出て、戦闘態勢をとった。敵の方が数が多いので、まずは離れて様子を見ることにしたようだ。


 こちらが動かないことを悟ったゴブリンアーチャーが、背負った矢筒から矢を取り出し……。


「"ライトニング・サークル"っ!」

――ゴロゴロ……

――カッ!


 その矢を弓に(つが)えられる前に、先手を打ってアーチャーの頭上へ雷撃を落とす。


――ドォォォン!!

「ギャッ……!?」

――バヂヂヂヂ……

「「「「ギギギギギ!?」」」」


 直撃雷を食らったアーチャー1体が一瞬で消し炭となり、円状に広がる電撃に触れたアーチャーが全員痺れて倒れ込む。更に広がっていく電撃が、アーミー3体をも巻き込み……電撃はそこまでで霧散した。


 こいつらはそこまで打たれ強くないので、ライトニング・サークルの着弾点から広がる電撃でも十分なダメージを与えられるだろうと考えたが……どうやら、その判断は正しかったようだ。最初に頭数を削っておけば、あとは有利に戦えるだろう。


 ……本音を言えば、こいつら相手に放つなら【ファイアブレスⅡ】がベストだった。それならアーミーも残さず倒せるからだ。

 だが、それだと射線上に立っている帯刀さんを巻き込んでしまう (朱音さんは火属性完全耐性なので、巻き込んでも問題は無い。ただ、そうだとしても心情的にあまりやりたくはないが……)。そのために、早く出せて攻撃範囲が広く、かつ前衛の2人に当たらないこの魔法を選択したわけだ。


 そして、この時点で敵10体のうち1体が既に魔石へと変わり、7体が痺れて戦闘不能状態。未だ無事なのは、もうアーミー2体だけだ。


「「ギャギャギャッ!?」」

「はあっ!」

「やあっ!」


 仲間が一瞬でやられ、戸惑いを隠せないアーミー2体。その致命的な隙を、朱音さんと帯刀さんが見逃すはずもない。

 一息に距離を詰めた2人が、それぞれのアーミーに向けて武器を大きく振りかぶった。


――ズバッ!

――ドスッ!

「「ガフッ……!?」」


 アーミー1体は帯刀さんから袈裟斬りを食らい、体を上下に断ち切られる。もう1体のアーミーは、朱音さんから鎧の隙間へ突きをねじ込まれ、そのまま押し倒されて地面に縫い止められる。その時の衝撃で持っていた槍を手放してしまい、朱音さんの足元まで転がってきていた。

 ……どちらも明らかな致命打だが、まずは帯刀さんに斬られた方のゴブリンアーミーが魔石へと変化する。


「ギャッ、ギィィィィ……」

「………」


 朱音さんの攻撃を食らったゴブリンアーミーは、必死に逃げようともがいているが……朱音さんの槍は全くビクともしない。

 そうしてソードスピアを突き立てながら、朱音さんが左手でアーミーの槍を拾い上げる。通常ゴブリンの特殊ドロップが棍棒だったので、武器を拾えばこちらも特殊ドロップになると考えたのだろう。


「ギッ……ギィ………」


 致命打を受けながらも、ゴブリンアーミーはしばらくの間ジタバタとしていたが……蓄積ダメージが許容量を上回ったのか、ピクリとも動かなくなった。そのまま、白い粒子へと還っていく。

 そのあとには、魔石と……朱音さんの手元に、短めの槍が残った。


「すみませんが、ここは戦いの場ですので……御免」

――ズバッ!

「ギッ……!?」

――ズバッ!

「ギャッ……!?」


 その間も、帯刀さんが痺れて倒れたアーチャーとアーミーに1体ずつトドメを刺していく。介錯の言葉を口にしながら、淡々と。

 万が一の反撃を警戒してか、近付いて槍や弓を拾ったりはしていないようだ。


 ……そうして、通常階層では初となったゴブリン軍団との戦闘は、あっさりと勝利をものにした。もちろん、こちらに損害はほぼ無い。


「よし、"アイテムボックス・収納"っと」


 防具珠が1つだけ落ちていたが、あとは全て魔石だった。残さずアイテムボックスに収納しておく。


「あ、恩田さん。これも入れといてくれる?」

「ああ、いいぞ。"アイテムボックス・収納"」


 朱音さんからゴブリンアーミーの槍を手渡しで受け取り、アイテムボックスの中に入れておく。一応は金属製っぽかったが、これもオークションで売れるのだろうか……?


