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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く
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3−69:予感


「……下り階段だ」

「……下り階段ね。思ったよりもあっさり着いちゃったわね」

「だな。第7層はイージー階層かな?」

「きぃ?」

「ぱぁ?」


 第7層を進むこと、約20分。皆の負担を考え、ラッシュビートルを木のオブジェクトを使って半分ほどかわしていった結果……少し時間はかかったものの、あっさりと第8層への下り階段を見つけることができた。

 道中、試練の間の入り口的なものを何となく探していたが、特に見つからず。第6層の時のように、ラッシュビートルが強制的に立ち塞がってくるかと思ったがそんなことも一切無く……モンスターとの通常戦闘以外、特に目立ったイベントは起こらなかった。少し肩透かしを食らってしまったが、難階層ばかりなのもそれはそれで非常に困るので、平穏無事に切り抜けられたことを素直に喜ぶとしよう。


 ちなみに、モンスター誘引能力持ちの疑惑があるインプとは、第7層の道中で3回戦闘になった。それぞれ1体、1体、2体という数で出現したが、2体というパターンもたまにあるらしい。

 で、その全てでインプをすぐに倒すことができず (魔法耐性が思ったより高く、ライトニングでも一撃では倒せなかった)、毎回他モンスターの乱入を許してしまったのだが……その乱入してきたモンスターというのが、全てグレイウルフだった。

 インプ3戦で計5回、特にインプ2体との戦いでは、合計13体のグレイウルフに3度に渡って乱入されたが……ついぞ、ラッシュビートルは1体も出てこなかった。

 さすがに、この程度の回数の試行で確定させるのは少し早すぎる。それを承知で言うならば……インプにモンスターを呼び寄せる特殊能力はあるものの、呼ばれるのはその階層で一番弱いモンスターだけ、というのが可能性としては一番高いのかもしれない。


 まあ、現実的に考えれば、だ。インプと戦ってる時にラッシュビートルに乱入されたら、いくらなんでもキツすぎるもんな。

 実質的に第6層のボスモンスターとして君臨し、遠回しに戦闘回避を推奨されているラッシュビートル。第7層でも引き続き戦闘回避が推奨されている中で、インプの仲間呼びで戦闘回避不可能なラッシュビートルがたびたび出現してくる、などということになっていたらいくらなんでもキツすぎる。存在するかも分からないダンジョンの創造主に向けて『奥に行かせる気全く無いだろ、ふざけんな!』と、文句の1つでも叫んでいたかもしれない。

 ラッシュビートルの弱点を空中から狙撃できるヒナタと、麻痺霧の魔法でラッシュビートルを100%撃ち落とせるアキがいるからこそ余裕をもって戦えてるのが現状だからな。試練の間は確かに辛かったが、そこで得た仲間が見事にラッシュビートルの弱点を突いてくれている。


 ……よし。ヒナタもアキも、魔石を欲しがった時はいつでもあげられるように準備しておこう。


「そういや、あれからインプの熱玉が1個も手に入らなかったな」

「……インプを火属性攻撃で倒すのって、思ったよりも難しいのね」

「本当にな……」


 インプに火属性攻撃でトドメを刺せば、インプの熱玉が手に入る。

 そう仮説を立て、ライトニングを受けて弱ったインプに火属性攻撃で畳み掛けてみたのだが……その攻撃が、思ったよりも通用しなかったのだ。インプは魔法耐性も火属性耐性もかなり高いみたいで、【ファイアブレスⅡ】でもビクともしなかったのは正直驚いたよ。

 ただ、時間を掛けすぎるとグレイウルフが次々乱入してきそうだったので、最終的には攻撃を切り替えてインプを仕留めざるを得なかった。それで、熱玉ドロップは1度も無かったというわけだ。


 ちなみに、火属性エンチャントを武器に付与したうえで、朱音さんにトドメを刺してもらったが……それでも熱玉はドロップしなかった。火属性攻撃ダメージによる討伐ではなく、物理ダメージによる討伐とみなされてしまったのだろうか。あるいは、仮説そのものが間違ってたのか……?

