2−6:2日目の戦果、やはり仲間の有無は大きい
「誰もいないな……よし、"アイテムボックス・収納"」
無事にダンジョンゲート前まで戻ってきたところで、リュックに入っているドロップ品を全てアイテムボックスに入れ直す。さて、今日の戦果は……。
「"アイテムボックス・一覧"」
☆
・ブルースライムの魔石×4
・ホーンラビットの魔石×8
・ブラックバットの魔石×9
・ゴブリンの魔石×12
・ラッキーバタフライの魔石×1
・装備珠(赤・ランク1)×1
・装備珠(青・ランク1)×1
・アイアンアーマー(久我朱音用)×1
・ポーション×1
☆
こうして並べてみると、昨日に比べて明らかに魔石の数が多い。ラッキーバタフライやメモリアルドロップの件を除けば、半々で分けても昨日より実入りは多そうだ。
さて、昨日と同じく売れない物は除いて……うん?
「防具珠のことすっかり忘れてた」
「えっ、いつのやつ?」
「あれだ、第2層で俺が奇襲を受けた時に倒したブラックバットの……」
「あ〜、あの時の防具珠ね……それは仕方ないわ、色々あって防具珠を気にする余裕なんて無かったもの」
「そうだな。まあ、ランク1みたいだし売却一択かな」
「そうしましょう」
防具珠の扱いが決まったので、武器珠のほうも扱いを確認しておかなければ。
「武器珠ランク1のほうはどうする?」
「……私の槍、ちょっとガタがきてるかも。予備として持っておいてもらえるとありがたいわ」
「了解。再度確認しておくけど、鎧も保管でいいな?」
「お願いするわ」
ホーンラビット戦はともかく、ブルースライムの酸とゴブリン戦の打撃攻撃が消耗の原因っぽいな。やはり戦士タイプは武器の消耗が避けられないらしい。
朱音さん用に、武器珠の予備は常に持っておいた方がよさそうだ。
「あとは……俺の秘密、バレないように朱音さんも気を付けてな」
「ええ、分かってるわ」
朱音さんが喋るとは思わないが、一応は念押ししておく。
「じゃあ、"アイテムボックス・取出"っと。出ようか」
「ええ」
リュックの中に売却予定品を全て出す。ブルースライムの魔石が40円、ホーンラビットの魔石が800円、ブラックバットの魔石が900円、ゴブリンの魔石が1440円、防具珠ランク1が1000円……合計で4180円か。
後で仕分けするのが面倒なので、リュックの内ポケットを使って最初から仕分けした状態で出しておく。今のところ嵩張らないものだけなので、リュックの容量にはだいぶ空きがある。
……いつか、このリュックがドロップアイテムで一杯になるような。そんな探索ができるようになればいいな。
◇
「恩田さん、久我さん、お疲れ様です」
「「お疲れ様です」」
道すがら受付嬢に挨拶しながら、2人で換金所へと向かう。その道中で時計を見てみると、既に午後1時を回ってしまっていた。
魔法の練習に勤しんでいた昨日よりは早い時間に戻ってこれたが、ダンジョンにいると時間が経つのを忘れるんだよなぁ……。スマホでアラームをセットしておいた方がいいかもしれないな。
あ〜、お腹減った。ダンジョンバリケードに食堂でも設置してくれたらいいんだが、探索者の絶対数が少ない今は予算的に難しいのかもしれないな。
「おう、昨日ぶりだねぇあんちゃんよ!」
そうこうしているうちに、換金所にたどり着く。昨日と同じおっちゃんがカウンターにいた。
「おっ、今日は別嬪さん連れとるやないけ。あんちゃんも隅に置けんなぁ」
「パーティメンバーですよ。偶然の出会いでしたけど、本当に良い方と組めました」
「………」
余計な事を言うおっちゃんを適度に受け流し、リュックからドロップアイテムを出す。
「今日の戦果です。こちらの方とは半々でお願いします」
「はいよ。最初から分けてくれとるんやなぁ、たすかるでよ。おっちゃん1人だから、仕分けも大変でなぁ……ま、計算するから少し待っとき」
ドロップアイテムを持って、おっちゃんがカウンターの奥へ入っていく。さすがに数が多いからか、昨日のように即計算とはいかなかったようだ。
さて、事前の計算では4180円だったが、査定結果はいかほどかな?