「ねえ、恩田さん」

「ん? どうした?」


 そのまま、朱音さんが話しかけてくる。その顔には、ほんの少しだけ困惑の色が浮かんでいた。


「試練の間で戦った時も思ったけど……やっぱり、ラッシュビートルって明らかに強いわよね? なんであんなに出てくるタイミングが早いのかしら?」

「……だよなぁ」


 第6層から出現するラッシュビートル、第7層から出現するインプ、そして第8層から出現するゴブリンアーミー・アーチャー……比較すると、間違い無くラッシュビートルが一番苦戦している。ヒナタとアキが仲間になってくれたお陰で、その苦戦が長続きしなかっただけだろう。


 ……まあ、それも言ってしまえば"相性"なのかもしれないが。打たれ弱いモンスター相手には滅法強い俺がいれば、ゴブリンアーミー・アーチャーは物の数ではないし……朱音さんは火属性完全耐性装備を付けているので、インプ相手には強く出ることができる。

 一方のラッシュビートルは確かに強いが、状態異常耐性が穴だらけなのでアキの魔法がモロに突き刺さるし、ヒナタほど空を自由には飛べない。羽根を開いた状態の背中は明確な弱点部位になるので、決して完全無敵というわけではない。

 しかし外殻が固いうえ、弱点部位である背中はかなり高い位置にある。人間という生き物の特性上、ラッシュビートルの弱点を突くのは簡単なことではない。


 まあ、だからこそ搦め手を使うとか、連携して対処したりとか、そもそも戦いを可能な限り避けるとか……ラッシュビートルが相手だと、そういう頭脳的な行動が求められるわけだ。

 ……あ、もしかして。


「もしも、ダンジョンの創造主が居るんだとしたら……もしかしたら、そういうことを狙ってるのかもしれないな」

「え、そういうことって?」


 おっと、口から出ていたか。


「考え無しを弾く壁。それが"ラッシュビートル"というモンスターの役割なのかもしれないってこと。

 アレを倒すために、弱点を探ったり行動パターンを探ったり、あるいは戦闘を避ける方法を考えたり……色々と頭を悩ませただろう? そういうことを探索者に促すために、早いタイミングでラッシュビートルが出てきたんじゃないかなって思ったんだよ」

「あ〜……うん、確かにそうね」


 俺の言葉に、朱音さんは微妙な顔を返してきた。

 ……まあ、気持ちは分からなくもない。朱音さんからすると、色々と考える間もなくヒナタやアキがラッシュビートルを蹴散らしてたり、装備更新でラッシュビートルを外殻ごと叩き切れるようになってたりしたからな。今の朱音さんなら、ラッシュビートルに真正面から突撃してもどうにかなってしまう。だから微妙な顔をしているのだろう。


「ま、楽に倒せるに越したことは無いけどな。頭を捻らなくても敵を倒せるのなら、それが一番だとは思うぞ」

「きぃっ!」

「お、ヒナタもそう思うか」


 居るかも分からないダンジョンの創造主が、もしそういう意図でラッシュビートルを置いているのであれば……まあ、申し訳ないが俺たちはその意図に、あまり乗ってあげられなかったな。

 レベルを上げて物理で殴る。ただそれだけでクリアできるゲームなど、即ク◯ゲー判定されること間違い無しだが……こと現代ダンジョン探索においては、その状態が理想的なのだろう。魔力や体力といったリソースをほぼ消費することなく、モンスターをガンガン倒して先に進めてしまうのだから。


「よし、ゴブリンアーミーとアーチャーがそれなりの相手だということも分かったし、この階層はサクッと進んじゃおうか」

「恩田さんがリーダーで本当に良かったです。数が多かったですし、普通に戦えばゴブリンアーミー・アーチャーの軍勢は十分強敵の部類に入るはずなのですから……」

「です、でも簡単に勝てるならそれでいいのです。さあ行きましょう、なのです」

「きぃっ! きぃきぃ!」

「ぱぁっ!」


 未知の階層ゆえ、全員で辺りを警戒しながら先に進んでいく。


――ブ……ブ……

「………」


 ……ゴブリンアーミーとアーチャーなら、油断は禁物だが過度に警戒する相手じゃない。それはインプも同様だ。

 そう考えると、やはりここでもラッシュビートルが最大の警戒対象になるか。確実にこちらの消耗を強いてくる以上、この階層でも戦闘は可能な限り避けていこうと思う。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
こんにちは。 なるほどカブトムシくんはいわば『篩』の役割を担ってる可能性がある訳ですな。ということは更に奥に潜った時は、第二の篩としてクワガタくんが登場するかも(笑)
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