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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く
112/205

3−72:貫徹を拒絶する鉄壁の大甲虫


――ブブブブブブ!!

――ザクッ! ザクッ! ザクッ!!


 ヘラクレスビートルとの戦闘は、ヘラクレスビートルの唐突な穴掘りから始まった。2本の大角を器用に使い、ダンジョンの地面に大きな穴を掘り上げていく。

 ……これ、ただの土に見えてムチャクチャ固いんだけどな。第7層で試しに足で掘ろうとしてみたけど、岩盤のようにガチガチで1センチたりとも掘り進められなかった。それをあっさりと掘ってしまうとは、真紅竜と同じ特殊能力をヘラクレスビートルも持っているのだろうか……?


 ただ、穴を掘る意図が全く見えてこない。

 落とし穴だろうか? だが、ヘラクレスビートル相手に接近戦なんてまず挑むわけがないし、見え見えの罠に簡単に嵌まるわけがない。一体どういう意図だろうか……。


――ガッ!

――ザザザザザザ……


 ……ん? ヘラクレスビートルが、穴に一際深く頭を突っ込んだ。土を削る音も聞こえるので、大角で何かを探っているらしい。

 特殊個体ともあろうモンスターが、無意味な行動をするとは考えにくい。急に穴を掘り始めて困惑したが、あれも一見無駄なようでいて何かしら意味のある行ど――


――ブブッ!!

――グググ……


 ヘラクレスビートルの大角が、穴から出てくる。


 ……巨大な岩と共に。


 ヘラクレスビートルの体長のおよそ4分の1、直径にして1メートル弱はあろうかという巨岩を、こちらに見せつけるように大きく掲げた。そのまま体を大きく反らし、力を溜めるような構えを見せている。


「……って、ボケッと見てる場合じゃない! 逃げろ朱音さん!!」

「えっ、うそ!? あれを投げるの!?」

「きぃぃぃぃ!?!?」


 ヘラクレスビートルが何をしようとしているのかは、もはや明白だった。ゆえに、急いでその場から離れていく。

 だが、ヘラクレスビートルが俺たちの逃走を待ってくれるはずもない。


――ブブブ!!

――ブンッ!

――ガッ!!


 ヘラクレスビートルが勢い良く頭を振り下げ、巨岩を叩き付けるようにしてぶん投げた。


――ガガガッ! ガッ! ガガッ!


 巨岩はやや歪な丸みを帯びていて、地面を不規則に跳ねながらこちらへ迫ってくる。ヘラクレスビートルのパワーでぶん投げられたからか、転がる速度が速いうえにスピードが全く落ちない。

 これは、軌道を予測して回避するのは厳しいな……よし、それなら!


「"プロテクション"! "パワーゲイン"!

 ……よし、盾全開!」

――ブォォン!!


 自分にプロテクションとパワーゲインを掛けた後、その場に立ち止まって盾から防壁を目一杯展開する。巨岩は、どうやら俺から見て左寄りに進路を定めたらしい。


――ガッ!!


 そして、防壁に巨岩が当たった瞬間……。


「防壁変化!」

――グィン


 巨岩の圧力に逆らわず、少しずつ体を左へ回転させなが、防壁の形状を変えて巨岩を包み込む。本当は防壁で巨岩を圧壊させられたらよかったのだが、盾の性能上そこまでの出力は出ないようだ。

 それでも、巨岩を掴んで保持することはできる。そのまま、巨岩の勢いに任せて体を回転させ続け――


「――"防壁解除"だ、いけぇぇぇぇぇ!!」

――ブォン!!


 ちょうど180度回転したところで、防壁を消す。(いまし)めから解き放たれた巨岩は回転の力が乗って更に加速し、ヘラクレスビートルに向けて返っていく。


――ガッ! ガガッ! ガッ!!


 岩は不規則に跳ね回りながら、ヘラクレスビートルへと迫っていく。よし、これは直撃コースだ――


――ブブブ!!

――ゴヅン!!

――バゴッ!!


 ヘラクレスビートルが角一閃。振り上げられた大角が巨岩を跳ね上げ、巨岩はヘラクレスビートルの頭を飛び越えて飛んでいく

 結局、巨岩は藪の向こうへと転がり去っていった。


――ブブブ!!!


 うーん、ノーダメージか。逃げている最中に思い付いた、巨岩を逆に利用する戦法……うまくいったかと思ったんだけどな。やっぱり、デ◯タ◯ーアの冷気を受け止めて投げ返したダー◯ド◯アムのようにはいかないか。

 まあ、ヘラクレスビートルの手の内を僅かな魔力消費だけで確認できたし、成果としては十分かな。接近戦はやはり危険だし、遠距離でも油断はできないと今の攻防でよく分かったからな。


「「「………」」」

――ブブブ……


 巨岩を投げ返されたことで、さしものヘラクレスビートルも警戒モードに入ったようだ。こちらが細かく移動するのに合わせて、ヘラクレスビートルも細かく動きながら距離を詰めようとしてくる。やはりというべきか、ヘラクレスビートルは接近戦を挑もうとしているらしい。

 もっとも、それを許すつもりは毛頭無いが。


「"ライトニング"!」

――ゴロゴロ……

――カッ!


 牽制と小手調べを兼ねて、ライトニングを単発で撃ち込んでみる。果たして結果は……まあ、見るまでもないか。


――バチバチバチッ!

――バチィン!

