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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く
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3−73:【闇魔法】の可能性、その1つをお見せしよう


 ヘラクレスビートルに向けて、【闇魔法】で作り出した赤い線を飛ばす。髪の毛よりも細くて長いそれが、ヘラクレスビートルの背中にたどり着き……そして、羽の合間に開いた僅かな隙間から中へと侵入いく。

 ……あくまで感覚だが、中でカチッと何かに接続されたような感覚を覚えた。


「"ブート・ライフスティール"」

――ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!

――ブッブッブッ!?!?


 ヘラクレスビートルの背中に繋いだ赤い線が、まるで血管のように脈動する。その脈動のたびに、ヘラクレスビートルが苦しそうに体を何度も跳ねさせ……同時に、俺の体力が少しずつ回復していった。


「恩田さん、その魔法って……もしかして【闇魔法】?」

「ああ、そうだ。1週間も経ってないのに、なんだか懐かしい気分だよ」


 【闇魔法】が得意とするのは、なにも高火力の攻撃魔法だけじゃない。ライフ・スティールのように敵から何かを奪い取ったり、ダークネスのように文字通り"闇"として利用したり……ややトリッキーな属性だが、使いこなせば非常に強い属性でもあるのだ。

 そしてライフ・スティールは、モンスターから生命力を奪い取る【闇魔法】になる。某国民的RPGでいう"ド◯イン"みたいな効果を持つ魔法、というわけだ。

 そして、その効果を発揮するためには、手から飛ばした赤い線を対象となるモンスターと繋げる必要がある。その時に繋がった部位を介して、相手の生命力に干渉するという性質を持っているわけだ。繋がった部位の魔法耐性が低いほど、より強く干渉することが可能となる。

 更に、この赤い線は任意の太さに調整できる。つまり、ものすごく細くしたうえでヘラクレスビートルの羽の継ぎ目から体内にねじ込み、弱点である背中と繋ぐこともできるわけだ。実際に今、そうやって背中と接続して生命力を吸い取っているので、魔法の威力はほとんど減衰されていない。

 赤い線を細くするほど威力は減ってしまうが、固い外殻越しに魔法を叩き込むよりはよっぽど効率的にダメージを与えられるし、線を細くするほど魔力消費量も抑えることができる。実際に、どんな攻撃にもビクともしなかったヘラクレスビートルが明らかに苦しそうな様子を見せているのだから、魔法の効果は推して知るべしだろう。


「コストとリターンがなかなか見合わなくて、出番が来なかった【闇魔法】だけど……まさかこんなにも早く(第6層で)使うことになるなんてな」


 燃費を一切気にしなければ、ラッシュビートルでさえ【闇魔法】で真正面から叩き斬れる。【闇魔法】の火力というのは、それほどまでに高いものなのだ。

 ……しかし、わざわざ魔力を大量に消耗してまでラッシュビートルを一撃で倒したいか、と言われると疑問符が付く。同じ"ラッシュビートルを倒す"という結果を得たいのであれば、仲間の力を借りて弱点を的確に突いた方が、よっぽど楽に達成できるからだ。急な連戦や遭遇戦の可能性もあるダンジョンにおいては、無駄な消耗を抑えるのは非常に重要なファクターとなってくる。


 そういう状況下ゆえ、大火力・高コストな【闇魔法】はここまで全く出番が無かったが……ヘラクレスビートルほどの強敵が相手なら、【闇魔法】の高コストも十分に見合うだろう。いつか使うとは思っていたが、それが予想より早まっただけだ。


――ブブブ!!

――パチン!


 おっと、ヘラクレスビートルにライフ・スティールの赤い線を切られてしまったか。吸い取る途中だった生命力が空気中に霧散し、そして消えてしまったようだ。

 この赤い線、魔法的な存在であるのと同時に実は物理的な存在でもあるので、物理攻撃を受けると簡単に切れてしまうんだよな……だから、振り回された角に引っ掛かって切れてしまったわけだ。ちょっと繋ぎ方が良くなかったな。

 それでも、振り解かれるまでにそれなりの時間が経過したので、かなり体力を吸い取ることができた。魔力を5%ほど使ったが、これまで使った攻撃の中では一番ダメージが入ってるはずだ。


――ブブブブブブ!!


 まあ、この程度の攻撃でヘラクレスビートルを弱らせられるとは、微塵も思ってないけどな。こういう攻撃を地道に繰り返して、少しずつ体力を削っていく他ないだろう。


 ……しかし、ヘラクレスビートルが赤い線の存在に気付くまで、随分と時間がかかっていたな。周囲の背景色に全く馴染まない赤い線は、正直かなり目立つと思うのだが……あれ、もしかして?


「朱音さん、ヒナタ、フラッシュを撃ちたいんだが大丈夫か!?」

「! ええ、準備オッケーよ」

「きぃっ!」

「了解! カウントダウン始めるぞ、3、2、1……今だ、"フラッシュ"!」

――カッ!!


 試しに、フラッシュをヘラクレスビートルに向けて放ってみる。

 強烈な閃光が炸裂し、辺りを白く染め上げる。これを直視してしまったら、しばらくは周囲をまともに見ることができなくなってしまうだろう。


 ……しばらくして、光が止む。ヘラクレスビートルは、特に目を塞ぐような仕草はしていなかったが……結果はどうだ?


「……なるほど、やっぱりな」

――ブブブブブブ!!