 そう考えると、さっきのはよっぽど運が良かったんだな。火属性攻撃でトドメを刺すだけだったら楽勝、特殊ドロップ取り放題だヒャッホイ! ……なんて考えていた20分前の俺を、本気で叱り飛ばしてやりたい気分だ。


「とりあえず、"ビューマッピング"っと……どうする朱音さん? さすがに、そろそろ引き上げるか?」

「そうね……今の時間って?」

「午後2時を少し回ったところだな」

「午後2時、ね。うーん……」


 朱音さんが悩んでいるが、本当に微妙な時間だよな。

 俺の残魔力が6割ほどなのは、さっき朱音さんにも共有した。第6層やら第4層やら、難階層がいくつか間にある関係上、魔力回復のための小休止をどこかで挟む必要がある。それを加味して所要時間を逆算すれば、今すぐ支度を始めて帰途についたとして、ダンジョンゲートをくぐるのは大体午後5時半くらいになりそうだ。

 時間的には少し早い気もするが、ほぼ未踏破状態だった第6層と完全初見の第7層を最後まで踏破し、第6層では試練の間すらも突破している。疲労にからくる集中力欠如の可能性を考えれば、今日は早めに切り上げて帰るのが吉かもしれないな。


「………」


 ……ただ、なんでだろうな。











 帰ろうかな、と考えた瞬間から嫌な予感がし始めたのは。


 なぜか、俺の直感的な部分が警鐘を鳴らしているのだ。『早く戻ってはダメだ!』と、俺の内なる声が俺に向けて警告してきているような、そんな気がするのだ。

 早く帰ろうが遅く帰ろうが、そう大して変わらない……いや、早く帰る方が疲れからくるミスを誘発しにくく、より安全なはずなのに。俺の直感は、むしろ遅く帰るようしきりに促してくるのだ。


 こういう急に降って湧いた俺の直感は、的中率が大体50%くらいある。なぜか半分くらい当たるのだ。

 単なる気のせいな時も半分くらいあるし、前職の会社が夜逃げした時のように直感そのものが働かない時もあるので、いつも正しいとは限らないのだが。


 ……さて、どうするべきか。


「………」

「……恩田さん? どうしたの、急に腕を組んで、怖い顔をして……」

「……ん、いや、ここで探索を切り上げて帰ろうか、と思ったんだけどな。その瞬間から、なんでか分からないけど嫌な予感がしててな……」

「嫌な予感……」

「ああ、"あまり早く帰るな、危険だぞ"みたいな感じの予感だ。そろそろ戻るかな、と思った瞬間になんかピンときたんだよ」

「虫の知らせ、かしらね」

「かもな」


 帰り道で特殊モンスターにでも遭遇するのだろうか? あるいは、もっとヤバい何かが出てくるのか?

 だが、試練の間で戦ったグリズリーベアよりもヤバい奴なんているのか? 真紅竜と出くわした時は、もっと凄まじい悪寒がしたから別格として……あ、まさか。


「……ラッシュビートルの特殊モンスターか?」


 その可能性は大いにある。

 第6層にあったあの巨木、その上層部には大量のラッシュビートルがひしめきあっていた。そのどこかに、実はラッシュビートルの特殊個体がいて……何かがきっかけで、地面へと下りてきているのかもしれない。


「あの木?」

「ああ、あの木だ」

「気になる木よね」

「なんとも不思議な木だよな」

「日◯?」

「……伏せ字が間に合ってよかったな」


 って、そんな話をしてる場合じゃないな。


「……よし、決めた。今日はここで探索を切り上げて、帰ろう」

「え? でも、あんまり早く帰るのは良くないんじゃ?」

「所詮は予感でしかないから、当たるかどうかも分からない。そんな曖昧なものに振り回されて、危険が増すような行動は取れないよ。

 確かに、そういう直感って案外馬鹿にはできないけど……だからこそ、慎重に移動するための時間を確保したい」

「……そうね、確かに恩田さんの言う通りね。

 ただ、それなら先に万全の状態まで持っていった方がいいと思うわ。そこの階段で、少し休憩していきましょう?」

「そうだな、そうしようか」


 昼食から1時間くらいしか経っていないが、魔力が減っているので階段で少し休んでいくことにする。

 思ったより魔力を使ってしまったが、その大半はアンチ・ファイアのコストのせいだ。いや、ホントに重すぎだわあの魔法……まあ、アキのために絶対必要なことだったんだけどな。




 さて、と。俺の虫の知らせが、本当にただの気のせいだったらいいんだけどな。

 何か()()が起きたとして、何の対策も心の準備もしていない状態でそれを迎えてしまうのが、俺は一番怖い。それで痛い目をみたことが、今までの人生の中で何度もあったからな。

 警戒して空振りなら、何も起きなかったのだからそれでよし。もし()()が起きたとして、準備ができていてきちんと対処できたならそれもまたよし。パーティ全員が無事にダンジョンを出られるよう、今は全力を尽くすとしようか。


 まあ、一昨日も今日も試練の間では散々ポカをやらかした挙句、最終的に運で切り抜けた人間が言うことではないかもしれないけどな。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
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