――ブブブッ!


 背中に落ちた雷撃が、金色に輝く装甲に当たって弾き飛ばされる。金属光沢があるわりに、あの装甲は電気を一切通さないらしい。

 ……でもまあ、ラッシュビートルにさえ効かなかった攻撃が、ヘラクレスビートルに効くワケがないよな。もちろん分かってたよ、そんなことはさ。


「"サンダーボルト"!」

――バチバチバチッ!

――ブブ!?


 今度は右手から電撃を放ち、ヘラクレスビートル……ではなく、その少し手前の地面を狙い撃つ。ヘラクレスビートルをサンダーボルトで狙うと、ほぼ確実に大角へ当たって攻撃を弾かれるからな。それではあまり意味が無い。


「"ライトバレット・スナイプ"」

――ヒュッ!

――パァンッ!

――ブブブッ!?


 今度は、ヘラクレスビートルの頭を狙って光の弾丸を撃ち込む。一対に生えた小さな触角のうち、向かって右の触角に攻撃が直撃した。

 それでも、ヘラクレスビートルは驚いたような様子は見せるものの、痛がるそぶりは全く見せない。普通のモンスターなら十分弱点になり得る部位だが、ヘラクレスビートルはそうではないらしい。


 ……だが、これでいい。


 この攻撃は、ダメージを与えるのが目的じゃない。ヘラクレスビートルの意識を、俺に向けて固定するためのものだからな。


「きぃっ!」

――ガギッ!

――ブブブ!?


 白光を纏ったヒナタが、ヘラクレスビートルの左横っ腹に体当たり攻撃を敢行する。転がってくる巨岩から逃げる時に、ヒナタにはあらかじめ空高く飛んでもらっていたのだ。

 上に巨木があり、そこにラッシュビートルがいた時には採れなかった戦法だ。だが今は、脅威だった大量のラッシュビートルはほとんど魔石と化している。ヒナタも安心して空を飛べるというものだ。


 そして、ヒナタが【風属性攻撃】ではなく【光属性攻撃】スキルを選んだのには理由がある。


――ブッ!?


 ヒナタの突進攻撃を食らったヘラクレスビートルが、ほんの少しだけよろめいた。

 ……実は、【光属性攻撃】スキルには相手の防御を無視して一定のダメージを与える効果がある。ヒナタがダークネスバットだった頃に仕掛けてきた【闇属性攻撃】と、ほぼ同じ効果があるわけだ。

 この攻撃は、どれだけ完璧に防御しても僅かなダメージを必ず受ける。ヘラクレスビートルの鉄壁の守りに、確実に風穴を開けることができるわけだ。


――ブブブ!!


 ……ただし、ダメージは本当にごく僅かなものでしかない。今見た通り、瞬間的には精々がよろけさせるくらいの効果しか生まない。

 もちろん、塵も積もれば山となるのだが……この攻撃が山となるまで、果たして何百、何千回のスキル行使が必要になるのか。考えただけで頭が痛くなってくるな……。


 本気でヘラクレスビートル討伐を狙うのであれば、やはり一撃で大きなダメージを与える必要がある。そのためには弱点を探し出し、そこを狙うのが一番手っ取り早いだろう。

 そして、弱点はおそらくラッシュビートルと同じ場所。すなわち、羽が開かれている状態の剥き出しの背中となるのだが……。


「"ライトニング"」

――シュッ!

――ゴロゴロ……カッ!

――バヂィン!


 試しに、羽を震わせて威嚇しているタイミングを見計らってライトニングを放ってみたのだが。どんなに羽を広げていても、俺が攻撃する瞬間になるとすぐ羽を閉じられてしまうのだ。

 それは朱音さんやヒナタが攻撃する時も同じで、一瞬で羽を閉じて守りを固めてしまうのだ。ヘラクレスビートルが空を飛んでくれないので、威嚇行動時以外は隙らしい隙を見つけることができていないのだが……その威嚇行動時でさえ、ヘラクレスビートルは弱点をきっちりとケアしてきている。こちらからは攻めあぐねている、というのが現状だ。


――ブブブ!

「………」


 一方のヘラクレスビートルも、遠距離攻撃はあの岩投げしか選択肢が無いらしい。その唯一の攻撃方法を俺に跳ね返されたせいか、警戒して全く使ってこようとしないのだ。

 それが分かっているのか、しきりに接近戦を挑もうとしてくるが……当然、こちらはそれを許さない。ヘラクレスビートルが移動するのに合わせて距離を取るので、ヘラクレスビートルは何もできずじまいだった。


 こちらの遠距離攻撃はヘラクレスビートルの装甲を貫けず、ヘラクレスビートルは接近しなければ決定打を当てられない。正しく、戦闘は膠着状態に陥っていた。


(何か、手は無いか……?)


 ヘラクレスビートルの動きに注意を払いつつ、打てる手が無いかを脳内で検索してみる。

 ……ただ、出てくる答えは結局1つしかない。魔力消費量がやたらと大きいせいで、今まで使いどころが無かった()()()()しか。


「……"ライフ・スティール"」

「えっ、それは……?」

――ビッ!


 朱音さんが困惑するのを横目に、右手のひらをヘラクレスビートルへ向けて魔法を唱える。同時に右手から、赤い線のようなものが、ヘラクレスビートルの背中に向けて飛んでいく。

 ……【闇魔法】の出番が、ようやく来たみたいだな。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
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