 そこには、フラッシュをまともに受けたにも関わらずピンピンしているヘラクレスビートルの姿が。

 赤い線を見分けられなかった、ということから念のため確認してみたが……フラッシュが効かないということは、やはりヘラクレスビートルの目は退化しているらしい。その分、他の方法で索敵を行っているのだろう。


 そして、それを行っているであろう部位は……。


「ヒナタ! ヘラクレスビートルの頭目掛けてファイアブレスを撃ち込んでくれ!」

「きぃ!」

「朱音さんも、ヘラクレスビートルの頭にひたすら攻撃を加えて気を引いてくれるか!?」

「え、ええ、やってみるわ!」


 盾を構えて攻撃に備えていた朱音さんと、空を飛びつつ隙を伺っていたヒナタに指示を出す。


「……"ライフ・スティール"」

――ビッ!


 そして同時に、赤い線を再び右手から伸ばす。今度は、ヘラクレスビートルを基準に向かって右45°くらいの方向へ赤い線を飛ばしつつ、途中で大きく左にカーブさせてヘラクレスビートルの側面から背中に張り付かせた。ついでに赤い線はかなり余長を持たせて、途中まで地面を這わせるようにしてみた。

 そして、赤い線が羽の隙間から中に入り込んでいく。これで、いつでも攻撃できる準備は整った。


「きぃっ!!」

――ゴォォォォ!

「"飛突"!」

――ヒュッ!


 そのタイミングで、ヒナタがヘラクレスビートルの顔に向けてファイアブレスを吐きつける。同時に朱音さんも、同じく顔に向けて飛突を撃ち込み始めた。


 ……ラッシュビートルに火属性攻撃を加えた時の反応から、ラッシュビートルは火属性が弱点である可能性が高い。そこから、ヘラクレスビートルも火属性が弱点である可能性は高いと言えるだろう。

 ただ、ヘラクレスビートルの外殻は魔法耐性が非常に高い。いくら火属性攻撃であっても、外殻越しにまともなダメージを与えるのは難しい。

 だから、頭や触角のように守りの薄そうな部位を2人には狙ってもらう。そこも固い外殻に覆われてはいるものの、その厚みは他の部位より明らかに薄い。決定打にはなり得なくとも、少しくらいはダメージを与えられるだろう。


――ゴウッ!

――ブブッ!?


 炎を顔に浴びて、ヘラクレスビートルが僅かに怯む。ダメージ的には大したものではないだろうが、それでも苦手なモノを顔に押し付けられれば誰だって嫌がるものだ。


――ガギンッ!

――ブッ!?


 少し時間をおいて、顔の横にある小さな触角に飛突が命中する。打撃成分も含む攻撃だったからか、ヘラクレスビートルが頭を少し引っ込めるような反応を見せた。

 触角は守りが薄く、しかも周りの情報を得るための部位なので刺激には敏感だ。闇雲に攻撃するよりは効果がある。


「"ブート・ライフスティール"」

――ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!

――ブッブッブブ!?


 炎を浴び、打撃を食らい……目に頼らない探知が途切れた一瞬の隙を見計らい、赤い線を背中に接続する。そこを介して、再び体力を吸い取り始めた。


――ブブブ!!

――ブンッ! ブンッ! ブンッ!


 もちろん、いくら虫とはいえ特殊モンスターだ。同じ手を簡単に食うような相手ではない。さっき赤い線を切った手応えから学習したのか、ヘラクレスビートルは角をその場で無茶苦茶に振り回して、赤い線を切ろうと試みている。

 ……まあ、俺はそうなることを見越して赤い線をヘラクレスビートルの側面から入れているし、地面に垂らして角が引っかかりにくくなるようにしているのだが。ゆえに、角は虚しく空を切るばかりだ。

 そして、やはりと言うべきか。フラッシュが効かないほど目が退化したヘラクレスビートルには、赤い線を目で見て確認することは難しいようだ。その分他の方法を用いて探知しているのだと思うが、それを朱音さんの打撃攻撃とヒナタのファイアブレスで潰してもらった。あれだけの衝撃と高温に晒されれば、感覚器官というのはどうしても狂うものだ。


――ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!

――ブッブッブブ!?


 案の定、俺たちには明らかにそこにあると分かっている赤い線を、ヘラクレスビートルは全く見つけられない。加えて行動に変化を付けることができないのか、その場で当たりもしない角を振り回し、暴れ続けている。


 ……ただ、それでもヘラクレスビートルはまだまだ元気が有り余っている。この様子だと、ライフ・スティールだけで倒すのはかなりリスキーだな。

 もちろん、確実にダメージを蓄積させていっている手応えはあるし、魔力が尽きる前にヘラクレスビートルを倒せそうな雰囲気はあるのだが……それはあくまで、他のモンスターが乱入してこない前提での話だ。

 巨木の上には、元々大量のラッシュビートルが湧いていた。それがリポップしたうえで、また大群で俺たちの戦いに乱入してきたら……面倒どころか、俺たちの命が本気で危ない。

 ヘラクレスビートルを早く倒す方法、何か無いだろうか?




 ……いや、やはりこの方法しか無いか。外からの攻撃に滅法強い相手に取るべき戦法は、遥か古代よりただ1つ。

 ヘラクレスビートルを覆う外殻の内側から攻撃し、ヘラクレスビートルを崩壊させる。これしかない。

 さて、仕上げといきますかね。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
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