「4180円やな。ただまあ、初探索の人もいるようやし少しまけとくわなぁ」
紙幣と硬貨を手に戻ってきたおっちゃんが、開口一番にそう言った。どうやら今日も少しオマケしてくれるらしい。
レシートとお金を受け取って金額を見ると、2200円だった。半分でそれだから、朱音さんの分も合わせて4400円か。合計額は昨日の3倍以上、朱音さんと2人パーティであることを考慮しても5割増以上の効率だ。
やはり、ゴブリンは収益源として優秀なのだろう。第一の壁と言われるだけあって、リターンも相応に大きいようだ。
ただ、時給換算だと約3時間で2200円だから……733円か。昨日よりは多少マシになったが、まだ最低賃金すら上回れていない。ゴブリンを集中的に狩れば、時給1000円くらいは簡単にいきそうだが。
なら、明日は第3層に直行してみるか。地図はできているので、明日以降はだいぶ効率を上げられるだろう。距離的には、モンスターと戦いながらでも20分あれば第3層までいけそうだ。
あと、1回の探索時間も少しずつ伸ばしていかないとな。今は3時間程度で切り上げているが、少しずつ長く潜れるよう体を慣らしていかないと深い層まで進むことができないからな。
さて、ロッカールームに……と、その前に。
「受付嬢さん」
「はい、恩田さん。どのようなご用件でしょうか?」
「今日もロッカーを借りたいんですけど……」
「あ、少々お待ち下さい」
昨日と同じく、受付嬢が読取機をカウンター下から取り出す……が、探索者証をかざそうとして受付嬢に止められた。
「恩田さんは、引き続き510番のロッカーをお使い頂けますよ。私への申告も不要です。これは初回利用の方を登録する読取機ですので……あ、久我さんは初回登録いたしますので、探索者証をかざしてくださいね」
なんと、そうだったのか。今後どうなるか分からないが、少なくとも探索者の数が大きく増えるまでは、510番のロッカーを俺が占有できるってことだな。
---ピッ
「……187と出ましたが、これで大丈夫でしょうか?」
「はい、女性用ロッカールームの番号ですので、それで合っていると思いますよ」
そうしているうちに、朱音さんも初回利用登録が済んだらしい。壁に貼られたダンジョンバリケード内地図を見たが、男性用ロッカールームと女性用ロッカールームはだいぶ距離が離れているみたいだな。
……そうだ、離れる前に一番大事なことを確認しておかねば。
「俺はもう帰るけど、朱音さんは午後も探索してく?」
「そうね……今日は初探索だし、ここでやめておくわ」
「分かった。次の空いてる日はいつになる?」
「え〜っと……ごめん、明日は用事があるから明後日になるわね」
「じゃあ、明後日の10時にダンジョンバリケード内集合でよろしく」
「分かったわ」
俺は明日も来るつもりだが、1人の探索になりそうだ。ブラックバットの不意打ちが怖いなぁ……どうにかできないかな?
「……あ、恩田さん!」
「ん? どうした?」
男性用ロッカールームに入ろうとしたところで、朱音さんに呼び止められる。
「あの、WINEの連絡先を交換しませんか?」
「おお、そうだったな。すっかり忘れてたよ」
スマホを取り出し、朱音さんの連絡先をWINEに登録する。どうにもお酒っぽい名前だが、れっきとした無料連絡用アプリである。
トーク画面を開き、朱音さんに適当なスタンプを送る。クマっぽい生物がクラッカーを鳴らしているスタンプが返ってきたので、やり取りは問題なさそうだ。
「……♪」
さて、ロッカーに装備を置いて帰るか……そういえば、朱音さんの家はどこなんだろう? 同じ方向なら一緒に帰れるかもしれないし、軽く聞いてみるか。
「朱音さん」
「……♪」
「朱音さん?」
「……♪」
「朱音さん!」
「!? な、なんでしょう?」
スマホを機嫌良さそうに見ていた朱音さんが、驚いたようにこちらを見る。何を見てたんだろうか……おっと、余計な詮索は不要だな。
「俺は西大路駅まで電車で帰るけど、朱音さんは? 電車で来たなら、せっかくだから途中まで一緒に帰れるかなと思って」
「に、西大路ね。私も電車だし、最寄りは京都駅だから途中まで一緒に帰れるわよ」
「了解。んじゃ、装備を置いたらバリケード前に集合で」
「分かったわ」
510番のロッカーに直行し、装備を収めて鍵をかける。
ダンジョンバリケードを出て10分ほど待つと、朱音さんが中から出てきた。
「お待たせしました」
「いやいや、全く待ってないから気にしないでくれ」
実際、スマホで色々と調べ物をしていたので退屈はしていない。
「そういえば、朱音さん寒くないのかい?」
「あ、よく言われます。昔から暑がりなのですが、」
そんな他愛もない話を朱音さんとしながら、馬堀駅へと向かう。次の京都方面に向かう電車の時刻も調べておいたが、ついさっき行ったばかりのようなのでしばらく時間はある。まあ、ゆっくり行こうかね。
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